上 下
1 / 10
101年後

目覚めたはいいけれど?

しおりを挟む
あるところに、バラで囲まれたお城があった。

姫が生まれた誕生パーティに呼ばれなかった
13番目の魔女の腹いせで
オーロラ姫は16歳に死んでしまうと予言された。

そのとおりに彼女が倒れた際に
お城は姫共々いばらに覆われて時を止めた。

しかしまだオーロラに贈り物を送っていなかった
12番目の魔女は次のように言っていた。

『姫様は死ぬのではなく、100年間眠り続けた後に目を覚まします』

その様子を見ていた14番目の魔女は
物思わしげに頬に手を当てたのだった。

『……でも、その後はどうするのかしら?』


これはオーロラ姫が目覚めた、その後のお話────





100年経って長い眠りから覚めた姫────それからさらに、一年が経った。
オーロラ姫はガラスの棺で身を起こした。

「ふあああ……」

大きな欠伸をして辺りを見渡した。

周囲のバラは美しく花をつけて咲き誇ってはいる。
しかし未だいばらで覆われたお城を眺め、オーロラが眠けまなこを擦る。
姫は落胆の独り言を零した。

「起きたはいいけれど。 また駄目みたいね、これからどうしたら……」

「チュンチュン、お姫様。 水浴びに行かなくっちゃ」

「さあ、頑張って立って!」

気を抜くとまた眠気に襲われるオーロラを急かし、森の鳥たちは姫の身支度を手伝おうとした。
地面に足を着けるとフラフラした。

何しろ眠っていた100年の歳月は長過ぎた。
一年ぐらいで完全に目が覚めるわけはない。
頭はぼんやりと霞かがったようだし、背中や腰もギシギシする。

「そんな、起きるたびに……お風呂に入らなくても」

力なく抗議するオーロラを鳥たちが追い立てる。

「チュンチュン。 駄目ですよ、またどこぞの旅人が、そら。 お姫様に精液を浴びせて行ったんですから」

自分の体を見下ろしたオーロラは息を詰めた。

「ヒッ。 い、言われてみれば。 嫌だわ、毎回毎回。 こんなのどこから出すのかしら」

オーロラの髪や、はだけたドレスの胸元にはベッタリと白い液体がはりつき、パリパリに乾いていた。

目覚めた所から少し歩いた場所に泉があった。
岩壁の間から、豊富な湧き水が染み出て、綺麗な水溜まりを作っている。
明るい色の木々に囲まれたそこは、動物たちの憩いの場でもあった。

泉の下に座り込み、オーロラ姫はぼーっとして、鳥たちのなすがままに身支度を整えさせられていた。

「それにしても、いつ王子様とやらは現れるのかしら」

呟いて、うとうとと考えていた。
12番目の魔女のお陰で、去年目が覚めたはいいものの。
オーロラ姫は独り身で、まだお城の呪いも解けていない。


『ですが王様。 目覚めた時にお姫様のそばにいたのが、どこかのならず者だったら、取り付く島がありませんわ』

誕生パーティの際、余計なことを言ったのは、通りすがりの14番目の魔女だったらしい。

『ムム、確かに』

王様は魔女に同意した。

『美しく優しく貞淑な姫にふさわしく。 姿がよく姫を思いやり、家柄も相応な王子。 そしてその人物の真の愛をもって、一切の呪いは解かれるものとなる』

魔女は新たな魔法をオーロラ姫にかけた。


「きっと色々求め過ぎたんだわ。 私なんて、そこそこな感じのお相手で充分なのに」

オーロラが腕を組みやけっぱちに頷く。
いばらに覆われた城には誰も入れないため、オーロラ姫が眠る棺は城外にある、大きな木の下に放置されることになった。
眠っているオーロラ姫の元には、今まで色んな者が訪ねてはきた。 しかし都合よく、そんな好物件が現れるわけもなく、ことごとく徒労に終わっていた。

「……ああ、それにしても眠いこと」

再び欠伸をしたオーロラはノソノソ這うように棺に戻る。
そしてすうと目蓋を落とした。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界で合法ロリ娼婦始めました。聖女スカウトはお断りします。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:138

結婚三年目、妊娠したのは私ではありませんでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,935pt お気に入り:1,192

駄菓子屋継いだらロリハーレム

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:77

空白の場所

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:788pt お気に入り:182

【R18】絶倫にイかされ逝きました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,334pt お気に入り:82

そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:58,398pt お気に入り:2,875

ハメカフェ[年末・受けイチャの場合]

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:23

処理中です...