豆柴彼女。

ちゃあき

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5話 あいつ

5.未知

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□□□



「おかえり」




 ドアを開けると、燐は目を覚ましていた。

 あずきも静かにクッションに座ってる。
 しかしなぜか緑のインコがカゴの中で暴れてる。

 ピーをなだめに行く僕と入れかわりに燐は玄関へむかった。

「ごめん! 女の子から連絡きちゃってさぁ! 今日帰るわ。可愛い子だからさぁ」

 いそいそ靴をはく燐をあつしはにらんだ。
 今日少し近付いたように見えた2人の距離は、また那由多まで離れていく。

「お前わがまますぎだろ」
「あはは! よく言われる」

 じゃーねと笑ってバタンとドアが閉じる。
 旧友は嵐のように現れて嵐のように去って行った。


 ……——多分何かあったのだ。

 あずきが黙ってるのも、インコが暴れたのも何か理由がある。家を出る前と明らかに空気が違う。

 あつしがいる手前今は無理だけど、明日あずきに聞かないといけない。

「付き合わせといてムカつくわ。お前もうあいつに構うのやめろよ!」

 あつしが不機嫌に言った。
 僕も苦笑いするしかなかった。




 その夜は無駄話をしながら眠った。
 あつしの長い脚がソファの肘掛けからはみ出てる。

 ピーをなだめた後もあずきは大人しい。

 ベッドに向かったらついてきたから、今日は布団に入れてあげた。


 ……——燐はあずきに何かしたんだろうか。

 当然その心配をしてる。
 だけど心のどこかでその逆についても考えた。

 あずきが燐に何かを……一見こんなに可愛い小犬が何かしようもなく思える。

 でも付き合いが長いのは燐の方で、何者なのかはっきりしてるのも彼の方だ。

 あずきにはまだ未知の部分がたくさんある。

 僕の知らない一面が彼の存在と相反しなかったという保証はないのだ。


 ……ふと、燐とあずきのどちらも信用してない気がして自己嫌悪を覚えた。

 あずきのシワのよった眉間を指でなでてみる。

 身じろいで鼻先を掌に擦り寄せてくる。
 その顔はあどけなくて可愛い。

 あずきの謎を解き明かしたい気もするし、そのままにしておきたい気もする。

 なぜなら怖いからだ。

 そこからはもしかして僕の期待しない何かが飛び出してくるかも知れないからだ。


fin.
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