私は修道女なので結婚できません。私の事は忘れて下さい、お願いします。〜冷酷非情王子は修道女を好きらしいので、どこまでも追いかけて来ます〜

舞花

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修道女と王都と、花と、死者

雨の中の訪問者

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 暗い夜だった。雷が鳴っていた。
 昼間は、晴れていていい天気だったのが、嘘のようだった。
 午後に差し出し人不明の、立派な木箱が届いたが、施錠されており、マリーには中身は分からなかった。
 もしかしたら、教会関係の荷物かもしれないので、玄関付近に保管はしていたのだ。
 マリーは帰ってからパンを食べ、シャワーを浴びて、髪を乾かして、寝巻きに着替えていた。
 時刻は9時過ぎ。修道院ならとっくに就寝時間だ。
 2階にある寝室のベッドに入り、本を読もうと思っていた矢先、玄関のチャイムが鳴ったのだ。

(こんな酷い天気に、しかも夜に誰だろう? 急用かしら?)

 教会関係の建物は関係者以外見つけられないように結界が張られているから、きっと急用がある仲間に違いない。
 フレッドか、ジャンか。訪ねてくるのは、そんなところだろう。
 マリーは躊躇なく、施錠を外し、ドアを開けた。

「ただいま」

 遠くで雷が鳴った音がした。
 しとしとと雨の音も絶え間なくしている。
 玄関先の見慣れた彼は、白い肌から水滴が流れて、金髪は濡れていた。

「なんで……と、とにかく入って下さい!」

 マリーは濡れながら玄関先に立っていたリシャールに驚いたが、リシャールを追い返す事もできず、部屋に入るように招き入れた。
 雨に濡れたリシャールは、色っぽかった。

(なんで、殿下来たんだろう? いや、それより早く身体を暖めないと風邪を引いてしまうわ。殿下は強がりなのに、そっちゅう風邪をひくし……)

 マリーは純粋に心配していたのだ。

「お風呂入ります?」
「……そうしようかな。貴様は、寝る準備は終わったようだな」
「はい。もう寝るだけです」
「風呂は確か、奥だったな。上で、待っていろ」

 リシャールはいつになく、爽やかにニコッと笑った。

「できるだけ、早く行くから」

 リシャールはマリーの頭を撫でて、愛しげに髪をすいた。

「は、はい……?」

 マリーはリシャールに促されるがまま、寝室に向かうが、違和感があった。
 ベッドに入って、ゆっくり深呼吸してから考えてみる。
 リシャールの突然の訪問。天気は雨。すごい雨。
 だから、部屋に招いただけなのに、会話がおかしいのだ。

(なんで2階が寝室だって知っているんだろう。お風呂の位置もそうだし……それに)

 なぜかマリーは言葉を間違えた感があった。
 ずぶ濡れだから、お風呂を勧めただけなのに。
 いや、間違えてはないんだけど、違和感が半端ない。

(なんで寝室で待たなきゃならないの? これじゃあ……)

 夫婦、みたいじゃないか、と思った時にドアが開いたのだ。
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