fの幻話

ちゃあき

文字の大きさ
上 下
12 / 73
4. ヒンス中尉

3

しおりを挟む
□□


「すると西方国境付近はしばらくは安泰ですね」

「それがまだ油断ならない…….私も休暇が開ければ、すぐに警備に就く予定ですよ」

「そうですか。でも、中尉のような方がいてくれれば心強い」


 晩餐を共にしながら、男達が話題にしていたのはヒンスの今回の任務についてだった。
 シューベルグ伯爵はやはり誠実な人のようで、ヒンスはもうフィオナへの思いを断ち切る事へ注力しはじめていた。


「あのおかしな幽霊のお姫さまも中尉に倒してもらいたいね」

「何です?」

「そうそう、ヒンス聞いて頂戴」


 夫婦は自分達の城で起こった不思議な現象についてヒンスに話してやった。ヒンスもおかしな顔をしながら、興味深げに話に耳を傾ける。


「バンフィールド子爵家と言うのを中尉も知らないかい?バンフィールド子爵家のアンネース姫というらしいのだが」

「あくまで夢の話よ」

「私も聞いた事がないが……でもいやに具体的で不気味な話だね」
 

 何だか引っかかりの残る話だ。
 ヒンスは何か分かれば手紙を書こうと言って、伯爵の私書箱を教えてもらった。


「しかしね伯爵、この城の外見はお化けが出たって仕方ないくらいだと私は思うよ」

「ちょっとヒンス!失礼だわ」

「……あははっ!確かにそうかもしれない」


 出された酒に気分の乗ったヒンスの冗談に、あの大人しいシノムも思いのほか上機嫌に笑う。フィオナはシノムの珍しい様子に少し驚く。


「金があるなら、なぜ外も中のように綺麗に飾らないんだい?」

「そうだな……僕は強いて見た目が綺麗だとか、そう言う事にあまり頓着したくないのだ。大切なのは中身だと……この城でいうなら暮らしやすさと、フィオナの存在だよ」


 大事なものはねと少し頬の赤いシノムが言うので、フィオナは赤面し、ヒンスはだいぶあてられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜

みおな
ファンタジー
かつて、稀代の魔術師と呼ばれた魔女がいた。 魔王をも単独で滅ぼせるほどの力を持った彼女は、周囲に畏怖され、罠にかけて殺されてしまう。 目覚めたら、三歳の幼子に生まれ変わっていた? 国のため、民のために魔法を使っていた彼女は、今度の生は自分のために生きることを決意する。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理! ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※ ファンタジー小説大賞結果発表!!! \9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/ (嬉しかったので自慢します) 書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン) 変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします! (誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願 ※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。      * * * やってきました、異世界。 学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。 いえ、今でも懐かしく読んでます。 好きですよ?異世界転移&転生モノ。 だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね? 『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。 実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。 でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。 モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ? 帰る方法を探して四苦八苦? はてさて帰る事ができるかな… アラフォー女のドタバタ劇…?かな…? *********************** 基本、ノリと勢いで書いてます。 どこかで見たような展開かも知れません。 暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

騎士と魔女とゾンビと異世界@異世界現代群像のパラグラフ

木木 上入
ファンタジー
 フレアグリット王国の国立騎士団「フレアグリット騎士団」。そこに所属していくサフィーとブリーツ、そしてアークスは、日々、フレアグリット王国の治安や、人々の安心のために任務をこなしていた。  そんな中、一つの町の人々が全員、リビングデッドに変わってしまうという大事件が起きる。騎士団は総力を以て事件の解決に動き出すが、裏ではもう一つの大きな出来事が起きていた。  サフィー、ブリーツ、アークスは、その大きな二つの出来事のうねりに巻き込まれていく……。

処理中です...