私は修道女なので結婚できません。私の事は忘れて下さい、お願いします。〜冷酷非情王子は修道女を好きらしいので、どこまでも追いかけて来ます〜

舞花

文字の大きさ
上 下
10 / 169
恋人ごっこまでの経緯

蝶降る花弁

しおりを挟む
「どうした、早くかかってこい」

 男は腕を組んだまま、自信満々な不遜な態度だ。
 顔は聖書の肖像画のように端正なのに、全くの慈悲が無い無表情で意地悪ささえあった。
 顔立ちは端正なのに、ちょっとした物憂げな雰囲気と、愛想のなさ、釣り目で性格が悪そうに見える。
 しかも、初対面から不愛想で、マリーを刺客扱いだ。

(……こんな失礼な男性、初めてみたわ)

 彼の態度もそうだが、もうひとつ気がかりな点がある。
 ゆらゆら長いピアスが揺れ、西陽を浴びて妖しげに輝いている。

 マリーは不思議に思った。
 仮に彼が軍人ではなく貴族だとしても、腰に剣がないのはなぜだろうか? 
 今日は王家の婚姻だからか?

 剣もなく、丸腰で戦うとはよほど力自慢か、簡単な術しか使えないからとマリーを舐めているからだろうか。
 彼が異能者だったとしても武器となる魔器がない。
 彼は明らかな手ぶらだった。

 仮に派手なピアスが魔器であっても、どうやって使用するのか。

(ピアスを爆弾みたいに投げるとか? 外したら、一発で終わりじゃないの)

 目の前の彼はそんな間抜けな感じには見えなかった。

 彼を例えるなら、狙ったものは逃がさないタイプだ。
 逆らったらタダで済まさない威圧感がそれを物語っている。
 マリーの体をびりびりと伝う緊張感は、彼が戦いにおいて慣れており、かつ、本能のどこかでこの男は危険だと警鐘を鳴らしているのだ。
 剣さえない相手に対して。

 ただ、これは、戦いというか、これはゲームみたいなものだ。
 少し身体を張る遊び。
 もしかして貴族である彼はマリーのような術使いが珍しかったから腕試しでもしたかったのかもしれない。

「さっさとしろ」

 マリーが思案している間に男は痺れを切らしていた。
 やはり、かなりせっかちで切れやすいタイプかもしれない。
 マリーは彼が言う刺客ではないが、そんなことを説明するよりもさっさと勝負に決着をつけたほうがいいと思った。
 自信ありげで、傲慢、かつ思い通りにいかないと我慢できないタイプだから。

(何を言ってもダメそう。……仕方ないよね)

 マリーは彼の遊びに少し付き合うことにした。
 マリー本を宙に投げ出した。

(あんまり任務以外で、しかも一般人に術は使いたくなかったけど……仕方ない。気が済んだら、諦めるよね)

 そもそも軍人と修道士ではフィールドが違う。
 軍人が対人間であるのに対し、修道士は対魔物的な、対象物が違うのだ。

 本が空中を回転しながら落ちてくる前に素早く指で呪文を描く。
 すると本が光を帯びて、本に描いてあった数百の蝶が飛び出した。
 赤、黄色、白ーーさまざまな輝く蝶は、ひらひらと天井まで舞うと、ひかりを帯びて花びらのように散る。
 あたりは一面光に包まれた。
 その中の、一羽だけを光の中に隠しておいた蝶を光のスピードで向かわせる。

(当たればいいんでしょう?)

 あのスピードについていける人はなかなか見たことない。
 光のような速さで一瞬で終わる筈だ。

(……やったかな)

 真っ白だった視界が徐々に鮮明になる。
 術を終え、本に全ての蝶が戻った頃には決着はついている。貴族に危害を加えるわけいかない。
 これで気が済んでくれればいいけど。
 光が晴れて本が落ちた。
 マリーは目の前の光景に唖然とする。

 無数の蝶が凍って精巧にできた硝子細工のような姿で地面に転がっている。
 花弁になった子たちも、全部。
 最後の一羽に関しては丁寧に凍らせず、氷でできた籠に入っており、彼は足元の檻を見下ろしていた。
 勝負はついた。かなりあっさり。
 マリーのそばに落ちている本には蝶は一羽も描かれておらず、ただの白紙の束になっていた。

「どうやら一匹も戻れなかったな?」

 彼の冷ややかな視線がマリーに降り注ぐ。

「約束だ。絵の事は諦めるんだな」

と低い声で言った。

 側に落ちている蝶を掬いあげると、冷たいが体温で溶けそうなものではなく、まるでクリスタル細工だった。
 この鮮やかな美しい術は一部の王族しか使えない。
 クリスタル加工技術は王家のものだが、戦闘に実用化したのは最近世間を賑わせている人物のみだ。 

 氷華殿下。――ただひとり。

 現時点で彼が氷華殿下であるのは、99%くらいの確率だ。
 しかも、マリーは(仮)氷華殿下刺客だと思われているらしい。
 勝負はマリーの負け。
 愚かな刺客は始末される、確実に不敬罪だ。
 彼がもし、氷華殿下なら100%謀叛で処刑だ。
 よくてクリスタル漬けにされて幽閉だ。噂によると。
 蝶は一羽もいない。力の差は歴然だ。

(触れなくても私なんか一瞬で凍らせられる)

 一歩ずつマリーに近づく足音が静寂している教会に響く。マリーには死が近づく音に聞こえた。

(ダメだ……これが運良く有能な軍人でも処罰対象だよね。思いっきり、術使っちゃったし……危害を加えるつもりはなかったけど)

 マリーがもうダメだと目を瞑るが、何も起こらない。
 男は籠の近くまで寄ると、ぱちんと指を鳴らした。
 籠ががちゃんと壊れ、蝶が逃げ出した。

(あれ、どうして……逃したの?)

 すると今朝探していた青鳳蝶の『青ちゃん』も出窓の方からやってきた。
 よく夜にこっそり出て行っては朝帰りをする不良蝶、青ちゃん。
 マリーの処女作である鳳蝶はよくふらふら本から勝手に出て行く娘だ。
 青ちゃんはひらひら彼の周りを飛んでいる。

 (やめて青ちゃん。それ以上刺激しないで)

 無常にも蝶は彼の肩に止まった。
 彼は青ちゃんに気を止めることもなく、マリーに淡々と言う。

「触れられなかった。貴様の負けだ」
「あの……」
「勝負は終わった。もう声をかけるな」

 彼は近くにあった礼拝者ようの長椅子に座って、本を開き読み始めた。
 出窓が開いていており、雨が入ってくる。
 雨が降っているのに開いていたらしい。
 マリーは罰せられることもなく、何もなかったように彼はーーまるでマリーの存在など無いものかのように無視して、真剣に読書に耽っている。
 不自然に開いた出窓と妙に懐いている青ちゃん。

 (もしかして、青ちゃんを逃してくれようと開けてくれたの?)

 しかし、もし、彼が氷華殿下なら無情かつ人離れしか化け物のはず。
 屍の山を築く、戦場に酔いしれる戦闘狂なのだから。
 彼は服装から相当な身分だと思われるが、お咎めもなく、この場から立ち去れとも言わない。
 何もなかったような、沈黙が続く。
 もしかして怖い人ではないのだろうか。ちょっと交戦的な、威張りたいタイプの実は親切な軍人さん? 

「あの……」

 マリーは意を決して、声をかけてみる。
 彼の視線は本の方を向いたままだった。

「なんだ? 声をかけるなと言っただろう」

 彼は気だるそうに答えた。
 マリーは落ち着いて聞いてみると、彼の声は低いのに、やけに響く、癖のない、いい声だった。

 何より本を読んでいるだけなのに、絵になる美貌。

(ああ、やっぱり描きたい)

 マリーは懲りてなかった。
 ここは確認のためにやはり確かめるべきだ。
 違ったら、それに越したことない。
 彼は悪い人じゃなさそうだし、王都で『友達1号さん』になってくれたら嬉しいとマリーは楽観的に考えた。
 貴族なら社交界で会うかもしれないし。
 そんでもって、たまに絵を描かせてくれたら最高だ。
 
「お名前を、お、お聞きしても良いでしょうか?」

 氷華殿下でありませんように! と願いを込めて、念には念をこめて、マリーは訊いてみた。

「リシャール」
「え?」
「リシャール・スウルス・メイルアンテリュール」

 ああやっぱり。
 今思い出したぞ、名前。そうそう、リシャール。
 国によっては、リチャードとかリチャルドとかいう、結構平凡な名前。
 マリーとおんなじくらい平凡な名前。

(やっちゃったーーーー!!)

 ユートゥルナ様ごめんなさい。
 やらかしました。

 私、修道士マリーは王族かつ恐れ多い氷華殿下の喧嘩買いました。
 しかも、つい、軽く声をかけてしまいました。
 あまりに綺麗だったんだもの。
 存在がこの世のものとは思えないくらい尊かったんです。
 しかも、氷華殿下に綺麗だとかしつこく言い寄ってしまいました。

 マリーは心の中でユートゥルナに懺悔した。

(今更、教会から派遣されているといえばいい?)

 確かリシャールは修道院嫌いってきいたことあるし、女も嫌いだったはずだ。

 テオフィル殿下の依頼だったらいいなぁ、とマリーは思う。
 そうじゃないとマリーは救われない。ミッション前にアウトだ。
 マリーは今から極秘任務に着くのに、こんなに簡単に手の内をばらすように、術を使うのだから、昇進もナシ決定だ。

 バクバクする心臓、手に握る汗。
 マリーはいろいろ問題がありすぎて、どこからリシャールに謝ればいいか分からなかった。
 とりあえず、現実逃避するかのように、リシャールから出来るだけ離れて遠くに座る。
 どうしよう、どう切り出そう。

 (雨が止むまで。そう。止むまで。なにか解決策を!!)

 地獄一歩手前の鬼気迫る表情のマリーは必死に考えていた。
 しかもなんだか、寒い。
 そういえば、画材を守るために雨に打た、上衣がかなり濡れている。
 下に着ているワンピースにも湿っているかもしれない。

「くしゅ……」

 まさかのまさか、こんな重要な事態にくしゃみが出そうになって、思わず鼻を押さえる。
 我慢だ我慢。

(あそこにこわ~い王子サマがいるんだよ、マリー)

 ただでさえ、いろいろやらかしているんだ。
 リシャールは犯罪者級のサイコパスという噂だ。
 趣味は墓荒らし、死体観察とか雑誌に書いてあったヤバいお方。

「く、く、くしゅっ…!」

 無情にもくしゃみは出た。
 リシャールは、今度は本から顔を上げて、全く表情のない顔でマリーを見つめていた。というか睨んでいた。

「ローゼ」
 
 あの、やけにいい声が響く。

(まさかの、まさか。名前を呼ばれた……! 覚えたんだ、私の名前)

 それはかなり意外だった。
 マリーは忘れて欲しかったのに。
 私の事なんてどうかきれいさっぱり忘れて欲しかった。お願いだから。

 リシャール本を閉じ、ゆっくり歩み寄り、鼻を押さえるマリーを不機嫌そうに見下ろした。

「無礼の数々に加え、風邪までうつすのか。……貴様やはり喧嘩売っているだろう。私相手にいい度胸だな」
「いやそんなつもりじゃああわわわ」

 リシャールの綺麗な顔が明らかに歪んでいた。

「ま、まさかリシャール殿下がいらっしゃると存じ上げずーー」
「私が暇人だと言いたいのか、小娘?」

 またリシャールは不機嫌になってしまった。マリーは声なんてかけなければよかったと後悔するが、もう遅い。

「私は、普段はもっと忙しいのだがな、今日は結婚式のせいで少し時間があっただけだ」

 マリーの目の前まで詰め寄ったリシャールの表情に険しさが増す。

「こんな日は稀なんだ」

 リシャールは暇でふらふらしているように思われることが余程心外らしい。それもそうだろう。 
 今日みたいな日に王族なのに、何故一人で教会にいるのだろうと。

 しかしここは火に油を注いではいけない。なんとしてもマリーは自分の未来のためにリシャールに話を合わせねばならない。

「滅相もございません! 殿下は……大変お忙しい身とお聞きしてますっ。よく殿下の活躍を新聞で拝見してます! 大活躍ですね!」
「あの、新聞を読んでるなら私がどんな人物かよくわかるだろう?!」

 そうです、知ってます、散々書かれていることを。
 マリーがやや涙目で鼻水も少し垂らして、恐縮していると、リシャールはため息をついた。

「今日はろくなことが無い。久しぶりに帰ってきて立て続けにこのザマか。貴様といい、ああ、もう嫌になる……!」

 リシャールはブツブツと独り言を言いながら、いらついたように上衣のボタンに手をかけた。
 幾重にも刺繍された上質な上衣の、複雑なボタンを慣れた手付きで外していく。
 リシャールはバサっと上衣を脱いで、乱雑に頭からマリーに被せた。

「あ、あの、これは……」
「捨てたんだ」

 それは殺気のこもるような獰猛な瞳だった。

「どうせ一度しか着ない、税金の無駄遣いした実用性にかける服だ。すぐに脱ぐつもりだった。貴様が居ようが居まいがここに捨てていた」

 捨て台詞のように言い残し、氷華殿下ーーリシャールは、まだ寒いというのに、上衣もなく下に着ていたシャツ一枚になって外の扉に向かって颯爽と歩き出した。

「あ、ありがとう、ございます……」

 彼は教会から出て行ってしまった。
 出窓から聞こえる雨音は先程よりうるさく、街全ての音をかき消すほどだった。
 小雨が土砂降りへと変わってしまった。

(なんで……貸してくれたの? あんなに怒っていたのに)

 上衣は暖かった。ほんのり上品な薔薇の香りもする。
 リシャールの周りは冷たい空気が纏い、人間の体温を感じないほど冷たいと聞いていたのに、さっきの彼の表情も、噛み合わない態度と口調も、妙に人間らしい。

 今日という日が最悪だと思ったけど、そんなこともない様だ。
 マリーはあの噂の殿下に会って、思いのほか優しくて、ほんのり胸が暖かくなった。
 顔も綺麗だけど、なんか、いい人だったな、なんて能天気にマリーは考えていた。

 それからしばらくマリーはリシャールが出て行った扉を眺めていた。

 そして気づいた。

(あれ、青ちゃんいない……? もしかして)

 リシャールについていったのだろうか。いやまさか。そんな。悲劇あるわけない。と、思いたい。

 これが修道士マリーとローズライン王国第一王子リシャール・スウルス・メイルアンテリュール出会いだった。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...