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Iターン
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「とにかく! お前とはむしろ婚約する理由が何ひとつないんだ!!」
さっきから大声ばかり出しているから、さすがに疲れてきた。
「まぁまぁ、そうカッカしなさんな。アンタ、顔がピグモンみたいになってるよ」
「誰のせいだよ!!」
またウルトラマンネタかよ!
キレたオレがドン! とテーブルを叩いた拍子に皿の上のコンニャクの甘辛煮が飛び上がり、なんとオレの口の中に飛び込んだ!
「むぐッ……!!」
急いで吐き出そうとするのを押しとどめたのは、思いがけないコンニャクの風味だった。
コンニャクを飲みくだし、思わず呻く。
「……白いご飯だ…」
興奮のあまりオレの全身は震えている。
「白いご飯をくれ……!!」
使用人がすぐさま白いご飯を持ってきてくれた。
白いご飯が進む。オレの手は止まらない。コンニャク、白いご飯、コンニャク、白いご飯、コンニャク、コンニャク、白いご飯……無限コンニャクとはこのことか!
「ふむ……特筆すべきはこの弾力だよな……市販のコンニャクでは絶対に味わえない歯応えだ……。それに味がしっかり染みて……名前どおり甘い中に、ピリリと辛味が効いているが、その絶妙なバランス……甘さと辛さという、相矛盾した存在の同居……もはや、あらゆる物理法則に反している……、この全ては産地直送の新鮮さが成せる技なのか……。マコトにもってけしからん!」
自分でも何言ってるのかわからなくなってきた。
「さらに程よく絡めた胡麻が、主張は少ないながらも噛むたびにえも言われぬ香ばしさを醸し出す……。副菜としてもよし、酒のつまみにしてもよし、保存もきくし、腸内環境も整えてくれる意外に万能な一品……大変美味しゅうございました!!!!」
思わず食レポしてしまったじゃないか!!
ソーイはそんなオレをニヤニヤしながら眺めているが、不思議と腹は立たなかった。
「なあ、さっき四万ヘクタールのコンニャク畑を持ってるって言ったよな? それってどれくらいの広さなのか?」
「そうさねぇ、だいたいタネガー島くらいの面積って聞いてるけど」
タネガー島というのは、オレの住むキューシュー大陸のすぐ南に位置する割と大きな島で、近年は宇宙開発産業で栄えている。
「市町村クラスの広さじゃねーか!!」
「他にも里芋、長芋、さつまいも、人参、大根、山の芋、ゴボウ、蓮根、カブ、キャッサバ、タロイモなんかも育ててるよ」
「根菜パラダイスだな!!!!」
「せっかくだから食べてみるかい?」
ソーイがパチンと指を鳴らすと、使用人が次々と料理を運んで来た。見る間にテーブルは多種多様の根菜料理で埋め尽くされる。
蓮根と人参の炊き込みご飯に具沢山の豚汁、キンピラに根菜肉味噌サラダ、天ぷら、黒酢あんかけ、筑前煮、挟み焼き、唐揚げ、エトセトラ、エトセトラ……。
目の前にずらりと並んだ根菜をふんだんに使ったご馳走に、オレの喉は鳴りっぱなしだ。
「全てレーバー家の畑で獲れた食材を使用しております」
そして最後に「こちらはコンニャク焼酎でございます」と、氷の入ったグラスに酒を注いでくれた。
「コンニャク焼酎か……飲むのは初めてだな」
ひと口いただく。ほのかに甘く、雑味がなく、オレ好みの味だ。ふっ、とため息が出る。
料理はどれもが絶品だった。素材の味が生きているのだ。
オレは今まで何を食べて生きてきたんだ──そんなことさえ思った。
オレの手は休みなく料理を口に運び続けた。
「デザートは芋羊羹に抹茶きんとん、根菜チップスは人参とさつまいもと蓮根のポタージュに浸していただきますと、よりいっそう美味しくお召し上がりいただけます」
まだあるの?! 根菜の可能性って無限大なんだな!
全ての皿が綺麗に空になった後、オレはひざまづいてソーイの手を取り、言った。
「ソーイさん……今までをあなたをお前などと呼び続けた無礼をお許しください。あなた(の家の所有する畑で採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)に惚れました。あなた(の家の所有する畑で採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)と一緒にいると、とても心が満たされるのを感じます。オレはあなた(の家の所有する畑から採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)に一生を捧げようと思います。どうか、オレと今すぐにでも結婚してください!」
「お安い御用さ」
不思議なもので、ソーイの醜く歪んだ笑顔のシワの一本一本までもが愛嬌たっぷりに思えてくるのだ。
オレたちはコンニャク焼酎で乾杯した。グビグビと一気に飲み干す。
「「おかわり!!!」」
二人は仲良く同時に盛大なゲップをした。
──完──
さっきから大声ばかり出しているから、さすがに疲れてきた。
「まぁまぁ、そうカッカしなさんな。アンタ、顔がピグモンみたいになってるよ」
「誰のせいだよ!!」
またウルトラマンネタかよ!
キレたオレがドン! とテーブルを叩いた拍子に皿の上のコンニャクの甘辛煮が飛び上がり、なんとオレの口の中に飛び込んだ!
「むぐッ……!!」
急いで吐き出そうとするのを押しとどめたのは、思いがけないコンニャクの風味だった。
コンニャクを飲みくだし、思わず呻く。
「……白いご飯だ…」
興奮のあまりオレの全身は震えている。
「白いご飯をくれ……!!」
使用人がすぐさま白いご飯を持ってきてくれた。
白いご飯が進む。オレの手は止まらない。コンニャク、白いご飯、コンニャク、白いご飯、コンニャク、コンニャク、白いご飯……無限コンニャクとはこのことか!
「ふむ……特筆すべきはこの弾力だよな……市販のコンニャクでは絶対に味わえない歯応えだ……。それに味がしっかり染みて……名前どおり甘い中に、ピリリと辛味が効いているが、その絶妙なバランス……甘さと辛さという、相矛盾した存在の同居……もはや、あらゆる物理法則に反している……、この全ては産地直送の新鮮さが成せる技なのか……。マコトにもってけしからん!」
自分でも何言ってるのかわからなくなってきた。
「さらに程よく絡めた胡麻が、主張は少ないながらも噛むたびにえも言われぬ香ばしさを醸し出す……。副菜としてもよし、酒のつまみにしてもよし、保存もきくし、腸内環境も整えてくれる意外に万能な一品……大変美味しゅうございました!!!!」
思わず食レポしてしまったじゃないか!!
ソーイはそんなオレをニヤニヤしながら眺めているが、不思議と腹は立たなかった。
「なあ、さっき四万ヘクタールのコンニャク畑を持ってるって言ったよな? それってどれくらいの広さなのか?」
「そうさねぇ、だいたいタネガー島くらいの面積って聞いてるけど」
タネガー島というのは、オレの住むキューシュー大陸のすぐ南に位置する割と大きな島で、近年は宇宙開発産業で栄えている。
「市町村クラスの広さじゃねーか!!」
「他にも里芋、長芋、さつまいも、人参、大根、山の芋、ゴボウ、蓮根、カブ、キャッサバ、タロイモなんかも育ててるよ」
「根菜パラダイスだな!!!!」
「せっかくだから食べてみるかい?」
ソーイがパチンと指を鳴らすと、使用人が次々と料理を運んで来た。見る間にテーブルは多種多様の根菜料理で埋め尽くされる。
蓮根と人参の炊き込みご飯に具沢山の豚汁、キンピラに根菜肉味噌サラダ、天ぷら、黒酢あんかけ、筑前煮、挟み焼き、唐揚げ、エトセトラ、エトセトラ……。
目の前にずらりと並んだ根菜をふんだんに使ったご馳走に、オレの喉は鳴りっぱなしだ。
「全てレーバー家の畑で獲れた食材を使用しております」
そして最後に「こちらはコンニャク焼酎でございます」と、氷の入ったグラスに酒を注いでくれた。
「コンニャク焼酎か……飲むのは初めてだな」
ひと口いただく。ほのかに甘く、雑味がなく、オレ好みの味だ。ふっ、とため息が出る。
料理はどれもが絶品だった。素材の味が生きているのだ。
オレは今まで何を食べて生きてきたんだ──そんなことさえ思った。
オレの手は休みなく料理を口に運び続けた。
「デザートは芋羊羹に抹茶きんとん、根菜チップスは人参とさつまいもと蓮根のポタージュに浸していただきますと、よりいっそう美味しくお召し上がりいただけます」
まだあるの?! 根菜の可能性って無限大なんだな!
全ての皿が綺麗に空になった後、オレはひざまづいてソーイの手を取り、言った。
「ソーイさん……今までをあなたをお前などと呼び続けた無礼をお許しください。あなた(の家の所有する畑で採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)に惚れました。あなた(の家の所有する畑で採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)と一緒にいると、とても心が満たされるのを感じます。オレはあなた(の家の所有する畑から採れた根菜類及びそれらを材料とした飲食物)に一生を捧げようと思います。どうか、オレと今すぐにでも結婚してください!」
「お安い御用さ」
不思議なもので、ソーイの醜く歪んだ笑顔のシワの一本一本までもが愛嬌たっぷりに思えてくるのだ。
オレたちはコンニャク焼酎で乾杯した。グビグビと一気に飲み干す。
「「おかわり!!!」」
二人は仲良く同時に盛大なゲップをした。
──完──
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