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翌日。

またまた林は由衣子を呼んだ。薬の事で質問があるから薬剤師を呼んでくれと看護師に言うと、夕方に由衣子はやって来た。

「遅くなりすみません。昨日は良く眠れましたか?」

「うん、飲んだら朝までぐっすりだった」

「それは良かったです」

由衣子は、林が何故自分を呼んだのか不思議そうにしている。

「由衣子先生ね、俺今、看護師さんに坐薬入れてもらってるんだけど、自分で入れた事ないんだよね。家で困るといけないから挿入の練習しとこうと思ってね」

林は由衣子の事をナチュラルに下の名前で呼んだ。

「ちょっとどうやるかやって見せてよ、挿入が上手くなりたいからさ」

さすがに由衣子は困ったような顔をしている。

「良ければ、坐薬の入れ方の詳しい説明書が薬局にありますからお持ちしましょうか?」

彼女は林の返事も聞かず回れ右をして病室を出て行ってしまった。

 5分程経ち、由衣子が戻ってきた。息を切らし、頰が少し上気している。手には患者用の坐薬挿入法を説明した紙を持っている。それを林に示しながら、保管法なども交えて説明した。

 林は前と同じくあまり聞いていなかったが、ふんふんと一応相槌をうった。

「うん、挿入の仕方がよく分かった。今からでも早速挿入したいくらいだ」

説明が終わると彼は言った。挿入、挿入とうるさい。

「何か他にお聞きになりたい事はございますか?」

最後に由衣子が聞く。

「じゃ、先生の番号教えてよ」

「……申し訳ございません、決まりで患者さんに教えてはいけない事になっているんです」

本当に申し訳なさそうに由衣子は言う。それから壁の時計を見て、

「すみません、今日私当直なんです。そろそろ薬局に戻らないと」

と、さっさと病室から出て行った。

 林はその夜、明日はどういう口実で彼女を呼び出そうかと考えていた。
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