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第三話 ツチノコ狩り
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ツチノコ狩りに行ってきた。
動機はというと、身もふたもない言い方をすると金のためである。
本職だけではなかなか貯金が貯まらないので副業を始めようと思ったのだ。それもなるべく楽なものが良い。
そこで、アフィリエイトを思い付いた。
ブログを開設してツチノコをアップして、たくさんの人に見てもらうのだ。
私はアフィリエイトの意味もやり方も詳しく知らないが、ツチノコを獲ってから調べれば良いだろう。確定申告のやり方も後からで良いだろう。
寝ているうちに一億円くらい貯まってれば良いなぁ、と一億円の使い道を寝る前に妄想した。
とりあえず通勤用に電動自転車を購入し、壊れかけのレディオと壊れかけの炊飯器と壊れかけのゲームボーイを買い替えよう。ゲームボーイなんて、もう30年使っているのだ。画面が白黒で目が悪くなるので、そろそろカラーのタイプが出て欲しいのだが。
そして米は無洗米にして、肉は国産を買おう。カニカマではなく本物の蟹を食べに行こう。張り切って行こう。
思うに、人を殺す話か下ネタしか思い付かないのは欲求不満のせいかもしれない。ツチノコによって金持ちになり、環境が変われば爽やかハッピーな妄想をすることが出来るようになると期待した。
ニタニタしながら眠りにつくと、夢の中で壊れかけのレディオが「捨てないで」と訴えてきたが無視した。いつもは何も聞かせてくれないのに。壊れかけじゃなくて、もう完全にぶっ壊れてるんじゃないだろうか?
まず私がやったのは、美容院で髪を切ることだった。
ツチノコは髪を燃やす匂いを好むという情報を得たからだ。肩にギリギリで付かないくらいの髪をバッサリ切ることにした。
美容院で「ショートカットにして下さい。切った髪は持ち帰っても良いですか?」と言ってみた。
美容師は快く頼みを聞いてくれた。
「大丈夫ですよ。因みに、何に使うんですか?」
「焼いてツチノコをおびき寄せるんです」
「……かしこまりました」
その美容師はは散髪中、どれくらい切るかなどの髪に関する事以外の世間話をしなかった。
彼は恐らくツチノコを知らなかったのだと思う。若い人だったのでジェネレーションギャップという奴だろうか。
私は髪が多いので、切った髪は45Lサイズの袋にパンパンになった。
翌日、出勤してタイムカードを押していると後ろから来た他部署のオッサンが「バッサリいったねぇ、失恋でもしたの?ウヒヒ。ウヒヒ」と聞いてきた。
「違います!」と否定したが、彼は更に「強がらなくても良いんだよ。ウヒヒ。ウヒヒ」とうるさい。
私は「泣いてねぇし!」と言って走り去った。生まれながらのなんちゃってエンターテイナーである私は、人の期待通りの行動をつい取ってしまうのだ。
休憩中、歯を磨いていると事務所のベテランお局に声を掛けられた。
「聞いたよぉ~~」
聞くと、私は既婚者に妻子がいるのを隠されたまま長年遊ばれた挙句、相手の妻にバレて泥沼裁判に発展したことになっていた。髪を切っただけなのに。何をどうしたらそうなるのだろうか。怖っ。
その日のアフターファイブから私はツチノコを探しまくった。
切った髪をいちいち焼かなくてはならないからなかなか大変だ。
しかし見つからない。
日曜になった。今日は仕事が休みだから、思う存分ツチノコを捜索できる。
町のあちこちを探したが見つからず、最終的に私はマムシが大量に出るという草ボーボーの林に足を踏み入れた。
噂通りマムシがわんさか出てきた。
こんなこともあろうかと、なけなしの貯金をはたいてマングースを密輸しておいて良かった。豊かな老後のためならば、ワシントン条約も怖くない。
何しろ200万しただけあって、マングースは凄かった。
彼はマムシというマムシの頭を噛みちぎり、それらを片っ端からたらふく食べた。ちょっと怖かった。
しかしマングースの健闘も虚しく、ツチノコは見つからない。切った髪も燃やし尽くし、万策尽きた。
林の中にある池のほとりでお昼を食べることにした。マングースは満腹で苦しそうだが、私は空腹でフラフラだ。
持ってきたカッパ巻きをリュックから取り出して食べようとしていると、数メートル離れた草むらがガサリと動いた。
見ると薄緑色の奇妙な生物が覗いている。初めて見る生物だ。くちばしがあり、頭には平べったい皿のような物を載せている。
それは徐々にこちらに近づいて来て、潤んだ目で私を見た。
無視していると、さらに私の側に寄って来て、しまいには上目遣いしながら私の手にしたカッパ巻きに手を伸ばした。背中に甲羅を背負っている。
何だ、ただのぶりっ子した河童か。それにしてもド厚かましい。
私は空腹とツチノコが捕まらないのとでイライラしていたので、
「テメェにゃあ用はねぇんだよ!!!」
とマングースをけしかけたらそれは「キュインッ」と鳴いて池に一目散に飛び込んだ。
動機はというと、身もふたもない言い方をすると金のためである。
本職だけではなかなか貯金が貯まらないので副業を始めようと思ったのだ。それもなるべく楽なものが良い。
そこで、アフィリエイトを思い付いた。
ブログを開設してツチノコをアップして、たくさんの人に見てもらうのだ。
私はアフィリエイトの意味もやり方も詳しく知らないが、ツチノコを獲ってから調べれば良いだろう。確定申告のやり方も後からで良いだろう。
寝ているうちに一億円くらい貯まってれば良いなぁ、と一億円の使い道を寝る前に妄想した。
とりあえず通勤用に電動自転車を購入し、壊れかけのレディオと壊れかけの炊飯器と壊れかけのゲームボーイを買い替えよう。ゲームボーイなんて、もう30年使っているのだ。画面が白黒で目が悪くなるので、そろそろカラーのタイプが出て欲しいのだが。
そして米は無洗米にして、肉は国産を買おう。カニカマではなく本物の蟹を食べに行こう。張り切って行こう。
思うに、人を殺す話か下ネタしか思い付かないのは欲求不満のせいかもしれない。ツチノコによって金持ちになり、環境が変われば爽やかハッピーな妄想をすることが出来るようになると期待した。
ニタニタしながら眠りにつくと、夢の中で壊れかけのレディオが「捨てないで」と訴えてきたが無視した。いつもは何も聞かせてくれないのに。壊れかけじゃなくて、もう完全にぶっ壊れてるんじゃないだろうか?
まず私がやったのは、美容院で髪を切ることだった。
ツチノコは髪を燃やす匂いを好むという情報を得たからだ。肩にギリギリで付かないくらいの髪をバッサリ切ることにした。
美容院で「ショートカットにして下さい。切った髪は持ち帰っても良いですか?」と言ってみた。
美容師は快く頼みを聞いてくれた。
「大丈夫ですよ。因みに、何に使うんですか?」
「焼いてツチノコをおびき寄せるんです」
「……かしこまりました」
その美容師はは散髪中、どれくらい切るかなどの髪に関する事以外の世間話をしなかった。
彼は恐らくツチノコを知らなかったのだと思う。若い人だったのでジェネレーションギャップという奴だろうか。
私は髪が多いので、切った髪は45Lサイズの袋にパンパンになった。
翌日、出勤してタイムカードを押していると後ろから来た他部署のオッサンが「バッサリいったねぇ、失恋でもしたの?ウヒヒ。ウヒヒ」と聞いてきた。
「違います!」と否定したが、彼は更に「強がらなくても良いんだよ。ウヒヒ。ウヒヒ」とうるさい。
私は「泣いてねぇし!」と言って走り去った。生まれながらのなんちゃってエンターテイナーである私は、人の期待通りの行動をつい取ってしまうのだ。
休憩中、歯を磨いていると事務所のベテランお局に声を掛けられた。
「聞いたよぉ~~」
聞くと、私は既婚者に妻子がいるのを隠されたまま長年遊ばれた挙句、相手の妻にバレて泥沼裁判に発展したことになっていた。髪を切っただけなのに。何をどうしたらそうなるのだろうか。怖っ。
その日のアフターファイブから私はツチノコを探しまくった。
切った髪をいちいち焼かなくてはならないからなかなか大変だ。
しかし見つからない。
日曜になった。今日は仕事が休みだから、思う存分ツチノコを捜索できる。
町のあちこちを探したが見つからず、最終的に私はマムシが大量に出るという草ボーボーの林に足を踏み入れた。
噂通りマムシがわんさか出てきた。
こんなこともあろうかと、なけなしの貯金をはたいてマングースを密輸しておいて良かった。豊かな老後のためならば、ワシントン条約も怖くない。
何しろ200万しただけあって、マングースは凄かった。
彼はマムシというマムシの頭を噛みちぎり、それらを片っ端からたらふく食べた。ちょっと怖かった。
しかしマングースの健闘も虚しく、ツチノコは見つからない。切った髪も燃やし尽くし、万策尽きた。
林の中にある池のほとりでお昼を食べることにした。マングースは満腹で苦しそうだが、私は空腹でフラフラだ。
持ってきたカッパ巻きをリュックから取り出して食べようとしていると、数メートル離れた草むらがガサリと動いた。
見ると薄緑色の奇妙な生物が覗いている。初めて見る生物だ。くちばしがあり、頭には平べったい皿のような物を載せている。
それは徐々にこちらに近づいて来て、潤んだ目で私を見た。
無視していると、さらに私の側に寄って来て、しまいには上目遣いしながら私の手にしたカッパ巻きに手を伸ばした。背中に甲羅を背負っている。
何だ、ただのぶりっ子した河童か。それにしてもド厚かましい。
私は空腹とツチノコが捕まらないのとでイライラしていたので、
「テメェにゃあ用はねぇんだよ!!!」
とマングースをけしかけたらそれは「キュインッ」と鳴いて池に一目散に飛び込んだ。
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