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修道女、姫の護衛をする
恋が叶う本②
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「サラ様はーー」
マリーが「違う」と言う前に、リシャールがきっぱりと言った。
「サラ姫は孤独じゃない、愛されている。お前が知らないだけだ」
「殿下……」
リシャールは珍しく少し躊躇ったが、意を決して言葉を紡いだ。
「あの……計算高い世間体をうじうじ気にする弟がむちゃして城に侵入し夜這いして結婚したんだ。あれこれそうだな、10年以上昔から好きだったんだ。手も出せないくらい……まぁ思い詰めて変な薬を手を出すくらいにな。正直、恥ずかしいくらいに惚れていたんだ」
リシャールは気まずそうに、テオフィルの秘密を暴露した。
「あいつは、口達者で社交性があるから、女慣れしていると思われがちだが、実はサラ姫以外女性経験がない」
「あの、テオフィル様が……つい最近までど、童……馬鹿な。嘘はやめなさい。あれだけ容姿端麗で優秀な王族なら相手ならいくらでもいるでしょう!」
「断言する。あいつの初めては、サラ姫に夜這いした夜だ。婚約中も浮気などない。テオは、王族や貴族が受ける女官の夜伽の授業を断ったくらいだからな。サラを裏切りたくないって。身内の中では有名な話だ」
確かにテオフィルのイメージは女慣れをしていて、すこし遊んでいてもおかしくないくらいフレンドリーだ。
まさかそんなに一途だったとは。
はじめてだから、媚薬を持って夜這いをしたらしい。
しかし、リシャールの弁解も虚しく、サラは暗い目をしてリシャールに言った。
「リシャール様、良いんです。今更構って頂かなくても。あの時、テオが初めてでも百戦錬磨でも、もういいんです。どうせ今、わたくしたちは寝室も別ですし、もう夫婦としては……」
「サラ姫よ。あの時、テオが婚約破棄についての話し合いのつもりで君を訪ねたのに、結果的に大好きな君とのはじめてが無理矢理夜這いになったあいつの心情を察してやれ」
「……!」
そう言えば、サラはテオフィルに婚約破棄をしようとしたところ、夜這されて既成事実を残し、結婚に至っている。
テオフィルの行動は、外交問題にもなりそうだが、そこまでサラと結婚したかったのだ。
「私が一方的に別れを告げたから……」
サラはなんだか思いあたるふしがあるようである。
テオフィルがあの夜の事を悔いて、反省しているため、結婚してからは、けじめとして寝室は別というのは頷ける。
「だいたいテオに他の相手がいるわけないだろう。馬鹿を言うな。あいつには、このちょっと困ったくせのある姫しかいない。今も昔もな。貴様こそ、一国の姫に手を出すなんて正気ではない。逃げた魔物に利用されている愚か者め」
「……リシャール様」
サラの瞳に光が戻る。
暗示が解けたらしい。
リシャールの思わぬ言葉を聞いてサラが少し涙ぐんだ。
リシャールは普段は口数が少なく、サラに関しては無愛想だったから、そんな風に思っていたとは驚きだった。
リシャールが言わなかったらきっとこの先もずっとテオフィルを誤解していただろう。
「……愚か? 私が?」
ニコルは痺れを切らし、リシャールをわき腹を聖器だという銃で打った。床に血が溢れる。
ニコルの話によると、魔器を無効にする、普通の人間には効果がないと言われる聖器で撃たれて、血を流すリシャールはやはり罪が重いことを物語っている。
「魔物を逃した? 利用されている? 違う。私は、神の力を借りているのです。神を封印から解き放ち、力を貸してもらっている。だいたい、魔石も神の恩恵、精霊の分身。逃したなど言い方は冒涜です。今や、魔力の強い者はまれなのは信じる力が足りないからで、神は弱って来ているから、強力な魔石と、私の意志で魔法は強くなる。私は選ばれたんです!」
マリーは王家の依頼を受けた時、ユートゥルナが言っていた事を思い出した。
人間の方が厄介だ、と。
気まぐれな精霊にはない執念を感じる。
執念が強いほど、信じる力が強くなり、魔力が増す。
ゾンビの群れもその執念が物語っている。
「……人が魔法を使う? お前らは魔物に使われているんだ」
リシャールは血を流しながら、こんな時でも澄ました顔をしていた。
とめどなく、傷口から血が流れているのに、相変わらず、嫌になるくらい強がりだ。
早く手当しなければ、出血量的にリシャールの命が危ない。
「あのお方は、我々と同じ苦しみを、時代を憎んでいる」
「そいつか盗んだのだろう。そいつも魔物に利用されているのか」
「リシャール様、あなたも禁呪使うでしょう? それは、古代魔法だ。だいたい、今時、神以外でその魔力はありえないのですよ。それ以外ない」
(神ですら、もう魔力は落ちているよ)
修道女であるマリーは知っている。
神であり古代魔法が使えるユートゥルナ様ですら、歴代の神に比べて魔力が落ちてきていることを。
それが時代の流れ。
ニコルに関しては、ここまで古代魔法を使えるのだから、才能があったのかもしれないが、マリーたちの元まで来ようとしている不完全な死者たちを見る限り、使いこなせてはいないのだろう。途中、力尽きる個体すらいる。
「貴様らは私に全部の罪を着せたいらしいな。丁寧に氷魔法に似せた注射器まで用意して。余程私が嫌いらしいな」
「あなたほど罪に染まった方はいない。この銃が物語っている。まるで、化け物退治している気分ですよ」
出血量が増え、リシャールが片膝をつく。
「この聖器、魔器が無効になるに加え炎の魔法を足せば悪しき者、つまり血に塗られし者を浄化の炎で葬ることができるそうなのです。悪人にはつらい武器ですね」
「……」
「私にはあの日手放してしまった彼女のような後悔をしたくない。たとえ、氷華殿下相手でも聖器と古代魔術があれば、敵はいません」
ニコルは銃の引き金を引こうと力を込めた。
リシャールを今度こそ殺すつもりだ。
びりびりとした肌をさす殺意が感じられる。
「殿下、あなたもまさか、司書の僕に葬られるなんてね。あなたも好きだったんですよ。孤独で。でも、残念です。さようなら、麗しい殿下。可哀想なお方。最後は血に濡れた罪を報いながら、死になさい」
「殿下ーー!」
その瞬間、サラが走って、ニコルの手を掴んだ。
か弱い姫のサラがニコルに敵うはずもなく、「離しなさい」と簡単に振り払われる。しかし、その衝撃でマリーの術が解けた。
体が自由になったマリーはすかさず、指輪に収納していた魔本を取り出し、巨大な檻を出して、ニコルの動きを封じたのだ。
いざという時に備えていた檻の絵が役に立った。
ニコルは黙ったまま、マリーを虚な目で見ていたが、マリーはそれを無視した。
「今のうちに逃げましょう!」
マリーはサラと血だらけのリシャールの手を引いた。
マリーが「違う」と言う前に、リシャールがきっぱりと言った。
「サラ姫は孤独じゃない、愛されている。お前が知らないだけだ」
「殿下……」
リシャールは珍しく少し躊躇ったが、意を決して言葉を紡いだ。
「あの……計算高い世間体をうじうじ気にする弟がむちゃして城に侵入し夜這いして結婚したんだ。あれこれそうだな、10年以上昔から好きだったんだ。手も出せないくらい……まぁ思い詰めて変な薬を手を出すくらいにな。正直、恥ずかしいくらいに惚れていたんだ」
リシャールは気まずそうに、テオフィルの秘密を暴露した。
「あいつは、口達者で社交性があるから、女慣れしていると思われがちだが、実はサラ姫以外女性経験がない」
「あの、テオフィル様が……つい最近までど、童……馬鹿な。嘘はやめなさい。あれだけ容姿端麗で優秀な王族なら相手ならいくらでもいるでしょう!」
「断言する。あいつの初めては、サラ姫に夜這いした夜だ。婚約中も浮気などない。テオは、王族や貴族が受ける女官の夜伽の授業を断ったくらいだからな。サラを裏切りたくないって。身内の中では有名な話だ」
確かにテオフィルのイメージは女慣れをしていて、すこし遊んでいてもおかしくないくらいフレンドリーだ。
まさかそんなに一途だったとは。
はじめてだから、媚薬を持って夜這いをしたらしい。
しかし、リシャールの弁解も虚しく、サラは暗い目をしてリシャールに言った。
「リシャール様、良いんです。今更構って頂かなくても。あの時、テオが初めてでも百戦錬磨でも、もういいんです。どうせ今、わたくしたちは寝室も別ですし、もう夫婦としては……」
「サラ姫よ。あの時、テオが婚約破棄についての話し合いのつもりで君を訪ねたのに、結果的に大好きな君とのはじめてが無理矢理夜這いになったあいつの心情を察してやれ」
「……!」
そう言えば、サラはテオフィルに婚約破棄をしようとしたところ、夜這されて既成事実を残し、結婚に至っている。
テオフィルの行動は、外交問題にもなりそうだが、そこまでサラと結婚したかったのだ。
「私が一方的に別れを告げたから……」
サラはなんだか思いあたるふしがあるようである。
テオフィルがあの夜の事を悔いて、反省しているため、結婚してからは、けじめとして寝室は別というのは頷ける。
「だいたいテオに他の相手がいるわけないだろう。馬鹿を言うな。あいつには、このちょっと困ったくせのある姫しかいない。今も昔もな。貴様こそ、一国の姫に手を出すなんて正気ではない。逃げた魔物に利用されている愚か者め」
「……リシャール様」
サラの瞳に光が戻る。
暗示が解けたらしい。
リシャールの思わぬ言葉を聞いてサラが少し涙ぐんだ。
リシャールは普段は口数が少なく、サラに関しては無愛想だったから、そんな風に思っていたとは驚きだった。
リシャールが言わなかったらきっとこの先もずっとテオフィルを誤解していただろう。
「……愚か? 私が?」
ニコルは痺れを切らし、リシャールをわき腹を聖器だという銃で打った。床に血が溢れる。
ニコルの話によると、魔器を無効にする、普通の人間には効果がないと言われる聖器で撃たれて、血を流すリシャールはやはり罪が重いことを物語っている。
「魔物を逃した? 利用されている? 違う。私は、神の力を借りているのです。神を封印から解き放ち、力を貸してもらっている。だいたい、魔石も神の恩恵、精霊の分身。逃したなど言い方は冒涜です。今や、魔力の強い者はまれなのは信じる力が足りないからで、神は弱って来ているから、強力な魔石と、私の意志で魔法は強くなる。私は選ばれたんです!」
マリーは王家の依頼を受けた時、ユートゥルナが言っていた事を思い出した。
人間の方が厄介だ、と。
気まぐれな精霊にはない執念を感じる。
執念が強いほど、信じる力が強くなり、魔力が増す。
ゾンビの群れもその執念が物語っている。
「……人が魔法を使う? お前らは魔物に使われているんだ」
リシャールは血を流しながら、こんな時でも澄ました顔をしていた。
とめどなく、傷口から血が流れているのに、相変わらず、嫌になるくらい強がりだ。
早く手当しなければ、出血量的にリシャールの命が危ない。
「あのお方は、我々と同じ苦しみを、時代を憎んでいる」
「そいつか盗んだのだろう。そいつも魔物に利用されているのか」
「リシャール様、あなたも禁呪使うでしょう? それは、古代魔法だ。だいたい、今時、神以外でその魔力はありえないのですよ。それ以外ない」
(神ですら、もう魔力は落ちているよ)
修道女であるマリーは知っている。
神であり古代魔法が使えるユートゥルナ様ですら、歴代の神に比べて魔力が落ちてきていることを。
それが時代の流れ。
ニコルに関しては、ここまで古代魔法を使えるのだから、才能があったのかもしれないが、マリーたちの元まで来ようとしている不完全な死者たちを見る限り、使いこなせてはいないのだろう。途中、力尽きる個体すらいる。
「貴様らは私に全部の罪を着せたいらしいな。丁寧に氷魔法に似せた注射器まで用意して。余程私が嫌いらしいな」
「あなたほど罪に染まった方はいない。この銃が物語っている。まるで、化け物退治している気分ですよ」
出血量が増え、リシャールが片膝をつく。
「この聖器、魔器が無効になるに加え炎の魔法を足せば悪しき者、つまり血に塗られし者を浄化の炎で葬ることができるそうなのです。悪人にはつらい武器ですね」
「……」
「私にはあの日手放してしまった彼女のような後悔をしたくない。たとえ、氷華殿下相手でも聖器と古代魔術があれば、敵はいません」
ニコルは銃の引き金を引こうと力を込めた。
リシャールを今度こそ殺すつもりだ。
びりびりとした肌をさす殺意が感じられる。
「殿下、あなたもまさか、司書の僕に葬られるなんてね。あなたも好きだったんですよ。孤独で。でも、残念です。さようなら、麗しい殿下。可哀想なお方。最後は血に濡れた罪を報いながら、死になさい」
「殿下ーー!」
その瞬間、サラが走って、ニコルの手を掴んだ。
か弱い姫のサラがニコルに敵うはずもなく、「離しなさい」と簡単に振り払われる。しかし、その衝撃でマリーの術が解けた。
体が自由になったマリーはすかさず、指輪に収納していた魔本を取り出し、巨大な檻を出して、ニコルの動きを封じたのだ。
いざという時に備えていた檻の絵が役に立った。
ニコルは黙ったまま、マリーを虚な目で見ていたが、マリーはそれを無視した。
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