138 / 169
生涯、彼は初恋の修道女を忘れる事ができない
修道女と妃殿下
しおりを挟む
「サラ様。短い間でしたが、大変お世話になりました」
マリーはサラに感謝を込めて深くお辞儀した。
サラは瞳を潤ませて立ち上がり、マリーに駆け寄って彼女の肩を掴んで問いかけた。
「ローゼ様……本当に修道院に帰られるのですか……!」
レオナルドの事件から2日後の昼過ぎ。
マリーとサラは中庭でお茶をしていた。
事の発端は、マリーがお別れを言うためにサラをお茶に誘ったことが始まりだった。
ちょうど簡単な昼食を二人で薔薇を観賞しながら食べた後、マリーは重い口を開いてサラに明後日王都を経つ事を伝えたのだ。
その瞬間、サラは顔色を無くし愕然とした。
「ごめんなさい。サラ様。もう修道院から帰還命令が出ているんです。サラ様と会えなくなるのはつらいですが、お手紙を書きますから……これからもよかったら、ずっと友達でいてください」
サラはこの世の終わりの様な表情で、ウサギの様な赤瞳に涙をたくさん溜めていた。
「せっかくお友達になれたのに……!」
サラにとって初めての女友達がマリーだったのだ。
人見知りかつやや人間不信気味だったサラがマリーに出会ったことで、敬遠しがちだったサロンにも少しずつ参加するようになり、最近は社交界にも出席できるようになったのだ。
隣国から一人嫁いだサラにとってどれほどマリーの存在が頼もしかったことか。
サラにとってマリーはいわば恩人なのだ。
詳しく言えば、優しいお母さんみたいな存在であり、サラの暴走を温かい目で見守り、時に励まし、助言してくれる唯一無二の存在だった。
だから、サラがショックを受けるのもわかる。
「ローゼ様がいなかったらわたくしはただの変態引きこもりになっていまします……!」
「変態引きこもり……」
マリーは言葉を失う。サラは王子の妃でありながら、官能小説家なのである。
変態ということは言い過ぎかもしれないが、サラの場合ある意味本当に変態であるからマリーも迂闊に言葉が出なかった。
だって、王子様を全裸にして逆さ吊りにする等の辱めと言う辱めを書いた小説の作者なのである。
決して常人の沙汰ではないのは事実だ。
しかもモデルは彼女の夫だと言うからとてもたちが悪いお姫様なのである。
そんな風変わりな姫であるサラもマリーにとっても特別な存在だった。
サラは王都に来てから初めての友達であって、今や二人はニコルの件で同じ事件を共に戦い、リシャールの秘密を知った同志であった。
ちなみにリシャールの秘密というのが、王子なのに神様みたいに魔石も魔道具も何も使用しないで魔法が使えるというとんでもないものであり、神であるユートゥナを崇める信仰をぶち壊すものだった。
神様は魔石がなくても魔法が使えるから『神様』の生まれ変わりなのに、なぜ神のような人物が2人もいるのかという恐ろしい秘密を共有する仲間でもあった。
サラは困った面もあるが、積極的に私財(かの小説の印税等)を寄付したり、貧困層に対する対策を積極的に考えている平等感と正義感のある人物でもある。
ちょっとずれたところを除けば、博識で頭の良い人物であった。
マリーは微笑み、サラを優しく抱きしめた。
「サラ様は立派な方です。私なんかいなくてももう大丈夫ですよ。自信を持ってください。あなたこそ、王子の妃にふさわしいです」
「そんなことありません! わたくしは屑、いえ屑のほうがまだマシなくらいのどうしようもない人間です。ローゼ様がいたから、わたくしは引きこもりを卒業し人並みになれたのに……」
「サラ様……」
マリーは段々サラが心配になって来たのは言うまでもない。
しかし帰らなくてはいけない身。
もともと仕事で王都に来たのだから。
しばらくサラの自虐を聞きながら、時にハンカチで彼女の涙をぬぐって落ち着いた頃。
やっと、サラが現実を認める様にいったのだ。
「そうですね。もう会えないわけではないですし。ぐすっ。ローゼ様は昇進なのですし、おめでとうございます、と言わなければいけませんね」
「ありがとうございます、サラ様」
「絶対に会いに行きますわ」
「ぜひ」
サラは自分の席に戻り、すっかり冷めたハーブティーを飲んだ。
マリーもつられて一口飲んだ時のことだった。
サラが頬に手を当てて、悩まし気に呟いた。
「リシャール様、結局捨てられたのですね」
「ぐふっ……!」
マリーはサラの一言に吐き出しそうになり、盛大にむせる。
「ローゼ様、だ大丈夫ですかっ……?」
「あ、ごほごほ。だ、大丈夫です。捨てるも何も、私たちは不釣り合いと言いますか」
マリーは思う。
自分は修道女だし、リシャールは王子だし、そもそも二人の身分差は好きだとか愛しているから埋められるものではないと。
もし、マリーが歴代に残る聖女の様な能力があったら別かもしれなかったが、残念ながらマリーは落ちこぼれな修道女のわけで。
そんな事情を分からないサラは、ぶつぶつと小声で言った。
「はぁ……聞く限りリシャール様は何回振られるのでしょうか。ああ、可哀想になってきましたわ。励ましようがないと言いますか。救いようがないと言いますか。事件では身を徹して血だらけになったり、ローゼ様の事が好き過ぎて心配であらゆる方法で守りまくったのに、私財も投げ打って部屋も改築したのに。いろいろ我慢に我慢を重ねた結果あっさり撃沈。一ミリも動物的接触もできなかったという悲惨な結果。弟のテオなんて犯罪級の既成事実無理矢理実行犯なのに、リシャール様は……案外甲斐性なしなのですね。だからわたくしがお薬の力に頼ればいいと言ったのに律儀にも使わなかったんですのね。ああ、でも……彼は別に何度振られてもハートブレイクなんて無縁の鉄のメンタルですし、きっと大丈夫でしょう。いいえ、ここまで来たらむしろ振られるのを楽しんでいるとか? 不思議な性癖ですわね……理解できませんわ」
マリーはサラが言っている事が分からない。
実はマリーの知らない所でサラは(あくまでも親切心で)リシャールにマリーと既成事実を起こさせるための媚薬を渡していたのだった。
親友だと思っていたサラがリシャールに「これであいつを襲え」と薬を渡していると知らないマリーはぽかんとしていた。
「サラ様、何のお話でしょか。薬とは……」
「ローゼ様。わたくしもローゼ様のそんな無垢な所が隙があって大好きですわ! 寂しくなりますけど、手紙も沢山書きますし、これからも時折会いに行きますわ!」
マリーはうまい具合にサラにごまかされた。
上手く話せないと語っていた口下手なサラも成長したのだ。
マリーはサラに感謝を込めて深くお辞儀した。
サラは瞳を潤ませて立ち上がり、マリーに駆け寄って彼女の肩を掴んで問いかけた。
「ローゼ様……本当に修道院に帰られるのですか……!」
レオナルドの事件から2日後の昼過ぎ。
マリーとサラは中庭でお茶をしていた。
事の発端は、マリーがお別れを言うためにサラをお茶に誘ったことが始まりだった。
ちょうど簡単な昼食を二人で薔薇を観賞しながら食べた後、マリーは重い口を開いてサラに明後日王都を経つ事を伝えたのだ。
その瞬間、サラは顔色を無くし愕然とした。
「ごめんなさい。サラ様。もう修道院から帰還命令が出ているんです。サラ様と会えなくなるのはつらいですが、お手紙を書きますから……これからもよかったら、ずっと友達でいてください」
サラはこの世の終わりの様な表情で、ウサギの様な赤瞳に涙をたくさん溜めていた。
「せっかくお友達になれたのに……!」
サラにとって初めての女友達がマリーだったのだ。
人見知りかつやや人間不信気味だったサラがマリーに出会ったことで、敬遠しがちだったサロンにも少しずつ参加するようになり、最近は社交界にも出席できるようになったのだ。
隣国から一人嫁いだサラにとってどれほどマリーの存在が頼もしかったことか。
サラにとってマリーはいわば恩人なのだ。
詳しく言えば、優しいお母さんみたいな存在であり、サラの暴走を温かい目で見守り、時に励まし、助言してくれる唯一無二の存在だった。
だから、サラがショックを受けるのもわかる。
「ローゼ様がいなかったらわたくしはただの変態引きこもりになっていまします……!」
「変態引きこもり……」
マリーは言葉を失う。サラは王子の妃でありながら、官能小説家なのである。
変態ということは言い過ぎかもしれないが、サラの場合ある意味本当に変態であるからマリーも迂闊に言葉が出なかった。
だって、王子様を全裸にして逆さ吊りにする等の辱めと言う辱めを書いた小説の作者なのである。
決して常人の沙汰ではないのは事実だ。
しかもモデルは彼女の夫だと言うからとてもたちが悪いお姫様なのである。
そんな風変わりな姫であるサラもマリーにとっても特別な存在だった。
サラは王都に来てから初めての友達であって、今や二人はニコルの件で同じ事件を共に戦い、リシャールの秘密を知った同志であった。
ちなみにリシャールの秘密というのが、王子なのに神様みたいに魔石も魔道具も何も使用しないで魔法が使えるというとんでもないものであり、神であるユートゥナを崇める信仰をぶち壊すものだった。
神様は魔石がなくても魔法が使えるから『神様』の生まれ変わりなのに、なぜ神のような人物が2人もいるのかという恐ろしい秘密を共有する仲間でもあった。
サラは困った面もあるが、積極的に私財(かの小説の印税等)を寄付したり、貧困層に対する対策を積極的に考えている平等感と正義感のある人物でもある。
ちょっとずれたところを除けば、博識で頭の良い人物であった。
マリーは微笑み、サラを優しく抱きしめた。
「サラ様は立派な方です。私なんかいなくてももう大丈夫ですよ。自信を持ってください。あなたこそ、王子の妃にふさわしいです」
「そんなことありません! わたくしは屑、いえ屑のほうがまだマシなくらいのどうしようもない人間です。ローゼ様がいたから、わたくしは引きこもりを卒業し人並みになれたのに……」
「サラ様……」
マリーは段々サラが心配になって来たのは言うまでもない。
しかし帰らなくてはいけない身。
もともと仕事で王都に来たのだから。
しばらくサラの自虐を聞きながら、時にハンカチで彼女の涙をぬぐって落ち着いた頃。
やっと、サラが現実を認める様にいったのだ。
「そうですね。もう会えないわけではないですし。ぐすっ。ローゼ様は昇進なのですし、おめでとうございます、と言わなければいけませんね」
「ありがとうございます、サラ様」
「絶対に会いに行きますわ」
「ぜひ」
サラは自分の席に戻り、すっかり冷めたハーブティーを飲んだ。
マリーもつられて一口飲んだ時のことだった。
サラが頬に手を当てて、悩まし気に呟いた。
「リシャール様、結局捨てられたのですね」
「ぐふっ……!」
マリーはサラの一言に吐き出しそうになり、盛大にむせる。
「ローゼ様、だ大丈夫ですかっ……?」
「あ、ごほごほ。だ、大丈夫です。捨てるも何も、私たちは不釣り合いと言いますか」
マリーは思う。
自分は修道女だし、リシャールは王子だし、そもそも二人の身分差は好きだとか愛しているから埋められるものではないと。
もし、マリーが歴代に残る聖女の様な能力があったら別かもしれなかったが、残念ながらマリーは落ちこぼれな修道女のわけで。
そんな事情を分からないサラは、ぶつぶつと小声で言った。
「はぁ……聞く限りリシャール様は何回振られるのでしょうか。ああ、可哀想になってきましたわ。励ましようがないと言いますか。救いようがないと言いますか。事件では身を徹して血だらけになったり、ローゼ様の事が好き過ぎて心配であらゆる方法で守りまくったのに、私財も投げ打って部屋も改築したのに。いろいろ我慢に我慢を重ねた結果あっさり撃沈。一ミリも動物的接触もできなかったという悲惨な結果。弟のテオなんて犯罪級の既成事実無理矢理実行犯なのに、リシャール様は……案外甲斐性なしなのですね。だからわたくしがお薬の力に頼ればいいと言ったのに律儀にも使わなかったんですのね。ああ、でも……彼は別に何度振られてもハートブレイクなんて無縁の鉄のメンタルですし、きっと大丈夫でしょう。いいえ、ここまで来たらむしろ振られるのを楽しんでいるとか? 不思議な性癖ですわね……理解できませんわ」
マリーはサラが言っている事が分からない。
実はマリーの知らない所でサラは(あくまでも親切心で)リシャールにマリーと既成事実を起こさせるための媚薬を渡していたのだった。
親友だと思っていたサラがリシャールに「これであいつを襲え」と薬を渡していると知らないマリーはぽかんとしていた。
「サラ様、何のお話でしょか。薬とは……」
「ローゼ様。わたくしもローゼ様のそんな無垢な所が隙があって大好きですわ! 寂しくなりますけど、手紙も沢山書きますし、これからも時折会いに行きますわ!」
マリーはうまい具合にサラにごまかされた。
上手く話せないと語っていた口下手なサラも成長したのだ。
0
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる