153 / 169
生涯、彼は初恋の修道女を忘れる事ができない
冷酷非情王子は修道女をどこまでも追いかける②
しおりを挟む
(なんだろう。これってもしかして修羅場的なものかしら……?)
マリーは、これではまるで彼らはマリーを取り合いしているようだと思いながらも、神様と王子様がまさか落ちこぼれかつ地味な修道女を好きなんて話はあるわけないと、自身に言い聞かせた。
リシャールはまだ続けた。やけに丁寧な、普段は不遜な彼には似合わない敬語で。
「しかもですね、私の弟であるテオフィルも来月、サラとともに面会の申請をしたそうです。速攻で受理されたらしいです。何故ですか?」
「それは……」
「同じ王族なのに、私は無理で、弟夫婦は良くて、これは何の違いでしょうか?」
「え、えっとだって君は……」
「確かに私は修道院には長らく対立的な立場を取ってきましたが、それにしても手紙が1通すら彼女に届かないので、不審に思い、今日はこちらを訪問させていただきました」
「……気が早いね。たった数通手紙が届かなかったくらいで」
「最低毎日3通は送ったんですけどね。朝昼晩。おかしいですね」
「……内容に不備があったのではないのかな? そういう場合は、受理しない場合もある」
ユートゥルナが負けじと言い返した。
リシャールは首を傾げる。
「特にこれと言って普通の内容でしたが、届きませんでした」
「普通の内容?」
「ええ、義妹の手紙の様な政務に関わらない、ラブレターですよ」
「君が、ラブレター……そんなものを書く様には見えないけど……」
「いえ、ちゃんと書きましたよ。毎日彼女を思うと眠れないくらい愛していたとか、姿形も仕草も性格も全部好きだったとか、あの夜のようにもう一度余すことなく愛したいとか」
「そんな話は言わなくていいよ!」
ユートゥルナは声を荒げた。
近くにいたフレッドがくすくす笑っていたのが聞こえたが、辺りの人間は「これ何かの修羅場?」と感づいた者もいたようで、じーっとそのやり取りを眺めていた。
いつの間にかさっきまで白目を剥いていた修道士も目を覚ましているようで、こちらをおかしな顔で見ていた。
リシャールはやけに今日は饒舌に、にこやかに話した。
彼の話はまだ終わらなかった。
「それに……ああ、今日もまた不思議な事が起こりました。身分証も提示したのに、修道院の門すら通れず……見張りに門前払いされてしまいましてね。一国の王子なのに嫌われたものです。ですので、少し手荒い事をしてしまいましたが、修道士の皆さんは死んではいないので安心してください。貴方の魔法ですぐに動けるようになると思いますよ。私が言いたいのは――」
ユートゥルナが低い声で言った。
「ここには君に関係のあるものは1つもないよ。ここには、修道士しかいないし、君の探している人なんていない。居たとしても、それは君の幻だ。君の探している婚約者というものは作られた人物だからそもそも存在しない」
婚約者は存在しない。
その言葉にマリーの期待が一気に崩れ落ちた。
それは紛れもない真実だ。
ローゼは、ユートゥルナの魔法で出来た『作り物』なのだから。
だから、もう期待してどきどきする必要なんてない。
マリーは涙をこらえて、歯を食いしばった。
(なんで期待なんかしているの。バカみたい。全部、ユートゥルナ様の言う通りだわ)
ローゼはいない。
王子様は身分の釣り合った人間と結婚すべき。
それは正論だ。
それにどうせリシャールはマリーを見つけられないから。
見つけたとしても、結婚はできないから。
リシャールの愛した侯爵令嬢ローゼはいないのだ。
「君はいい加減、その執着を捨ててそれ相当の身分の令嬢と婚姻を結ぶべきだよ。君がいくら探したって、君の婚約者はここにはいない。いや、もしかしたら僕が任務を命じた『婚約者役』の人間はいるかもしれないけど――もしこの数千もの修道女の中に居たとして、見つけてどうするの?」
「……」
「君も王家と修道院の戦争なんてしたくないだろう? 見張り役は配慮が足りなかったからこちらの非もあるし、命に別状がないのなら今回は多めに見るから、今回はお引き取り願えないかな?」
ユートゥルナは早く帰れと言わんばかりに扉の方を差し、開けるように指示をした。
「そうか。じゃあ、帰る前にそこを退いてくれないか?」
リシャールがぐいっとユートゥルナの肩を掴んで、押しのけた。
ユートゥルナがふらついて、脇に逸れ、膝をついた。
「何するんだ、君は何をしたかわかっているのか? 一国の王子がその無礼はーー」
「ローゼが泣いているんだ。そんな事も分からないのか。お前は彼女の上司だろう?」
「は……?」
「ローゼはローゼなのに、見かけが変わったぐらいで別人だと決めつけるな。彼女を傷つけて楽しいのか?」
その時初めてユートゥルナは肩を振るわせているマリーを一瞥した。
「マリー……?」
マリーは俯いていた。
リシャールは実に嫌そうな顔で言い捨てた。
「ああ、もうダメだなここは。早くローゼを連れて帰らなくてはならないな」
「ローゼ……? だから、そんな人間は。彼女は修道女で、任務のために王都に派遣しただけで……」
先程からの穏やかな表情が一変し、リシャールがユートゥルナを睨みつけた。
「もうお前に聞いていない。私の大切なマリーローゼリーに聞いているんだ」
「なんで君はマリーの名前を知っているんだ……?」
リシャールは躊躇なくマリーのフードをとった。
顔が露わになる。
リシャールは嬉しそうに、口角を上げた。
マリーは目に涙を溜めて、震える声で言った。
「だ、誰のことでしょう? ……リシャール殿下」
「ああ、私が君を間違えることはない」
リシャールはマリーの手を取り、少し屈んで優しくキスをした。
予想もしない事態に、当たりが一段とざわついた。
「私はローゼの爪の形も全て覚えているから隠したって無駄だ」
リシャールの声は囁く様に甘く掠れ、マリーを動揺させた。
「少し痩せたな。あの日、別れてからずっと……ローゼの事が心配だったんだ」
「あ、あの……」
「そんな顔しなくていい。心を痛める必要なんてない。……きみは何も悪くない」
「でも、私はあなたに……!」
マリーはリシャールの気持ちも考えずに、自分の不甲斐なさのために、一方的に別れを告げ、王都から出て行った。
身に余る求婚を押し除けて。
マリーは涙で言葉が出てこなかった。
目の前にいるリシャールの青い瞳には泣きべそをかいたマリーが映り込んでいた。
「きみは、人が良くて、そそっかしくて、可哀想なくらい人に気を使うから。自分を責めていたんだろう? 私は……そんなきみがどう過ごしているかばかり考えていたよ」
「リシャール様っ……!」
リシャールは優しく言った。
「さぁ、早く……私と一緒に帰ろう?」
マリーは、これではまるで彼らはマリーを取り合いしているようだと思いながらも、神様と王子様がまさか落ちこぼれかつ地味な修道女を好きなんて話はあるわけないと、自身に言い聞かせた。
リシャールはまだ続けた。やけに丁寧な、普段は不遜な彼には似合わない敬語で。
「しかもですね、私の弟であるテオフィルも来月、サラとともに面会の申請をしたそうです。速攻で受理されたらしいです。何故ですか?」
「それは……」
「同じ王族なのに、私は無理で、弟夫婦は良くて、これは何の違いでしょうか?」
「え、えっとだって君は……」
「確かに私は修道院には長らく対立的な立場を取ってきましたが、それにしても手紙が1通すら彼女に届かないので、不審に思い、今日はこちらを訪問させていただきました」
「……気が早いね。たった数通手紙が届かなかったくらいで」
「最低毎日3通は送ったんですけどね。朝昼晩。おかしいですね」
「……内容に不備があったのではないのかな? そういう場合は、受理しない場合もある」
ユートゥルナが負けじと言い返した。
リシャールは首を傾げる。
「特にこれと言って普通の内容でしたが、届きませんでした」
「普通の内容?」
「ええ、義妹の手紙の様な政務に関わらない、ラブレターですよ」
「君が、ラブレター……そんなものを書く様には見えないけど……」
「いえ、ちゃんと書きましたよ。毎日彼女を思うと眠れないくらい愛していたとか、姿形も仕草も性格も全部好きだったとか、あの夜のようにもう一度余すことなく愛したいとか」
「そんな話は言わなくていいよ!」
ユートゥルナは声を荒げた。
近くにいたフレッドがくすくす笑っていたのが聞こえたが、辺りの人間は「これ何かの修羅場?」と感づいた者もいたようで、じーっとそのやり取りを眺めていた。
いつの間にかさっきまで白目を剥いていた修道士も目を覚ましているようで、こちらをおかしな顔で見ていた。
リシャールはやけに今日は饒舌に、にこやかに話した。
彼の話はまだ終わらなかった。
「それに……ああ、今日もまた不思議な事が起こりました。身分証も提示したのに、修道院の門すら通れず……見張りに門前払いされてしまいましてね。一国の王子なのに嫌われたものです。ですので、少し手荒い事をしてしまいましたが、修道士の皆さんは死んではいないので安心してください。貴方の魔法ですぐに動けるようになると思いますよ。私が言いたいのは――」
ユートゥルナが低い声で言った。
「ここには君に関係のあるものは1つもないよ。ここには、修道士しかいないし、君の探している人なんていない。居たとしても、それは君の幻だ。君の探している婚約者というものは作られた人物だからそもそも存在しない」
婚約者は存在しない。
その言葉にマリーの期待が一気に崩れ落ちた。
それは紛れもない真実だ。
ローゼは、ユートゥルナの魔法で出来た『作り物』なのだから。
だから、もう期待してどきどきする必要なんてない。
マリーは涙をこらえて、歯を食いしばった。
(なんで期待なんかしているの。バカみたい。全部、ユートゥルナ様の言う通りだわ)
ローゼはいない。
王子様は身分の釣り合った人間と結婚すべき。
それは正論だ。
それにどうせリシャールはマリーを見つけられないから。
見つけたとしても、結婚はできないから。
リシャールの愛した侯爵令嬢ローゼはいないのだ。
「君はいい加減、その執着を捨ててそれ相当の身分の令嬢と婚姻を結ぶべきだよ。君がいくら探したって、君の婚約者はここにはいない。いや、もしかしたら僕が任務を命じた『婚約者役』の人間はいるかもしれないけど――もしこの数千もの修道女の中に居たとして、見つけてどうするの?」
「……」
「君も王家と修道院の戦争なんてしたくないだろう? 見張り役は配慮が足りなかったからこちらの非もあるし、命に別状がないのなら今回は多めに見るから、今回はお引き取り願えないかな?」
ユートゥルナは早く帰れと言わんばかりに扉の方を差し、開けるように指示をした。
「そうか。じゃあ、帰る前にそこを退いてくれないか?」
リシャールがぐいっとユートゥルナの肩を掴んで、押しのけた。
ユートゥルナがふらついて、脇に逸れ、膝をついた。
「何するんだ、君は何をしたかわかっているのか? 一国の王子がその無礼はーー」
「ローゼが泣いているんだ。そんな事も分からないのか。お前は彼女の上司だろう?」
「は……?」
「ローゼはローゼなのに、見かけが変わったぐらいで別人だと決めつけるな。彼女を傷つけて楽しいのか?」
その時初めてユートゥルナは肩を振るわせているマリーを一瞥した。
「マリー……?」
マリーは俯いていた。
リシャールは実に嫌そうな顔で言い捨てた。
「ああ、もうダメだなここは。早くローゼを連れて帰らなくてはならないな」
「ローゼ……? だから、そんな人間は。彼女は修道女で、任務のために王都に派遣しただけで……」
先程からの穏やかな表情が一変し、リシャールがユートゥルナを睨みつけた。
「もうお前に聞いていない。私の大切なマリーローゼリーに聞いているんだ」
「なんで君はマリーの名前を知っているんだ……?」
リシャールは躊躇なくマリーのフードをとった。
顔が露わになる。
リシャールは嬉しそうに、口角を上げた。
マリーは目に涙を溜めて、震える声で言った。
「だ、誰のことでしょう? ……リシャール殿下」
「ああ、私が君を間違えることはない」
リシャールはマリーの手を取り、少し屈んで優しくキスをした。
予想もしない事態に、当たりが一段とざわついた。
「私はローゼの爪の形も全て覚えているから隠したって無駄だ」
リシャールの声は囁く様に甘く掠れ、マリーを動揺させた。
「少し痩せたな。あの日、別れてからずっと……ローゼの事が心配だったんだ」
「あ、あの……」
「そんな顔しなくていい。心を痛める必要なんてない。……きみは何も悪くない」
「でも、私はあなたに……!」
マリーはリシャールの気持ちも考えずに、自分の不甲斐なさのために、一方的に別れを告げ、王都から出て行った。
身に余る求婚を押し除けて。
マリーは涙で言葉が出てこなかった。
目の前にいるリシャールの青い瞳には泣きべそをかいたマリーが映り込んでいた。
「きみは、人が良くて、そそっかしくて、可哀想なくらい人に気を使うから。自分を責めていたんだろう? 私は……そんなきみがどう過ごしているかばかり考えていたよ」
「リシャール様っ……!」
リシャールは優しく言った。
「さぁ、早く……私と一緒に帰ろう?」
0
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる