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ガチャリとドアが開く音がして、男が一人部屋に入ってくる。
私は二日分のカレーを作っているところだった。
「ただいま! 孝一だよ!」
「晶君は今日も元気だね」
「ほら、今回の戦利品」
晶君は小さなぬいぐるみらしき物のチェーンに指をかけてブンブン回した。アルビノウーパールーパーのストラップだった。
「普通に可愛いけど、また盗品なんでしょ」
「まあね。今日はファンシー雑貨屋に入った。周りがJCとかJKばっかりでアウェイ感がハンパなかった」
「晶君って意外とMなの?」
「俺は常に新しい刺激を求めてんだよ」
「じゃあいっそ刺激を求めて尺八教室にでも通えば?」
「あれは超難しいんだぞ。まず、音を出すまでが長くかかる。そもそも金がねぇ」
「冗談が通じない……」
「美紀が言うと冗談に聞こえないんだよ」
✳︎
カレーのトッピングは目玉焼きにした。孝一と二人で食べ始める。
「孝一は晶君が気にならないの?」
「何が?」
「今日も現れたでしょ」
「でもすぐ帰るだろ」
「そうだけど、自分の婚約者が毎日別の男と会うのは嫌なんじゃない? いくら彼でも」
「あいつとは昔はいろいろあったけど、今は大分大人しくなったし意外といいヤツだよ」
「ふうん」
彼の万引きの事をますます話せなくなる。
私たちは、披露宴は開かないが写真だけは撮ろう、一泊くらいで鹿児島に旅行に行こうなどと今後の予定を立て始めた。
孝一は今日も風呂の後、遅くまで仕事をしていた。
✳︎
それからも晶君は短時間だが、毎日やって来た。「これでどうだ」と言って毎日数百円相当の物を盗って来た。ホタテの缶詰や劇落ちくんやキリンが逆立ちしたピアスなどだ。
こんなに毎日現れるのだから、彼は私に気があるのだろうか?
しかし慣れとは恐ろしいもので私は徐々に彼の犯罪行為による贈り物に抵抗が無くなり、むしろ次は何かなと楽しみに待つようにさえなった。でもそれと同時に、孝一に対して罪悪感を持つようにもなった。
最近仕事が溜まっているみたいで、以前より彼との会話は減っていた。
私は二日分のカレーを作っているところだった。
「ただいま! 孝一だよ!」
「晶君は今日も元気だね」
「ほら、今回の戦利品」
晶君は小さなぬいぐるみらしき物のチェーンに指をかけてブンブン回した。アルビノウーパールーパーのストラップだった。
「普通に可愛いけど、また盗品なんでしょ」
「まあね。今日はファンシー雑貨屋に入った。周りがJCとかJKばっかりでアウェイ感がハンパなかった」
「晶君って意外とMなの?」
「俺は常に新しい刺激を求めてんだよ」
「じゃあいっそ刺激を求めて尺八教室にでも通えば?」
「あれは超難しいんだぞ。まず、音を出すまでが長くかかる。そもそも金がねぇ」
「冗談が通じない……」
「美紀が言うと冗談に聞こえないんだよ」
✳︎
カレーのトッピングは目玉焼きにした。孝一と二人で食べ始める。
「孝一は晶君が気にならないの?」
「何が?」
「今日も現れたでしょ」
「でもすぐ帰るだろ」
「そうだけど、自分の婚約者が毎日別の男と会うのは嫌なんじゃない? いくら彼でも」
「あいつとは昔はいろいろあったけど、今は大分大人しくなったし意外といいヤツだよ」
「ふうん」
彼の万引きの事をますます話せなくなる。
私たちは、披露宴は開かないが写真だけは撮ろう、一泊くらいで鹿児島に旅行に行こうなどと今後の予定を立て始めた。
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こんなに毎日現れるのだから、彼は私に気があるのだろうか?
しかし慣れとは恐ろしいもので私は徐々に彼の犯罪行為による贈り物に抵抗が無くなり、むしろ次は何かなと楽しみに待つようにさえなった。でもそれと同時に、孝一に対して罪悪感を持つようにもなった。
最近仕事が溜まっているみたいで、以前より彼との会話は減っていた。
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