86 / 169
修道女と王都と、花と、死者
舞踏会にて③
しおりを挟む
(みんな綺麗で、かわいいなぁ。外見だけじゃなくて、作法も身のこなしも一流だし、舞踏会って感じ。流石、王都だわ。……修道女の来る場所じゃないな)
マリーは自身を静観して、目を伏せた。
ワインの注がれた鏡みたいに姿を映す不思議なガラス製のグラスに移るのは、エメラルドグリーンの瞳に、栗毛色の巻き髪を束ねた、つまり、着飾ったマリーで、紛れもなく『令嬢』だった。
(誰だろう、この人は。……ああ、私じゃなくて、『ローゼ』か)
マリーは魔女みたいな紫瞳で、濡鴉色の漆黒の髪を持つ地味な修道女だ。
ローゼという人物はユートゥルナの少しの魔法と、教会の協力と、ブラン侯爵の見立てと、リシャールという王子様の婚約者という肩書きでできている。
ひとつでも欠けたら、もう王都にいることができる『ローゼ』ではないのだ。
マリーは、いつもだったら滅多に、いや、仕事でなければ一生参加することのない大規模な舞踏会が憂鬱だった。
いつもなら、『いい絵の題材になるわ、ラッキー』と言う具合に楽しめるはずの舞踏会も、味気なかった。
マリーは、王都で仕事がなければ、いつも髪を一つにくくるだけで、簡単な化粧すらせず、箪笥には修道服だけだったような女だ。
着飾るどころか、マリーの平生の毎日は、汗だくになりながら、野良仕事や家事だけをこなすだけの日々だった。
休日は顔に絵の具をつけながら、一人っきりの部屋、つまり静かな世界で人知れずに絵を描く。
それが普通の日常だった。
マリーは、はじめは半ば嫌々押し付けられるような形で、昇進の話に流されて、乗る気ではなかった王都に来た。
それにも関わらず、気がつけば王都の暮らしにも馴染んで、最近は楽しめていたと思う。
友達もできた。
人にも慣れた。
修道女としての仕事は失敗ばかりで、イマイチでも、それなりに日々に疑問など持たなかった。
ただ、リシャールの姿が見えないだけで、目に見えるすべてが変わってしまったようだ。
一瞬で魔法が解けてしまったように、自分だけが場にそぐわないような気持ちだった。
マリーがぼんやりと着飾った令嬢たちを眺めている間に、先ほどまでテオフィルとともに来客の対応をしていたサラを見失ってしまった。
(あれ、いない……?)
会場内を見渡しても、サラの姿はどこにもない。
先程までサラがいたところには、テオフィルのみが会話に花を咲かせている。
マリーはサラを探すため、会場から出て、回廊を渡ってもサラの姿はなかった。
(ちょっと話したかったんだけどなぁ)
今更会場に戻っても、踊るつもりもないマリーはやることも無かった。
マリーはそのままどんどん歩を進め、会場から遠ざかっていった。
気付けばマリーは、中庭まで来ていた。
数日前まで死者で埋め尽くされていた中庭はその片鱗すらなく、春の中庭は薔薇で覆い尽くされており、上品な薔薇の香りがマリーの鼻腔をくすぐった。
(殿下の香りだ……)
この城に住むリシャールからも仄かな薔薇の香りがするのが思い出されて、マリーは一層切なくなった。
(いや、違う、殿下はもっと……)
リシャールの香りは薔薇よりも落ち着けて、いつまでも一緒にいたくなるような不思議な匂いがするのだ。
印のような紅い痕を身体につけられる時に抱きしめられたり、隣で食事をしていたり、ふとした時の残り香すら好きだった。
好きなのは、香りだけではない。
首元に顔を埋めてくるときについ触ってしまう、さらさらの金髪も糸のように綺麗で、肌も男性なのに透き通るくらい白くて、美しい。
どちらかというと背が高く細身なのに、腕や身体には適度に筋肉もあって、腰に手を回された時の力強さや、側にいるだけで感じる安心感は今までにない感覚だった。
マリーはリシャールの指先の爪の形も、澄ました横顔も、よく響く低い声も、すべて、違わずマリーは覚えている。
肌を這うすこし温度の低い唇の感触や、手の温かさも違わず思い出せる。
今までいろんな男性に出会ってきたが、かっこいいな、と思うだけで、それ以上の感覚はなかった。
フレッドも美形だけど、かっこいいと思うのは一瞬であとはただの友達だ。
女も男も友達は友達だ。
世間一般の男女はすべて公平で、仲の良し悪しはあるが、それ以上の感情はなかった。
だけど、リシャールは違う。
見るだけで飽きないというか、慣れない。
いつも体の奥が熱くなってしまう。
すこし触れただけで、世界が二人きりになったように音が無くなって、彼以外考えられなくなるのだ。
修道女である自分を忘れ、不甲斐ない自分も忘れ、彼の見るも忘れてしまいそうな時もある。
何度も、何度も自分を言い聞かせてきたのだ。
リシャールの見かけだけ好きだったら、こんなにも、リシャールを思わなかったと思うし、絵を完成させたら終わりだったはずだ。
(殿下については、いろいろ思うことがあるけど……)
マリーはリシャールの口が悪いくせに妙に律儀なところや人に甘いところも人間味があって好きだった。
何より、リシャールとの時間はいつも優しかった。
世間話も、意味のないくだらない会話も、心地よかった。
恋人ではなかったけど、ずっと、ずっと、許されるなら一緒にいたかった。
心が、彼を呼んでいる気がした。
マリーは、リシャールが居なくなってはじめて自分の気持ちを実感したのだ。
マリーは中庭を歩きながら思い馳せていると、ふと前方にサラが令嬢たちに囲まれているのを発見した。
(あれはもしかして、小説である令嬢たちがヒロインを囲んで集団いじめみたいな場面……?)
よく読む宮殿物の小説で『ちょっと可愛いからいい気になってんじゃないわよ!』と悪役令嬢と子分のモブキャラの令嬢が、超可愛いヒロインに突っかかる、あれじゃないか。
(いや、ただ話しているだけかもしれないし。サラ様は大抵のヒロインのように男爵令嬢で身分で位が低いわけでもないし、妃殿下だし、まさかあからさまにいじめなんて……)
もしかしたら、友達かもしれない。
しかし、友達が剣幕な形相で囲むとも考えづらく、マリーは迷った。
とにかく、マリーはいきなり出て行くわけにもいかず、木の陰にマリーは隠れ、事態を様子見する事にした。
それにマリーは何かあったらリシャールの権力? を翳してやろうと思っていた。
なにせ、マリーの婚約者リシャールは泣く子も黙る人喰いで、趣味は死体集め、道を通れば死人が出るという噂の氷華殿下だ。
マリーもリシャールの評判の悪さのおかげであからさまにいじめられたことはないし、効力は抜群のはずだ。
こういうときに役に立つのがリシャールの婚約者という立場である。
マリーは聞き耳を立てた。
マリーは自身を静観して、目を伏せた。
ワインの注がれた鏡みたいに姿を映す不思議なガラス製のグラスに移るのは、エメラルドグリーンの瞳に、栗毛色の巻き髪を束ねた、つまり、着飾ったマリーで、紛れもなく『令嬢』だった。
(誰だろう、この人は。……ああ、私じゃなくて、『ローゼ』か)
マリーは魔女みたいな紫瞳で、濡鴉色の漆黒の髪を持つ地味な修道女だ。
ローゼという人物はユートゥルナの少しの魔法と、教会の協力と、ブラン侯爵の見立てと、リシャールという王子様の婚約者という肩書きでできている。
ひとつでも欠けたら、もう王都にいることができる『ローゼ』ではないのだ。
マリーは、いつもだったら滅多に、いや、仕事でなければ一生参加することのない大規模な舞踏会が憂鬱だった。
いつもなら、『いい絵の題材になるわ、ラッキー』と言う具合に楽しめるはずの舞踏会も、味気なかった。
マリーは、王都で仕事がなければ、いつも髪を一つにくくるだけで、簡単な化粧すらせず、箪笥には修道服だけだったような女だ。
着飾るどころか、マリーの平生の毎日は、汗だくになりながら、野良仕事や家事だけをこなすだけの日々だった。
休日は顔に絵の具をつけながら、一人っきりの部屋、つまり静かな世界で人知れずに絵を描く。
それが普通の日常だった。
マリーは、はじめは半ば嫌々押し付けられるような形で、昇進の話に流されて、乗る気ではなかった王都に来た。
それにも関わらず、気がつけば王都の暮らしにも馴染んで、最近は楽しめていたと思う。
友達もできた。
人にも慣れた。
修道女としての仕事は失敗ばかりで、イマイチでも、それなりに日々に疑問など持たなかった。
ただ、リシャールの姿が見えないだけで、目に見えるすべてが変わってしまったようだ。
一瞬で魔法が解けてしまったように、自分だけが場にそぐわないような気持ちだった。
マリーがぼんやりと着飾った令嬢たちを眺めている間に、先ほどまでテオフィルとともに来客の対応をしていたサラを見失ってしまった。
(あれ、いない……?)
会場内を見渡しても、サラの姿はどこにもない。
先程までサラがいたところには、テオフィルのみが会話に花を咲かせている。
マリーはサラを探すため、会場から出て、回廊を渡ってもサラの姿はなかった。
(ちょっと話したかったんだけどなぁ)
今更会場に戻っても、踊るつもりもないマリーはやることも無かった。
マリーはそのままどんどん歩を進め、会場から遠ざかっていった。
気付けばマリーは、中庭まで来ていた。
数日前まで死者で埋め尽くされていた中庭はその片鱗すらなく、春の中庭は薔薇で覆い尽くされており、上品な薔薇の香りがマリーの鼻腔をくすぐった。
(殿下の香りだ……)
この城に住むリシャールからも仄かな薔薇の香りがするのが思い出されて、マリーは一層切なくなった。
(いや、違う、殿下はもっと……)
リシャールの香りは薔薇よりも落ち着けて、いつまでも一緒にいたくなるような不思議な匂いがするのだ。
印のような紅い痕を身体につけられる時に抱きしめられたり、隣で食事をしていたり、ふとした時の残り香すら好きだった。
好きなのは、香りだけではない。
首元に顔を埋めてくるときについ触ってしまう、さらさらの金髪も糸のように綺麗で、肌も男性なのに透き通るくらい白くて、美しい。
どちらかというと背が高く細身なのに、腕や身体には適度に筋肉もあって、腰に手を回された時の力強さや、側にいるだけで感じる安心感は今までにない感覚だった。
マリーはリシャールの指先の爪の形も、澄ました横顔も、よく響く低い声も、すべて、違わずマリーは覚えている。
肌を這うすこし温度の低い唇の感触や、手の温かさも違わず思い出せる。
今までいろんな男性に出会ってきたが、かっこいいな、と思うだけで、それ以上の感覚はなかった。
フレッドも美形だけど、かっこいいと思うのは一瞬であとはただの友達だ。
女も男も友達は友達だ。
世間一般の男女はすべて公平で、仲の良し悪しはあるが、それ以上の感情はなかった。
だけど、リシャールは違う。
見るだけで飽きないというか、慣れない。
いつも体の奥が熱くなってしまう。
すこし触れただけで、世界が二人きりになったように音が無くなって、彼以外考えられなくなるのだ。
修道女である自分を忘れ、不甲斐ない自分も忘れ、彼の見るも忘れてしまいそうな時もある。
何度も、何度も自分を言い聞かせてきたのだ。
リシャールの見かけだけ好きだったら、こんなにも、リシャールを思わなかったと思うし、絵を完成させたら終わりだったはずだ。
(殿下については、いろいろ思うことがあるけど……)
マリーはリシャールの口が悪いくせに妙に律儀なところや人に甘いところも人間味があって好きだった。
何より、リシャールとの時間はいつも優しかった。
世間話も、意味のないくだらない会話も、心地よかった。
恋人ではなかったけど、ずっと、ずっと、許されるなら一緒にいたかった。
心が、彼を呼んでいる気がした。
マリーは、リシャールが居なくなってはじめて自分の気持ちを実感したのだ。
マリーは中庭を歩きながら思い馳せていると、ふと前方にサラが令嬢たちに囲まれているのを発見した。
(あれはもしかして、小説である令嬢たちがヒロインを囲んで集団いじめみたいな場面……?)
よく読む宮殿物の小説で『ちょっと可愛いからいい気になってんじゃないわよ!』と悪役令嬢と子分のモブキャラの令嬢が、超可愛いヒロインに突っかかる、あれじゃないか。
(いや、ただ話しているだけかもしれないし。サラ様は大抵のヒロインのように男爵令嬢で身分で位が低いわけでもないし、妃殿下だし、まさかあからさまにいじめなんて……)
もしかしたら、友達かもしれない。
しかし、友達が剣幕な形相で囲むとも考えづらく、マリーは迷った。
とにかく、マリーはいきなり出て行くわけにもいかず、木の陰にマリーは隠れ、事態を様子見する事にした。
それにマリーは何かあったらリシャールの権力? を翳してやろうと思っていた。
なにせ、マリーの婚約者リシャールは泣く子も黙る人喰いで、趣味は死体集め、道を通れば死人が出るという噂の氷華殿下だ。
マリーもリシャールの評判の悪さのおかげであからさまにいじめられたことはないし、効力は抜群のはずだ。
こういうときに役に立つのがリシャールの婚約者という立場である。
マリーは聞き耳を立てた。
0
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる