81 / 169
修道女、姫の護衛をする
彼の秘密③
しおりを挟む
マリーを声を張り上げたとき、ずっと静かだった指輪が点滅した。
指輪が古代魔法を感知している。
ニコルが近づいてきているのだろう。
「……ずっとここに居られないようだな」
時計の針はもう深夜2時だ。
リシャールの話によると古代魔法は魔力の消費が激しいため、最悪一晩逃げ切れば大丈夫だという。
マリーたちは部屋から出て回廊を彷徨うと、また夜の城を死者の群れに立ち合い、逃げた。
こんなことを朝まで続けるのだろうか。
ニコルに会った時点で終わりだ。
マリーの仕事仲間である王城に詳しいフレッドやジャンがいたら何がなんでも助けてくれたはずなのに、もう頼る相手はいないのだ。
ジャンに関しても初日から部下であるマリーが事件に巻き込まれるなんて思ってなかっただろうし、教会関係者が万が一のため控えていた。
リシャールも丸腰だし、事態は絶望的だ。
それに咄嗟にかっとなって、リシャールに嫌いだとか言ってしまった。
リシャールは何も言わなかったし、傷ついた様子でもなかったが、こんな状況でもやはり気まずい。
でも、マリーは簡単に命を捨てるのが気に食わなかったし、リシャールが化け物と言われて聖器で血を流す様子も複雑な気分で気が立っていた。
マリーは胸が苦しかった。
リシャールにとって今日が『変な日』なら、マリーにとっては今日は『嫌な日』だ。
ニコルがいう聖器で撃たれて血が流れている事実は罪の深さということか本当ならば、リシャールの罪は深い。
その事実から、目を背けたくても今夜はそれを許さない。
(死者たちを巻いたら殿下にどんな手を使ってもすぐに治癒魔法をかけよう。殿下が例えどんな罪があろうと、私は……)
マリーはどんな手を使っても治癒魔法を使うと決意した。
死者の群れを巻いて、息を乱しているマリーたちにリシャールは考え込んだあと、ぽつりと言った。
「貴様ら、私の秘密、守れるか?」
「殿下……?」
「リシャール様?」
マリーはポカンとする。
秘密ってなんだろうか。
サラは何かに気づいたのかハッと目を見開いていた。
「守れるか、と聞いているんだ」
リシャールは再度はっきりとした口調で訊いた。
余程重要なことらしい。
「まさか、リシャール様は……!」
ずっと事態を深刻そうに眺めていたサラが何かに勘づいたようだった。
マリーは意味がわからないが、サラは自信があるようで、はっきりと言った。
「リシャール様は変身されるのですね!」
「……変身? なんだそれは?」
リシャールがものすごい嫌そうな顔をした。
サラが目を輝かせて、リシャールの不快そうな表情を無視してさらに言った。
「とぼけたって無駄ですよ。わたくし、変だと思っていたのです。このゾンビまみれの状況でわたくしたちを眠らせようとしたり、二人で逃げろなんて言ったり、それは戦いを見られては困る『何か』があるからなのですよ。リシャール様、実は本当は……やはり噂通り化け物で、ドラゴンに変身するのですね。イメージとぴったりです。魔王だったのですね! 納得です」
サラが、ぱぁぁっと明るい表情になり、リシャールはもっと嫌そうに眉根を寄せた。
もし本当にリシャールの正体がドラゴンなら勝てるかもしれない。
しかし。
「そんなわけあるか」
サラは小説の読みすぎなのだ。
さすがにリシャールでも変身はないだろう、とマリーは思う。
しかし、サラはリシャールの発言を聞かなかったらように続けた。意気揚々として。
「隠しても無駄ですよ。やっぱり人とは違うと思っていたんです。なるほど。羽生えるタイプでしょうか。だったら全裸にならねばなりませんね! わたくしに気になさらず、さあ脱いで下さい」
「サラ姫、やはり頭、大丈夫か? どこか悪いんじゃないか?」
サラは物陰をすすめる様に指さした。
マリーもそれに乗っかる事にした。
マリーはにっこり笑う。
「だったら上衣、私が預かりますよ。……どうやって羽が生えるんでしょう? 楽しみですね、さすが殿下です!」
マリーもいい感じにそれに乗っかる。
この際、ドラゴンでも、魔王でも、人間でもいいから、服を脱がせて、傷口の確認をして、押さえつけて、治癒魔法をかけよう。
サラもなんだか脱がせたいみたいだし、サラに目配せしてアイコンタクトを取るとサラは解ったと言わんばかりに微笑んだ。
良かった、サラが王族で、変な人で、こんな状況でもおかしな想像力が働く人で感謝だ。突破口が見つかりそうだ。
「上衣、邪魔ですね。シャツもズボンも邪魔ですね。血がついて1人では脱げないのですね。ふふ、それならお手伝いしますよ。水臭いですよ、殿下」
マリーはリシャールの上衣を脱がせようとするが何故かリシャールは抵抗するので、サラも応援にかけつけ、ふたりで追い剥ぎのように群がる。
しかし、さすがリシャール。
怪我を負っていても、簡単に脱がせてはくれず、サラとマリーを子供を相手にしている様にひょいひょいっと軽くかわす。
「貴様ら、離せ。私にしていることが分かっているのか?」
「もちろん。早く脱ぎましょう、殿下」
「早く見てみたいですわ」
「なぜ、そうなる。変態の極みだな。貴様らやはり頭おかしいだろう、腐ってる」
リシャールはマリーとサラから身を守るように距離を取った。
いつの間にかサラもふつうにリシャールに話しかけていた。今までリシャールを警戒し、あんなに怖がっていたのが嘘みたいだ。
もうさすがに酒は抜けていると言うのに、どうしたのだろう。
リシャールも目も合わせれなかったサラの変化を不思議に思ったのかつぶやいた。
「……私に対する威厳はどこに消えた」
「だってこの状況で敬意もなにもないですわ。今はリシャール様よりにニコル様の方が驚異ですわ」
サラは何か吹っ切れていた。
真っ直ぐリシャールを見て、堂堂としている。
サラはもうおどおどした感じはなく、じろじろとリシャールを眺めた。
「リシャール様ってよくよく見るとあんまり怖くないんですのよね。噂から恐怖の悪魔魔王化け物だと思っていたのですが、今思えば過剰だったかもしれません。申し訳ございません、正直、ゾンビより全然怖くなかったです」
「さりげなく悪口いうな」
「そうですよ、サラ様。殿下は案外全然大したことないんですよ! 見かけは冷たそうで、声はいやらしい感じで悪役風情ですが、見かけだけです! 殿下は立場を利用すれば私を好きなようにできるのに、かなり奥手といえば奥手で、結局口だけで大した事は何もできない……んぐっ!」
マリーはリシャールに後ろから口を塞がれる。
「ああ、うるさい。保護猫と輸入うさぎのくせに嫌になる」
「また人のこと馬鹿にして!」
そんな不毛なやり取りをしていると死者の群れと怪しげな笑みを浮かべたニコルが追いついてきた。
そして運悪く、ここは回廊の行き止まり。
もう、逃げる術はない。
「秘密、守れるのか?」
リシャールは再度聞き直した。
「守れますけど」
「……サラ姫は?」
「助かるなら守りますわ、それが……たとえどんな破廉恥なものでも!」
「貴様には言われたくないわ!」
サラは官能小説家だから、彼女に破廉恥なんて言われたくない。
リシャールが言う事ももっともである。
というか、やはり、リシャールはサラが小説家ってことを知っていたみたいだ。
「よく見ておけ、私は、魔王なんかじゃない。そして直ぐに今見たことをすべて忘れろ」
リシャールは見ろと言ったり、見た瞬間から忘れろと言ったり、もう無茶苦茶だ。
指輪が古代魔法を感知している。
ニコルが近づいてきているのだろう。
「……ずっとここに居られないようだな」
時計の針はもう深夜2時だ。
リシャールの話によると古代魔法は魔力の消費が激しいため、最悪一晩逃げ切れば大丈夫だという。
マリーたちは部屋から出て回廊を彷徨うと、また夜の城を死者の群れに立ち合い、逃げた。
こんなことを朝まで続けるのだろうか。
ニコルに会った時点で終わりだ。
マリーの仕事仲間である王城に詳しいフレッドやジャンがいたら何がなんでも助けてくれたはずなのに、もう頼る相手はいないのだ。
ジャンに関しても初日から部下であるマリーが事件に巻き込まれるなんて思ってなかっただろうし、教会関係者が万が一のため控えていた。
リシャールも丸腰だし、事態は絶望的だ。
それに咄嗟にかっとなって、リシャールに嫌いだとか言ってしまった。
リシャールは何も言わなかったし、傷ついた様子でもなかったが、こんな状況でもやはり気まずい。
でも、マリーは簡単に命を捨てるのが気に食わなかったし、リシャールが化け物と言われて聖器で血を流す様子も複雑な気分で気が立っていた。
マリーは胸が苦しかった。
リシャールにとって今日が『変な日』なら、マリーにとっては今日は『嫌な日』だ。
ニコルがいう聖器で撃たれて血が流れている事実は罪の深さということか本当ならば、リシャールの罪は深い。
その事実から、目を背けたくても今夜はそれを許さない。
(死者たちを巻いたら殿下にどんな手を使ってもすぐに治癒魔法をかけよう。殿下が例えどんな罪があろうと、私は……)
マリーはどんな手を使っても治癒魔法を使うと決意した。
死者の群れを巻いて、息を乱しているマリーたちにリシャールは考え込んだあと、ぽつりと言った。
「貴様ら、私の秘密、守れるか?」
「殿下……?」
「リシャール様?」
マリーはポカンとする。
秘密ってなんだろうか。
サラは何かに気づいたのかハッと目を見開いていた。
「守れるか、と聞いているんだ」
リシャールは再度はっきりとした口調で訊いた。
余程重要なことらしい。
「まさか、リシャール様は……!」
ずっと事態を深刻そうに眺めていたサラが何かに勘づいたようだった。
マリーは意味がわからないが、サラは自信があるようで、はっきりと言った。
「リシャール様は変身されるのですね!」
「……変身? なんだそれは?」
リシャールがものすごい嫌そうな顔をした。
サラが目を輝かせて、リシャールの不快そうな表情を無視してさらに言った。
「とぼけたって無駄ですよ。わたくし、変だと思っていたのです。このゾンビまみれの状況でわたくしたちを眠らせようとしたり、二人で逃げろなんて言ったり、それは戦いを見られては困る『何か』があるからなのですよ。リシャール様、実は本当は……やはり噂通り化け物で、ドラゴンに変身するのですね。イメージとぴったりです。魔王だったのですね! 納得です」
サラが、ぱぁぁっと明るい表情になり、リシャールはもっと嫌そうに眉根を寄せた。
もし本当にリシャールの正体がドラゴンなら勝てるかもしれない。
しかし。
「そんなわけあるか」
サラは小説の読みすぎなのだ。
さすがにリシャールでも変身はないだろう、とマリーは思う。
しかし、サラはリシャールの発言を聞かなかったらように続けた。意気揚々として。
「隠しても無駄ですよ。やっぱり人とは違うと思っていたんです。なるほど。羽生えるタイプでしょうか。だったら全裸にならねばなりませんね! わたくしに気になさらず、さあ脱いで下さい」
「サラ姫、やはり頭、大丈夫か? どこか悪いんじゃないか?」
サラは物陰をすすめる様に指さした。
マリーもそれに乗っかる事にした。
マリーはにっこり笑う。
「だったら上衣、私が預かりますよ。……どうやって羽が生えるんでしょう? 楽しみですね、さすが殿下です!」
マリーもいい感じにそれに乗っかる。
この際、ドラゴンでも、魔王でも、人間でもいいから、服を脱がせて、傷口の確認をして、押さえつけて、治癒魔法をかけよう。
サラもなんだか脱がせたいみたいだし、サラに目配せしてアイコンタクトを取るとサラは解ったと言わんばかりに微笑んだ。
良かった、サラが王族で、変な人で、こんな状況でもおかしな想像力が働く人で感謝だ。突破口が見つかりそうだ。
「上衣、邪魔ですね。シャツもズボンも邪魔ですね。血がついて1人では脱げないのですね。ふふ、それならお手伝いしますよ。水臭いですよ、殿下」
マリーはリシャールの上衣を脱がせようとするが何故かリシャールは抵抗するので、サラも応援にかけつけ、ふたりで追い剥ぎのように群がる。
しかし、さすがリシャール。
怪我を負っていても、簡単に脱がせてはくれず、サラとマリーを子供を相手にしている様にひょいひょいっと軽くかわす。
「貴様ら、離せ。私にしていることが分かっているのか?」
「もちろん。早く脱ぎましょう、殿下」
「早く見てみたいですわ」
「なぜ、そうなる。変態の極みだな。貴様らやはり頭おかしいだろう、腐ってる」
リシャールはマリーとサラから身を守るように距離を取った。
いつの間にかサラもふつうにリシャールに話しかけていた。今までリシャールを警戒し、あんなに怖がっていたのが嘘みたいだ。
もうさすがに酒は抜けていると言うのに、どうしたのだろう。
リシャールも目も合わせれなかったサラの変化を不思議に思ったのかつぶやいた。
「……私に対する威厳はどこに消えた」
「だってこの状況で敬意もなにもないですわ。今はリシャール様よりにニコル様の方が驚異ですわ」
サラは何か吹っ切れていた。
真っ直ぐリシャールを見て、堂堂としている。
サラはもうおどおどした感じはなく、じろじろとリシャールを眺めた。
「リシャール様ってよくよく見るとあんまり怖くないんですのよね。噂から恐怖の悪魔魔王化け物だと思っていたのですが、今思えば過剰だったかもしれません。申し訳ございません、正直、ゾンビより全然怖くなかったです」
「さりげなく悪口いうな」
「そうですよ、サラ様。殿下は案外全然大したことないんですよ! 見かけは冷たそうで、声はいやらしい感じで悪役風情ですが、見かけだけです! 殿下は立場を利用すれば私を好きなようにできるのに、かなり奥手といえば奥手で、結局口だけで大した事は何もできない……んぐっ!」
マリーはリシャールに後ろから口を塞がれる。
「ああ、うるさい。保護猫と輸入うさぎのくせに嫌になる」
「また人のこと馬鹿にして!」
そんな不毛なやり取りをしていると死者の群れと怪しげな笑みを浮かべたニコルが追いついてきた。
そして運悪く、ここは回廊の行き止まり。
もう、逃げる術はない。
「秘密、守れるのか?」
リシャールは再度聞き直した。
「守れますけど」
「……サラ姫は?」
「助かるなら守りますわ、それが……たとえどんな破廉恥なものでも!」
「貴様には言われたくないわ!」
サラは官能小説家だから、彼女に破廉恥なんて言われたくない。
リシャールが言う事ももっともである。
というか、やはり、リシャールはサラが小説家ってことを知っていたみたいだ。
「よく見ておけ、私は、魔王なんかじゃない。そして直ぐに今見たことをすべて忘れろ」
リシャールは見ろと言ったり、見た瞬間から忘れろと言ったり、もう無茶苦茶だ。
0
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる