上 下
8 / 13

8

しおりを挟む
それからも林は由衣子につきまとった。用もないのに病院を訪れ、窓口から由衣子を冷やかしたり、帰りを執念深く待って後をつけたりした。

由衣子の住むアパートの前で声を掛けられた事もある。完全に家を特定されていた。

上司や警察に相談する事も考えた。しかしそうすると返って逆効果になるかもしれず、そもそも対応してくれるかも分からない。頼れる上司もいなかった。

薬局の外の部署、例えば看護部長や事務長に相談する事も出来たが話すのが面倒だったのと、薬局を空けて仕事がどんどんたまるよりは相談せずに仕事をやる方を選んだ。由衣子は人に頼るのが苦手だったし、何でも話せる友人もいなかった。

ある日由衣子がアパートを出るとまた林がいた。由衣子は無視して歩き出す。

「生理中だからって冷たいのな」

今日も今日とて彼はキレッキレのセクハラトークを開始した。彼はもうギプスも外れて通院も終わっていた。

彼は由衣子の横を歩きながら、彼女の使用するナプキンのメーカーと商品名を口にした。

彼女の買い物を見ていたのだ。

……彼女の中の何かが、プツン、とキレた瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

吉田定理の短い小説集(3000文字以内)

赤崎火凛(吉田定理)
大衆娯楽
短い小説(ショートショート)は、ここにまとめることにしました。 1分~5分くらいで読めるもの。 本文の下に補足(お題について等)が書いてあります。 *他サイトでも公開中。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の妊娠

廣瀬純一
大衆娯楽
妊娠した妻と体が入れ替わった夫が妊娠して出産をする話

アットホームな職場です!〜入った会社のアットホームっぷりが度を越していてもうすでに逃げたいんですけど

たんぽぽ。
大衆娯楽
そこ座って。早速オリエンテーション始めようか。 就業規則の説明に入る前に、二、三注意事項を話しとこうと思うんだけど、良いかな? ――出勤初日、あずさは就職を後悔することに――

作ろう! 女の子だけの町 ~未来の技術で少女に生まれ変わり、女の子達と楽園暮らし~

白井よもぎ
キャラ文芸
地元の企業に勤める会社員・安藤優也は、林の中で瀕死の未来人と遭遇した。 その未来人は絶滅の危機に瀕した未来を変える為、タイムマシンで現代にやってきたと言う。 しかし時間跳躍の事故により、彼は瀕死の重傷を負ってしまっていた。 自分の命が助からないと悟った未来人は、その場に居合わせた優也に、使命と未来の技術が全て詰まったロボットを託して息絶える。 奇しくも、人類の未来を委ねられた優也。 だが、優也は少女をこよなく愛する変態だった。 未来の技術を手に入れた優也は、その技術を用いて自らを少女へと生まれ変わらせ、不幸な環境で苦しんでいる少女達を勧誘しながら、女の子だけの楽園を作る。

夫の浮気

廣瀬純一
大衆娯楽
浮気癖のある夫と妻の体が入れ替わる話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...