四つ葉のクローバー

たんぽぽ。

文字の大きさ
上 下
3 / 10

3

しおりを挟む
 ガチャリとドアが開く音がして、男が一人部屋に入ってくる。

 私は仕事から帰って来て、なんとなく居間でボーッとしていた。
「今日も早いね」
「あんた、学習能力無いの?」
彼は右の口角を上げた。
「……また晶君か」
「愛する孝一じゃなくて悪かったな。ほら」
晶君はカカオ含量が高めのチョコレートを畳に放った。
「また盗ってきたの?」
「当たり前田のクラッカー」
彼は死語を口にした。全然面白く無い。私はチョコレートから目を逸らした。
「これは戦いだ。あんたが満足するまで俺は毎日何かしらを盗って来る」
「本気で怒るよ。孝一に迷惑掛けるつもり?」
「心配要らない。俺の万引きスキルは神をも凌ぐレベルだ。昨日は久々にやったけど完遂出来た」
「神様は万引きしないでしょ」
「冷めた女だな」
「晶君がおかしいんだよ」



✳︎



 今日は孝一が夕食当番だ。彼は冷蔵庫の残り物や、冷凍庫に常備してある食材をチェックして、大抵炒め物にする。

 食卓につき二人でいただきますを言う。おかずは豚バラとニラの卵とじだ。少し味が濃いけれどご飯が良く進む。
「また晶君が来たよ」
「うん。あいつも他のところへ行けばいいのにここばっかりだな」
「今日はチョコレートくれた」
「食後に食べようか」
「うん。また来るって」
「ふうん。それより、入籍はいつにする?」
晶君の事から話が逸れ、また万引きの事を言いそびれた。

 その夜、孝一は最近仕事が進まないからと、遅くまで居間で仕事をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...