豆柴彼女。

ちゃあき

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3話 服を買いに行く

3.エナガのアトリエ

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「こんにちはーーっ、恵奈えなさんいます?」
はるくん? 待ってたよ」

 あつしが声を掛けたら、カウンターから小柄な女の人が出てきた。ちなみに春というのはあつしの名前だ。彼は熱士あつし はるという。

「はじめまして! オーナー兼デザイナーの巻町まきまち 恵奈えなです」

 今日はその子の服を探してるんでしょ? とあずきを見て恵奈さんはハキハキと言った。

 短い前髪と頬に沿うようにカットされた金髪のショートボブがふわりと揺れる。小鳥のような可愛い女の人だ。

 すごく若く見えるのに自分のお店を持ってるなんて凄いと思った。

 ……——そう言うと、笑って多分私あなたたちのお母さんくらいの年なんだけどと言われて驚いた。

「恵奈さん魔女だからな」
「えっ! 魔女なんですかっ! すごいです」
「そうよぉ、すごいでしょ? こっちおいで」

 お名前なんていうの? と尋ねられ、あずきはまた元気よく挨拶した。

 恵奈さんはあずきを連れて沢山並んだフリルやレースのついた服の間を歩いて行く。タブレットで見せた時はなんとも言えない顔だったあずきも、実物を前にすると何だか楽しげだ。あつしに頼んでよかった。素直にそう思った。

「恵奈さんセンスいいし、すげぇ人だから女の子ならあの人に頼んだ方がいいと思ったんだよな」
「そうなの?」
「ケイトって分かるよな? 歌手の。プロデュースしてるの恵奈さんなんだよ。衣装デザインとかライブ演出あの人がやってんの」

 マジかと思った。ケイトは多分今一番知名度が高い女性アーティストだ。その楽曲や本人のキャラクター・ルックスは勿論、衣装や演出も含めて評価が高い。

 そんな人のプロデューサーに服を選んでもらえるなんて、あずきは世界一幸せな豆柴だろう。

 あつしはSNSのフォロワーが多い。その繋がりで恵奈さんと知り合ったらしい。ケイトの衣装デザインとは別に彼女個人のブランドも展開していて、そのメンズラインの服をたまにもらってSNSに着画を上げてるそうだ。

「ちょっと試着してみよっか?」
「はいっ」

 何着かヒラヒラした服を持って二人は試着室に消えていった。

 その間に店内を見渡す。
 ヒラヒラしたフリルやリボンがふんだんに使われたブラウスやスカート、キラキラしたピアスやネックレスに厚底の靴が所狭しと並べられてる。

 ケイトの衣装もあつしの服もこの店の雰囲気とはイメージが違う。
 そう言うと、この店はそういった売り路線の服ではなく、知る人ぞ知る系の恵奈さんの趣味全開ブランドだそうだ。口コミやSNSでジワジワとその評判を広げてるらしい。
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