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修道女と王都と、花と、死者
薔薇の街15
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リシャールは横を歩く、マリーを見た。
手を伸ばしても未だにマリーローゼリー、つまり大好きだった初恋の『きみ』まで、まだ届かない。
目の前にいるマリーは、未だにリシャールの恋人でもなければ、友人でもない。
リシャールは、これは、罰か。数多の人生を踏み躙った事に対する罪なのか、と思った。
今から11年前、逃亡中のあの時は、リシャールは身を隠すために魔法を封じられたのだ。
日常的な簡単な魔法以外は、数十人の魔術師に幾重にも封印術をかけられ、氷魔法は全く使えなかった。
だから、あのリシャールが魔法で『水』すら出せなかったのだ。だが、幸いな事に回復系魔法はできたので、彼女を救うことができた。
しかしその後、愛する『マリーローゼリー』は修道院に出家。
それがリシャールの苦すぎる『初恋の結果』だった。心残りは彼女に残してしまった背中の傷跡だった。
リシャールの切なる思いは、修道院に散った。
あれから何度も訪問を繰り返したが、修道院には手出しできなかったのだ。
リシャールがもう、を好きになることはない、と思い、日々を送っていたそんな時に彼女に再会したのだ。
大人になって、もう11年の時が流れていた。
「どうしたんですか?」
「いや、今日もローゼに会えて嬉しいと思ったんだ」
「えっ……?」
彼女はぎょっとして、驚いたような顔をした。
『急に何言うんだ、こいつ。気持ち悪いな』と思っているかもしれないが、リシャールとしては長い間ただ一人だけを思い続けていたのだから、ゆるしてほしいと思った。
リシャールにとって彼女に会えるだけで夢のようなのだ。
本当は今すぐ結婚してしまいたいくらい、部屋に閉じ込めておきたいくらい大切で、好きで好きで仕方がないのに、こうやっておとなしくしているのだ。
思い返せば、今年の春。
マリーローゼリーの全てが苦く愛しい思い出になった頃だった。そして人生のすべてを諦めていた時だった。
そんな時にリシャールは彼女に再会した。
リシャールが弟の結婚式すら身を隠し出席し、式の後の会食すら参加せず、一人寂しく教会でにいたあの雪混じりの日。
リシャールは教会でいかにも人が好さそうな穏やかでお節介で、呑気な間抜けな女に出会った。
彼女はリシャールのことを知らずに声をかけて来る、いかにも無害な人種だった。
そして、能天気な彼女の床に散らばる絵は、懐かしい辺境地の景色だった。
何故かその能天気な彼女が、リシャールには大人になったマリーローゼリーと重なって見えたのだ。
髪の色も何もかも違うように見えるのに。
その時リシャールは「この手の能天気な人間が好きなんだな」、と自分自身に半ば呆れたのを覚えている。
目の前の彼女と思い出の『マリーローゼリー』は別人だと言い聞かせて、教会で逢瀬を重ねた。
接するうちに、過去の『マリーローゼリー』ではなく、リシャールの中で今の彼女の存在が大きくなっていった。
誰からも見捨てられたリシャールを彼女だけが普通の「人間」と扱ってくれたのだ。
彼女からの差し入れの野菜が多いサンドイッチ、綺麗にラッピングされたクッキー、自家製のハーブティーや茶葉。何よりも、こんなリシャールに笑いかけてくれる人が好さそうな笑顔。
リシャールがあの氷華殿下だと知っても態度は変わることなく、凍った人生を溶かすような温かい日差しのような時間だった。
リシャールは目の前の彼女とずっと一緒にいたい、と思い始めていた。
そんな矢先に、彼女から「社交界デビューをするから、もう会えなくなる」と残酷な言葉を聞き、さらに別れ際に、私ではなくジャンの手を取った時、もう好きな人を失いたくないと本気で思った。
また好きな人を取られたくない。
この目の前の彼女も、幼き日のあの子も。リシャールの中で2人が重なった。
教会であった『ローゼ』という女性は11年ぶりにリシャールの心をひどく揺さぶったのだ。
********
リシャールが社交界デビューするという彼女と別れた後。
リシャールは徹底的に目の前の彼女の素性について調べた。
もちろん、リシャールは教会で逢瀬を重ねていた時から彼女が修道女だということは知っていた。
再会した日は分からなかったが、数日後の報告書でテオフィルが修道院に血抜き殺人事件のために修道女を呼び寄せたと言う事を知り、中身を詳しく読んでみると、教会で出会った彼女という事がすぐにわかった。
だから、随分初期から彼女が『辺境地の学校に通っていたブラン侯爵の娘』という設定で暮らしていることも知っていた。
当初から彼女を素性を知ってはいたが、その修道女が何者かを知りたかったのだ。
修道院に入る前は何をしていたのか。どこの生まれなのか。
心のどこかで、もしかしたら、彼女は初恋の人ではないかという予感があったのだ。
不思議な事に、ローゼとマリーローゼリーは名前もそうだが、どこか似ていた。
容姿は似ても似つかない髪色と瞳で、ローゼという女は不思議と実際よりも華やかに見えるが、どこか違和感のある女だった。
教会で出会ったころは何となく懐かしさはあったが、マリーローゼリーと修道女マリーは容姿が違ったし、婚約しようと彼女の身元を調べるまで分からなかったのだ。
マリーローゼリーは人に馴染めないエマを救ってくれた。
ローゼは人殺し殿下であるリシャールを救ってくれた。
リシャールは、2人が別人であっても、なくても、今度こそ好きな子を逃すまいと思い、まず戸籍を調べた。
しかし、修道女のマリーの出生情報は何も出てこない。
だから、修道院に使い魔を飛ばし、名簿を盗み出し、過去の経歴からさかのぼったところ、マリーローゼリーに辿りついたのだ。やはり、嫌な予感は的中したのだ。
ちなみに、彼女が修道女として王都に派遣されるために必要な書類というものがある。
それは任務報告書といい、身元情報について記載されているものだ。
任務報告書には、彼女の名前はマリーで、年は20歳、出身地は王都からすぐそばの都市、修道女になったのは5年前と記載されていた。
マリーローゼリーは今23歳だろうし、出身も辺境地付近だし、出家したのも11年前だから全部違う。
つまり、それを見れば、彼女の出身地や経歴を確認することが出来るのだが、どうしてもリシャールはその情報が納得いかなかった。
だから、徹底的に調べたのだ。
すると、予感通り、リシャールが調べた戸籍と彼女に関する修道院側の報告書は、年齢も経歴も出身地も違った。
修道院がたかが1人の修道女の素性を何のために王族を欺くか、その理由を知るのに時間はかからなかった。
彼女は神のお気に入り、ということが調査でわかったのだ。
そして、差出人不明の手紙が届いた。神のものには手を出してはいけない。と。
リシャールはそんなものを無視して破り捨てた。
神とやら。もう、私の邪魔はするな、と。
手を伸ばしても未だにマリーローゼリー、つまり大好きだった初恋の『きみ』まで、まだ届かない。
目の前にいるマリーは、未だにリシャールの恋人でもなければ、友人でもない。
リシャールは、これは、罰か。数多の人生を踏み躙った事に対する罪なのか、と思った。
今から11年前、逃亡中のあの時は、リシャールは身を隠すために魔法を封じられたのだ。
日常的な簡単な魔法以外は、数十人の魔術師に幾重にも封印術をかけられ、氷魔法は全く使えなかった。
だから、あのリシャールが魔法で『水』すら出せなかったのだ。だが、幸いな事に回復系魔法はできたので、彼女を救うことができた。
しかしその後、愛する『マリーローゼリー』は修道院に出家。
それがリシャールの苦すぎる『初恋の結果』だった。心残りは彼女に残してしまった背中の傷跡だった。
リシャールの切なる思いは、修道院に散った。
あれから何度も訪問を繰り返したが、修道院には手出しできなかったのだ。
リシャールがもう、を好きになることはない、と思い、日々を送っていたそんな時に彼女に再会したのだ。
大人になって、もう11年の時が流れていた。
「どうしたんですか?」
「いや、今日もローゼに会えて嬉しいと思ったんだ」
「えっ……?」
彼女はぎょっとして、驚いたような顔をした。
『急に何言うんだ、こいつ。気持ち悪いな』と思っているかもしれないが、リシャールとしては長い間ただ一人だけを思い続けていたのだから、ゆるしてほしいと思った。
リシャールにとって彼女に会えるだけで夢のようなのだ。
本当は今すぐ結婚してしまいたいくらい、部屋に閉じ込めておきたいくらい大切で、好きで好きで仕方がないのに、こうやっておとなしくしているのだ。
思い返せば、今年の春。
マリーローゼリーの全てが苦く愛しい思い出になった頃だった。そして人生のすべてを諦めていた時だった。
そんな時にリシャールは彼女に再会した。
リシャールが弟の結婚式すら身を隠し出席し、式の後の会食すら参加せず、一人寂しく教会でにいたあの雪混じりの日。
リシャールは教会でいかにも人が好さそうな穏やかでお節介で、呑気な間抜けな女に出会った。
彼女はリシャールのことを知らずに声をかけて来る、いかにも無害な人種だった。
そして、能天気な彼女の床に散らばる絵は、懐かしい辺境地の景色だった。
何故かその能天気な彼女が、リシャールには大人になったマリーローゼリーと重なって見えたのだ。
髪の色も何もかも違うように見えるのに。
その時リシャールは「この手の能天気な人間が好きなんだな」、と自分自身に半ば呆れたのを覚えている。
目の前の彼女と思い出の『マリーローゼリー』は別人だと言い聞かせて、教会で逢瀬を重ねた。
接するうちに、過去の『マリーローゼリー』ではなく、リシャールの中で今の彼女の存在が大きくなっていった。
誰からも見捨てられたリシャールを彼女だけが普通の「人間」と扱ってくれたのだ。
彼女からの差し入れの野菜が多いサンドイッチ、綺麗にラッピングされたクッキー、自家製のハーブティーや茶葉。何よりも、こんなリシャールに笑いかけてくれる人が好さそうな笑顔。
リシャールがあの氷華殿下だと知っても態度は変わることなく、凍った人生を溶かすような温かい日差しのような時間だった。
リシャールは目の前の彼女とずっと一緒にいたい、と思い始めていた。
そんな矢先に、彼女から「社交界デビューをするから、もう会えなくなる」と残酷な言葉を聞き、さらに別れ際に、私ではなくジャンの手を取った時、もう好きな人を失いたくないと本気で思った。
また好きな人を取られたくない。
この目の前の彼女も、幼き日のあの子も。リシャールの中で2人が重なった。
教会であった『ローゼ』という女性は11年ぶりにリシャールの心をひどく揺さぶったのだ。
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リシャールは徹底的に目の前の彼女の素性について調べた。
もちろん、リシャールは教会で逢瀬を重ねていた時から彼女が修道女だということは知っていた。
再会した日は分からなかったが、数日後の報告書でテオフィルが修道院に血抜き殺人事件のために修道女を呼び寄せたと言う事を知り、中身を詳しく読んでみると、教会で出会った彼女という事がすぐにわかった。
だから、随分初期から彼女が『辺境地の学校に通っていたブラン侯爵の娘』という設定で暮らしていることも知っていた。
当初から彼女を素性を知ってはいたが、その修道女が何者かを知りたかったのだ。
修道院に入る前は何をしていたのか。どこの生まれなのか。
心のどこかで、もしかしたら、彼女は初恋の人ではないかという予感があったのだ。
不思議な事に、ローゼとマリーローゼリーは名前もそうだが、どこか似ていた。
容姿は似ても似つかない髪色と瞳で、ローゼという女は不思議と実際よりも華やかに見えるが、どこか違和感のある女だった。
教会で出会ったころは何となく懐かしさはあったが、マリーローゼリーと修道女マリーは容姿が違ったし、婚約しようと彼女の身元を調べるまで分からなかったのだ。
マリーローゼリーは人に馴染めないエマを救ってくれた。
ローゼは人殺し殿下であるリシャールを救ってくれた。
リシャールは、2人が別人であっても、なくても、今度こそ好きな子を逃すまいと思い、まず戸籍を調べた。
しかし、修道女のマリーの出生情報は何も出てこない。
だから、修道院に使い魔を飛ばし、名簿を盗み出し、過去の経歴からさかのぼったところ、マリーローゼリーに辿りついたのだ。やはり、嫌な予感は的中したのだ。
ちなみに、彼女が修道女として王都に派遣されるために必要な書類というものがある。
それは任務報告書といい、身元情報について記載されているものだ。
任務報告書には、彼女の名前はマリーで、年は20歳、出身地は王都からすぐそばの都市、修道女になったのは5年前と記載されていた。
マリーローゼリーは今23歳だろうし、出身も辺境地付近だし、出家したのも11年前だから全部違う。
つまり、それを見れば、彼女の出身地や経歴を確認することが出来るのだが、どうしてもリシャールはその情報が納得いかなかった。
だから、徹底的に調べたのだ。
すると、予感通り、リシャールが調べた戸籍と彼女に関する修道院側の報告書は、年齢も経歴も出身地も違った。
修道院がたかが1人の修道女の素性を何のために王族を欺くか、その理由を知るのに時間はかからなかった。
彼女は神のお気に入り、ということが調査でわかったのだ。
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