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自立(と調教)への一歩は王子から

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西条と別れ際にまた握手を交わし再び車に乗る。
宵の車窓を背景にして、シートに頭を載せた静が聞いてきた。

「ディナーに行こう。  希望はあるかね」

「ご飯、ですか。 好き嫌いは特に無いです」

足を組んだ静が体を前に傾け、透子の顔を覗く。

「……機嫌が良さそうだ。  いつものトゲトゲしさが無い。  職が見付かったからか?」

「えっ、あ。  本当にありがとうございました。  いえ、それもありますけど」

「なんだ、言ってみるがいい」

「静さん、お友達がいらっしゃるんですね」

「……は?」

しかも西条さんは素敵な人だったし。
必要が無い、なんて素っ気ないこと言ってた癖に。 知らずと顔が綻んでしまった。

「自分でもよく分かりませんけど嬉しくて。  あと、私にトゲがないのなら、それは静さんのせいです」

「…………」

「本当は静さんは」

「止めろ」

じっと透子を見ていた静が頭を下げて片手で抱え出す。

「へ?」

「それ以上かわいいと犯しそうだ。  ほんのりトゲがある塩梅で頼む」

「……わ、分かりました」

実は全然分かんないけど怖い。 ほんのりトゲってどんな状態なんだろう。

「それから、西条は別に友人じゃない。  俺は自分の身が可愛いからな」

「そ、れはどういう………」

「奴の趣味と嗜好の問題だ。  いたいけな少年を自分好みに調教する───俺がカレッジに入ったのは16だが、当時奴だけには近付きたくなかった」

どことなく暗い表情で語ってくれた静だったが、透子は先ほどの西条の言葉を思い出した。
『 あと、嗜好は違うけど彼とは趣味が合ったり 』
つまり、それぞれに当てはめるとこうなるのだろうか。

嗜好=いたいけな少年(西条)
趣味=調教する(西条・静←)

「………」

「なぜいきなり距離を置く」

車のドアに体をくっ付けた透子が静の視界に入らないよう小さくなる。

「え、まあ。  気にしないでください。  というか、こっちを見ないでください」

「なんでそんなに極端なんだねキミは」

「い、いえ────」

ぐい、と腕を取られて腰に腕を回され、静の膝の上で抱き止められた。

「っな…ん」

突然の密着に目を白黒させる。
静の顔が透子の肩に乗っていた。

「逃げると捕まえたくなる」

「だ、だからっ…て急に」

「急じゃない………」

強引なわりにはなんとなく、弱々しそうな口調の静に口を閉じる。 背後からすっぽり抱かれる静の胸は温かかった。

「……べ、別に私に会いたかった…訳でもない…のに」

「会いたくなかったなんて言ってない」

『静さんって、面倒臭くないですか』

そんな風に、冗談めかして言いたいのに言葉が出てこない。
しばらくドキドキしながらじっとしていると、透子の胸の辺りにモゾモゾ静の手が伸びてくる。

「えっ…」

「セックスはしない。 ただの仕置きだ」

「……っなななんの」

「この車は外から見えないし、防音もきいてるから多少の声は出していい」

「そんな、問題じゃ…っ」

胸をカリ、と爪で引っ掻きうなじに口を付けられる。
キスをされたのかと思うと、唇で挟まれた肌に噛み付くようにきつく吸われ、首すじから腰にかけて震えが走った。

「………っ!」

ブラウスの隙間を這っていく静の指先が、透子の柔らかで感度のいい乳房の記憶を貪欲に求めていた。

背後の耳元からは、撫でるような静の声が鼓膜を刺激してくる。

「仕事のことだが。 今の状況でキミがそう動こうとするのは不思議じゃない」

「ちょ…っと。 あ……や」

「だが、少しばかりこんなことも考えた。  初めてだからと俺は気を使いすぎたかもしれない───この指にまとわりつくコレはいい子だな」

「きゃっ……っん!」

何本かの指の束に胸先をくいと引っ張られて目を見張った。
早々に尖らせられた先を指先で押し込む。
大きな手が乳房全体をすっぽり包み、熱が体内を巡っていく。

「ちゃんと俺を覚えてる。  口でも随分可愛がったし」

「あ、ごめ……なっ」

弾けるみたいに喉を晒し、今にも押し寄せようとする快楽を静が爪弾く。
透子は唇を噛んでいた。  後ろから回された彼の手で胸先を繊細に弄られる、その様子を見せ付けられるのは堪らない。 どんどん感覚が鋭くなっていく。

「ん?  謝ることはない。  それより片足をあげなさい」

「い、いや」

「なぜ」

「ま、また…おかしく……なっちゃうから」

「俺はキミをもっとおかしくさせたい」

激しい鼓動がちっとも止まない。

「ここに足先をつけて」

彼が軽く腿裏に手をあててきて、透子は自分からはそうしようとしなかったが、静の誘導に弱々しく従った。
なぜこの人に逆らえないんだろう。 透子自身にも分からなかった。
シートに片膝を立てたショーツの股の部分に静の指が触れる。


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