私は修道女なので結婚できません。私の事は忘れて下さい、お願いします。〜冷酷非情王子は修道女を好きらしいので、どこまでも追いかけて来ます〜

舞花

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生涯、彼は初恋の修道女を忘れる事ができない

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「それに、私がエマを簡単に忘れたら修道女を目指すこともなかったし、リシャール様と王都にいたかもしれない……!」
「……悪かったなエマのせいで。でもな。私なんか12年もきみだけが好きだったんだ。そんな薄い愛情と比べられない」
「私だってリシャール様がよぼよぼになっても好きの度合いは変わりません! 一緒にいるだけでいいです!」

 マリーも負けずに言い返したら、リシャールがムッとして、眉根を寄せた。

「私はきみが奴隷でも小動物でもいっそ虫でも構わない。どこにでもキスできる」
「虫にも……?」

 マリーは慄いた。
 リシャールはなかなか手強い。

「私だって全身どこでもできます!」

 売り言葉に買い言葉じゃないが、ここは負けられない。
 マリーは堂々と言い放った。

 すると、リシャールはふふっと笑った。

「言ったな? 嘘つくなよ。じゃあ今度、どこでもしてもらうからな」
「の、望むところです! 足でもいいですよ」
「足ね……ふ」

 なんだこの恥ずかしい言い合いは。
 マリーは乱れた息を整えた。

 というか、何故足にキスすることを小馬鹿にしたように笑うのだろう。

「リシャール様は……私を信じてないかもしれませんが」
「まぁきみの愛などあまり期待しないというかしたらしたで悲しいというか」
「酷い言いようですね。私は……」

 マリーはリシャールの瞳を真っ直ぐ覗き込んだ。目を細める。

「あなたといる時だけが生きてる中で、一番幸せだったんです」

 どこに居てもつらかった。
 自分を静観し誤魔化していた。
 彼との日々は、どんな絵画より物語よりも素晴らしかった。

 リシャールはマリーに、恋を、彼女の可能性を教えてくれたのだ。
 結果、誰にも期待されない冴えない彼女の世界が美しく輝いた。

 リシャールはマリーの手を握った。
 その瞳は真摯で澱みない。

「それは私も同じだ。どれほど、きみに救われたかわからない」
「私は何も……むしろ私がお礼を言いたいぐらいです」
「なぁ、ローゼ。王都に一緒に帰ろう」
「……リシャール様」

 2人が見つめあった、そんな時だった。

「お取込み中悪いんだけど」

 その声はドアの方から聞こえてきた。

 マリーたちがそちらに視線を向けると、いつのまにか不機嫌な顔をしたユートゥルナが腕を組んで立っていた。

 もちろん、フードはとっている。というか、フードがその辺に落ちていた。
 ちなみに、不恰好に床にあるフードはいい雰囲気の2人を見て苛立った彼が投げ捨てたものだった。

「ユートゥルナ様! いつから……いらしたのですか?」
「さぁ、いつかな?」

 ユートゥルナは苦虫を潰したような表情で言った。

「ちょっといいかな、きみたち。立ち話もあれだから、僕の部屋に来てくれないかな?」
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