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101年後
目覚めたはいいけれど?
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あるところに、バラで囲まれたお城があった。
姫が生まれた誕生パーティに呼ばれなかった
13番目の魔女の腹いせで
オーロラ姫は16歳に死んでしまうと予言された。
そのとおりに彼女が倒れた際に
お城は姫共々いばらに覆われて時を止めた。
しかしまだオーロラに贈り物を送っていなかった
12番目の魔女は次のように言っていた。
『姫様は死ぬのではなく、100年間眠り続けた後に目を覚まします』
その様子を見ていた14番目の魔女は
物思わしげに頬に手を当てたのだった。
『……でも、その後はどうするのかしら?』
これはオーロラ姫が目覚めた、その後のお話────
◆
100年経って長い眠りから覚めた姫────それからさらに、一年が経った。
オーロラ姫はガラスの棺で身を起こした。
「ふあああ……」
大きな欠伸をして辺りを見渡した。
周囲のバラは美しく花をつけて咲き誇ってはいる。
しかし未だいばらで覆われたお城を眺め、オーロラが眠けまなこを擦る。
姫は落胆の独り言を零した。
「起きたはいいけれど。 また駄目みたいね、これからどうしたら……」
「チュンチュン、お姫様。 水浴びに行かなくっちゃ」
「さあ、頑張って立って!」
気を抜くとまた眠気に襲われるオーロラを急かし、森の鳥たちは姫の身支度を手伝おうとした。
地面に足を着けるとフラフラした。
何しろ眠っていた100年の歳月は長過ぎた。
一年ぐらいで完全に目が覚めるわけはない。
頭はぼんやりと霞かがったようだし、背中や腰もギシギシする。
「そんな、起きるたびに……お風呂に入らなくても」
力なく抗議するオーロラを鳥たちが追い立てる。
「チュンチュン。 駄目ですよ、またどこぞの旅人が、そら。 お姫様に精液を浴びせて行ったんですから」
自分の体を見下ろしたオーロラは息を詰めた。
「ヒッ。 い、言われてみれば。 嫌だわ、毎回毎回。 こんなのどこから出すのかしら」
オーロラの髪や、はだけたドレスの胸元にはベッタリと白い液体がはりつき、パリパリに乾いていた。
目覚めた所から少し歩いた場所に泉があった。
岩壁の間から、豊富な湧き水が染み出て、綺麗な水溜まりを作っている。
明るい色の木々に囲まれたそこは、動物たちの憩いの場でもあった。
泉の下に座り込み、オーロラ姫はぼーっとして、鳥たちのなすがままに身支度を整えさせられていた。
「それにしても、いつ王子様とやらは現れるのかしら」
呟いて、うとうとと考えていた。
12番目の魔女のお陰で、去年目が覚めたはいいものの。
オーロラ姫は独り身で、まだお城の呪いも解けていない。
『ですが王様。 目覚めた時にお姫様のそばにいたのが、どこかのならず者だったら、取り付く島がありませんわ』
誕生パーティの際、余計なことを言ったのは、通りすがりの14番目の魔女だったらしい。
『ムム、確かに』
王様は魔女に同意した。
『美しく優しく貞淑な姫にふさわしく。 姿がよく姫を思いやり、家柄も相応な王子。 そしてその人物の真の愛をもって、一切の呪いは解かれるものとなる』
魔女は新たな魔法をオーロラ姫にかけた。
「きっと色々求め過ぎたんだわ。 私なんて、そこそこな感じのお相手で充分なのに」
オーロラが腕を組みやけっぱちに頷く。
いばらに覆われた城には誰も入れないため、オーロラ姫が眠る棺は城外にある、大きな木の下に放置されることになった。
眠っているオーロラ姫の元には、今まで色んな者が訪ねてはきた。 しかし都合よく、そんな好物件が現れるわけもなく、ことごとく徒労に終わっていた。
「……ああ、それにしても眠いこと」
再び欠伸をしたオーロラはノソノソ這うように棺に戻る。
そしてすうと目蓋を落とした。
姫が生まれた誕生パーティに呼ばれなかった
13番目の魔女の腹いせで
オーロラ姫は16歳に死んでしまうと予言された。
そのとおりに彼女が倒れた際に
お城は姫共々いばらに覆われて時を止めた。
しかしまだオーロラに贈り物を送っていなかった
12番目の魔女は次のように言っていた。
『姫様は死ぬのではなく、100年間眠り続けた後に目を覚まします』
その様子を見ていた14番目の魔女は
物思わしげに頬に手を当てたのだった。
『……でも、その後はどうするのかしら?』
これはオーロラ姫が目覚めた、その後のお話────
◆
100年経って長い眠りから覚めた姫────それからさらに、一年が経った。
オーロラ姫はガラスの棺で身を起こした。
「ふあああ……」
大きな欠伸をして辺りを見渡した。
周囲のバラは美しく花をつけて咲き誇ってはいる。
しかし未だいばらで覆われたお城を眺め、オーロラが眠けまなこを擦る。
姫は落胆の独り言を零した。
「起きたはいいけれど。 また駄目みたいね、これからどうしたら……」
「チュンチュン、お姫様。 水浴びに行かなくっちゃ」
「さあ、頑張って立って!」
気を抜くとまた眠気に襲われるオーロラを急かし、森の鳥たちは姫の身支度を手伝おうとした。
地面に足を着けるとフラフラした。
何しろ眠っていた100年の歳月は長過ぎた。
一年ぐらいで完全に目が覚めるわけはない。
頭はぼんやりと霞かがったようだし、背中や腰もギシギシする。
「そんな、起きるたびに……お風呂に入らなくても」
力なく抗議するオーロラを鳥たちが追い立てる。
「チュンチュン。 駄目ですよ、またどこぞの旅人が、そら。 お姫様に精液を浴びせて行ったんですから」
自分の体を見下ろしたオーロラは息を詰めた。
「ヒッ。 い、言われてみれば。 嫌だわ、毎回毎回。 こんなのどこから出すのかしら」
オーロラの髪や、はだけたドレスの胸元にはベッタリと白い液体がはりつき、パリパリに乾いていた。
目覚めた所から少し歩いた場所に泉があった。
岩壁の間から、豊富な湧き水が染み出て、綺麗な水溜まりを作っている。
明るい色の木々に囲まれたそこは、動物たちの憩いの場でもあった。
泉の下に座り込み、オーロラ姫はぼーっとして、鳥たちのなすがままに身支度を整えさせられていた。
「それにしても、いつ王子様とやらは現れるのかしら」
呟いて、うとうとと考えていた。
12番目の魔女のお陰で、去年目が覚めたはいいものの。
オーロラ姫は独り身で、まだお城の呪いも解けていない。
『ですが王様。 目覚めた時にお姫様のそばにいたのが、どこかのならず者だったら、取り付く島がありませんわ』
誕生パーティの際、余計なことを言ったのは、通りすがりの14番目の魔女だったらしい。
『ムム、確かに』
王様は魔女に同意した。
『美しく優しく貞淑な姫にふさわしく。 姿がよく姫を思いやり、家柄も相応な王子。 そしてその人物の真の愛をもって、一切の呪いは解かれるものとなる』
魔女は新たな魔法をオーロラ姫にかけた。
「きっと色々求め過ぎたんだわ。 私なんて、そこそこな感じのお相手で充分なのに」
オーロラが腕を組みやけっぱちに頷く。
いばらに覆われた城には誰も入れないため、オーロラ姫が眠る棺は城外にある、大きな木の下に放置されることになった。
眠っているオーロラ姫の元には、今まで色んな者が訪ねてはきた。 しかし都合よく、そんな好物件が現れるわけもなく、ことごとく徒労に終わっていた。
「……ああ、それにしても眠いこと」
再び欠伸をしたオーロラはノソノソ這うように棺に戻る。
そしてすうと目蓋を落とした。
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