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生涯、彼は初恋の修道女を忘れる事ができない
聖女①
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馬車で各地を移動して王都を目指しているうちに、季節はあっという間に夏の終わりになった。
リシャールの話では9月の半ばまでに王都に帰れば良いと言う事なのでまだ時間にゆとりはあるらしい。
毎年、各地の訪問はテオフィルが1人で担っており、年中外部視察に行く羽目になっていたようだが、今年はリシャールが大部分をまわるようだ。
そして本日の訪問地であるローズライン王国最南の地ブレンでは、1ヶ月続いた照りつける日差しが和らぎ、優しい雨が大地に降り注いでいた。
まさにそれは恵みの雨だった。
「わぁ、雨が降った!」
「やっぱりリシャール殿下の婚約者は『聖女様』だったんだ! 噂は本当だったんだ!」
つい1時間ほど前から、王都から最南にある都市ブレンは歓喜の声で賑わっていた。
理由は20日以上降らなかった雨がとある聖女の魔法で嘘のように空から注がれるためである。
ローズライン王国は西は海に面しており、大陸と接しているため隣接国が多く、また縦に長い形状をしている。
だから、同じ国とはいえ、北にある王都は寒冷地であるのに対し、南側は温暖で干ばつが多い地域もある。
さらに様々な国と接しているため、小さな紛争を含め戦いを免れない歴史だ。
このブレンは数十年前の山脈を国境線としている隣国との国境の戦争により森が荒れ地になっていた。
さらにここ数年はダムの老朽化、異常気象による干ばつだ。
小さなため池は家畜や飲料水用で農地まで回らない。
雨が降らなければ、作物が育たない。
各地でくみ上げられ過ぎた井戸は枯れている。
それどれの村にある小さなため池の水も枯れてしまいそうになった時、リシャールとマリーは王族として公式訪問をしていた。
リシャールとマリーの本来の目的は視察、つまり被害状況を調べることだ。
訪問の途中、枯れそうなため池を見てながらブレンをまとめる市長の話を聞いているときだった。
リシャールが突然マリーに魔本を持たせて、「精巧に雨雲を書け」と指示した。
マリーは疑問に思いながらも、きっとリシャールには何か考えがあるのかもしれないと思い、言われた通り、どす黒い雨雲を描いたのだ。
「絵なんか書いてどうするんですか?」
「雨雲を作り雨を降らせる」
「どうやって……? 私は蝶くらいなら出せますが雨は流石に……」
「これを使え」
リシャールはしていた魔石のついた指輪を3つ外して、マリーに手渡した。
どれもカラット数では国内最大級の魔石を使用した指輪だった。
(こんなに大きな魔石なら雨雲を出せるかもしれない)
マリーは少し期待し、それを指にはめて、リシャールに言われた通り呪文を唱えた。
すると本の中から小さな綿菓子のような雲が出た。
「小さい……」
あまりのミニチュアサイズにマリーは肩を落とした。
リシャールの指輪を借りても所詮この程度でがっくりしたのだ。
リシャールはふっ、と笑った。
「……いい出来だな」
「これのどこがですか。というか今笑いましたよね?」
「笑ってない」
「見え透いた嘘はやめてください。どうせ私には無理ですよ。……このサイズじゃあ雨も降らないし、花も育ちません」
「まぁ、待て。そんなに怒るな」
今度はリシャールがマリーの手に手を重ねた。
マリーの小さな手を彼の長い指が優しく覆うと、体の芯に熱を帯びた。
そして目の前の小さな雲は瞬く間に空に広がり、大地に恵みの雨をもたらしたのだ。
「わぁ……」
マリーは声をあげて、感動する。
リシャールは、マリーが濡れないように上衣をかけた。
まるで出会った頃のように。
「一時しのぎだが、もうじき夏も終わる。来年までにダムを建設しなければいけないな」
リシャールは雨を見つめながら呟いた。
色素の薄い金髪が濡れていた。
濡れていても、やはりかっこいい。
髪から落ちる雫がどこか色っぽいのだ。
「リシャール様はこんなこともできるんですね」
随分前の記録にあるユートゥルナした雨ごいの儀式のようだ、と誰かが歓喜の声を上げた。
そう。この国の歴史では女神の生まれかわりであるユートゥルナが雨乞いをした記録も残っている。
マリーは自分の描いた絵が、人々の生活を潤すことが信じられなかった。
(私の魔法がまた人のためになっている……絶対、1人じゃできなかったわ。全部、リシャール様のおかげだわ)
マリーたちは公務の一環と、リシャールの結婚前の挨拶で各地を訪問しながら旅をしていた。
そして、今日のように数々の奇跡を生み出した。
回復魔法で病床者を助ける(リシャール)、季節外れの花を咲かせる(マリー)、氷魔法で深い谷に橋を作る(リシャール)、そして今日はマリーの番で雨のプレゼントだ。
リシャールの手によって、マリーの絵は本物になる。
そんなマリーの心中を知ってか、リシャールははっきりとマリーの目を見て言った。
「いや。この雨は私の力ではない。きみの魔法だ」
「私の魔法……?」
マリーは目を丸くした。
「私の魔力ではせいぜい蝶や小動物、今みたいな綿あめ程度の雲しか出せないはずですよ」
「私はその力を少し増強しただけだ。魔石と私の力は使ったが、本来は君の力だ。私は凍らせることはできて、風は操れるが『雲』を造像する力はない。女神じゃないから雨乞いなんてできないからな。ほら、見ろ。人々からはきみは女神か聖女に見えている」
「聖女……?」
「前に言っただろう。蝶を実現させ、ずっと生存させるその素晴らしい能力には可能性があると。もっと自分に自信を持てばいい」
「……リシャール様」
マリーは雨の中涙ぐんだ。
リシャールのそういうところが好きだった。
未来を明るく照らすような、勇気を与えてくれる。
また明日からも諦めずに信じて頑張ろうと思える言葉だ。
「まぁ、まだ私の力添えがあってのものだが……」
リシャールは濡れながら、空を見上げていた。
雨は当分止むことが無さそうだった。それどころか雨足は強くなってきている。
「そうですね。リシャール様は天才ですから」
「ああ、知っている」
リシャールは自身ありげに答えた。
そのあまりの謙遜のなさに、リシャールが魔法が得意なのは同然ではあるけれどマリーは笑ってしまった。
「もう師匠と呼ばせて下さい」
「ダメだ」
「どうしてですか? 貴方は私の魔法の先生なのに」
「だってきみは……私の婚約者だ。いや、もう時期妻だろう」
軽い口調で話していたはずが、いつの間にか熱のこもった視線で見つめられると、マリーは頬を染めた。
リシャールの話では9月の半ばまでに王都に帰れば良いと言う事なのでまだ時間にゆとりはあるらしい。
毎年、各地の訪問はテオフィルが1人で担っており、年中外部視察に行く羽目になっていたようだが、今年はリシャールが大部分をまわるようだ。
そして本日の訪問地であるローズライン王国最南の地ブレンでは、1ヶ月続いた照りつける日差しが和らぎ、優しい雨が大地に降り注いでいた。
まさにそれは恵みの雨だった。
「わぁ、雨が降った!」
「やっぱりリシャール殿下の婚約者は『聖女様』だったんだ! 噂は本当だったんだ!」
つい1時間ほど前から、王都から最南にある都市ブレンは歓喜の声で賑わっていた。
理由は20日以上降らなかった雨がとある聖女の魔法で嘘のように空から注がれるためである。
ローズライン王国は西は海に面しており、大陸と接しているため隣接国が多く、また縦に長い形状をしている。
だから、同じ国とはいえ、北にある王都は寒冷地であるのに対し、南側は温暖で干ばつが多い地域もある。
さらに様々な国と接しているため、小さな紛争を含め戦いを免れない歴史だ。
このブレンは数十年前の山脈を国境線としている隣国との国境の戦争により森が荒れ地になっていた。
さらにここ数年はダムの老朽化、異常気象による干ばつだ。
小さなため池は家畜や飲料水用で農地まで回らない。
雨が降らなければ、作物が育たない。
各地でくみ上げられ過ぎた井戸は枯れている。
それどれの村にある小さなため池の水も枯れてしまいそうになった時、リシャールとマリーは王族として公式訪問をしていた。
リシャールとマリーの本来の目的は視察、つまり被害状況を調べることだ。
訪問の途中、枯れそうなため池を見てながらブレンをまとめる市長の話を聞いているときだった。
リシャールが突然マリーに魔本を持たせて、「精巧に雨雲を書け」と指示した。
マリーは疑問に思いながらも、きっとリシャールには何か考えがあるのかもしれないと思い、言われた通り、どす黒い雨雲を描いたのだ。
「絵なんか書いてどうするんですか?」
「雨雲を作り雨を降らせる」
「どうやって……? 私は蝶くらいなら出せますが雨は流石に……」
「これを使え」
リシャールはしていた魔石のついた指輪を3つ外して、マリーに手渡した。
どれもカラット数では国内最大級の魔石を使用した指輪だった。
(こんなに大きな魔石なら雨雲を出せるかもしれない)
マリーは少し期待し、それを指にはめて、リシャールに言われた通り呪文を唱えた。
すると本の中から小さな綿菓子のような雲が出た。
「小さい……」
あまりのミニチュアサイズにマリーは肩を落とした。
リシャールの指輪を借りても所詮この程度でがっくりしたのだ。
リシャールはふっ、と笑った。
「……いい出来だな」
「これのどこがですか。というか今笑いましたよね?」
「笑ってない」
「見え透いた嘘はやめてください。どうせ私には無理ですよ。……このサイズじゃあ雨も降らないし、花も育ちません」
「まぁ、待て。そんなに怒るな」
今度はリシャールがマリーの手に手を重ねた。
マリーの小さな手を彼の長い指が優しく覆うと、体の芯に熱を帯びた。
そして目の前の小さな雲は瞬く間に空に広がり、大地に恵みの雨をもたらしたのだ。
「わぁ……」
マリーは声をあげて、感動する。
リシャールは、マリーが濡れないように上衣をかけた。
まるで出会った頃のように。
「一時しのぎだが、もうじき夏も終わる。来年までにダムを建設しなければいけないな」
リシャールは雨を見つめながら呟いた。
色素の薄い金髪が濡れていた。
濡れていても、やはりかっこいい。
髪から落ちる雫がどこか色っぽいのだ。
「リシャール様はこんなこともできるんですね」
随分前の記録にあるユートゥルナした雨ごいの儀式のようだ、と誰かが歓喜の声を上げた。
そう。この国の歴史では女神の生まれかわりであるユートゥルナが雨乞いをした記録も残っている。
マリーは自分の描いた絵が、人々の生活を潤すことが信じられなかった。
(私の魔法がまた人のためになっている……絶対、1人じゃできなかったわ。全部、リシャール様のおかげだわ)
マリーたちは公務の一環と、リシャールの結婚前の挨拶で各地を訪問しながら旅をしていた。
そして、今日のように数々の奇跡を生み出した。
回復魔法で病床者を助ける(リシャール)、季節外れの花を咲かせる(マリー)、氷魔法で深い谷に橋を作る(リシャール)、そして今日はマリーの番で雨のプレゼントだ。
リシャールの手によって、マリーの絵は本物になる。
そんなマリーの心中を知ってか、リシャールははっきりとマリーの目を見て言った。
「いや。この雨は私の力ではない。きみの魔法だ」
「私の魔法……?」
マリーは目を丸くした。
「私の魔力ではせいぜい蝶や小動物、今みたいな綿あめ程度の雲しか出せないはずですよ」
「私はその力を少し増強しただけだ。魔石と私の力は使ったが、本来は君の力だ。私は凍らせることはできて、風は操れるが『雲』を造像する力はない。女神じゃないから雨乞いなんてできないからな。ほら、見ろ。人々からはきみは女神か聖女に見えている」
「聖女……?」
「前に言っただろう。蝶を実現させ、ずっと生存させるその素晴らしい能力には可能性があると。もっと自分に自信を持てばいい」
「……リシャール様」
マリーは雨の中涙ぐんだ。
リシャールのそういうところが好きだった。
未来を明るく照らすような、勇気を与えてくれる。
また明日からも諦めずに信じて頑張ろうと思える言葉だ。
「まぁ、まだ私の力添えがあってのものだが……」
リシャールは濡れながら、空を見上げていた。
雨は当分止むことが無さそうだった。それどころか雨足は強くなってきている。
「そうですね。リシャール様は天才ですから」
「ああ、知っている」
リシャールは自身ありげに答えた。
そのあまりの謙遜のなさに、リシャールが魔法が得意なのは同然ではあるけれどマリーは笑ってしまった。
「もう師匠と呼ばせて下さい」
「ダメだ」
「どうしてですか? 貴方は私の魔法の先生なのに」
「だってきみは……私の婚約者だ。いや、もう時期妻だろう」
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