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20.ノートの中の人
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「……風の音がする」
ふいにフィオナが呟いた。
ザラは耳を澄まして、それが風音でない事にすぐ気が付いた。
「フィオナ。召使いたちがこの時間に歩き回る事はあるの?」
「浴場を片付けたあと他の事は明日にしてもう休んでもらったからないと思うわ」
風音は恐らく足音だ。大股でしっかりした男の足音……それが石造りの廊下を踏んでこの部屋へ近付いている。
墓地へ行った二人が戻ったのか。
しかしそれは一つでヒンスとシノムどちらのものとも似ていない気がする。
真夜中の廊下を正体不明の足音が迫ってくる。
フィオナとザラは固唾を飲んだ。
間も無く予想どおり金造のノブが引き下ろされ寝室の扉が開いた。
そこにいたのはシノムだった。
しかし暗い廊下を背にした彼は部屋着姿で、二人の姿を見つけると持っていた猟銃を構えこちらへ向けた。
これはフィオナの夫のシノムではない。
二人にもそれがすぐに分かった。
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