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6話 地鏡の女神さま
2.地鏡の国にて
しおりを挟む「追いついてない?」
「馬鹿、俺たちからはそう見えるだろ」
あずきはゆるやかなのぼり坂のうえで、足もとをじっと見ていた。
まるでそこになにかあるみたいに……。
ふいにあずきがジャンプした。
厚底の底に、たしかになにかキラキラしたものが舞う。
「京さぁん! 水たまりありましたぁっ」
「……ウソでしょ」
あずきがジャンプしながら手をふる。
僕と熱士は顔を見あわせた。
すると急に静かになってしまった。坂の上をみると、そこにあずきの姿はない。
こんどは僕たちが首をかしげた。
それからとにかく地鏡のもとへとむかった。
足もとには鏡面となった水たまりが僕と熱士の姿を映していた。
水たまりは実在した。しかしわずか数センチだろう底が見えない。
あずきの姿はない。
「中に落ちたのか?」
「中って……なにこれ穴かなんか?」
「俺が知るかよ」
僕はそっとそこにスニーカーの片足をふみいれてみた。そこまではおぼえてる。
「…………あれっ」
はっと気がつくとどこかの茂みのなかだった。
天気はいいけどさっきほど暑くない。
あたりを見回すと紫色のちいさな薔薇が点々と花をつけている。どこかのイバラの茂みの真ん中にとつぜん僕があらわれた。
意味不明だが客観的にみるとそういう状況だ。
どこからか水音がする……おそるおそるイバラをかきわけ、音の出どころをさがした。
茂みがとぎれるとすぐに湖が目にはいった。
湖畔に女の人がすわって、水面をゆびさきでもてあそんでいる。
「すみません。女の子見ませんでしたか?」
「どんな子かしら?」
ふりむいた女の人はあきらかに外人さんだった。
聖○士○矢の○織さんみたいなかんじだ。
ヒラヒラした贅沢な生地の白いドレスと長い髪がそよ風にひらめいてる。
「どんな女の子を探してるの?」
「えっと、赤っぽい茶髪のロングのクセ毛でまゆげがたれてるんですけど。背はこのくらいで……」
「ああそれなら」
この子? と女の人がいった。
彼女のうしろからあずきがあらわれた。
なんだ、思ったよりすぐ近くにいた。
「あずき! どこいってたんだよも~~心配したのに」
「すみませんっ」
その子で間違いないのと女の人にたずねられ、うなずいてお礼をいった。
帰り道をきくと小道をゆびさされそちらへむかう。
見失わないよう左手であずきの手をとる。
紫のイバラのアーチをくぐった。
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