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第2章勇者と聖剣編
36約束
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「わたくしは、風の守護天使エレスタエル。主の命により、貴方を足止めさせていただきますわ」
謎の美女は、クラリシス王国の聖騎士ユーライアの風の守護天使エレスタエルだった。天使として権現化したエレスタエルは、2メートルを超える長身となり上空へと飛翔した。その場で浮遊すると、武器である神弓を構えロビに向けた。
「なるけどな・・・これはピンチだ」
「ラビトの民よ、しばしの間大人しくしていれば傷はつけないと約束しましょう」
「・・・お姉さんには悪いけど、他に約束もあるんだ」
ロビはラビト族特有の強靭な脚力を繰り出して、走り始めた。
その動きにエレスタエルは、咄嗟に矢を繰り出す。その矢をギリギリで交わすロビだが、矢先が何箇所かに身体を掠めた。ズキズキ痛む箇所に構わず、ロビは森の茂みに紛れ込んでひたすら走った。
「セナさま、待ってろ」
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
セナが魔王城から旅立つ数日前、魔王アディと距離を置いていた時の事である。ロビはアディから、ある約束をしていた。
自室の寝室で横になり、疲れたように目を伏せながらアディはロビに話しかける。
「ロビ、もし俺や他の者に何かあった時はお前にセナを任せたい」
「いいんですかぁ?魔王さまは、セナさまのこと好きなんでしょぉ?」
「お前も、セナが好きだろう?」
「どうですかねぇ」
「お前のそんな計算高いところは買っている」
「ありがとうございますぅ」
ロビは営業スマイルで、本心をいつものように隠した。だが魔王にはお見通しである。
「クラリシス王国が動いたとなれば近いうち戦乱の世が訪れるだろう。その時、セナが居てはこちらは不利なのだ」
「セナさまが気になって魔王さま、城から出られなそうですからねぇ」
「・・・まぁ、それもあるが」
「いいですよぉ。僕がセナさまをしっかりお守りしますねぇ」
「頼んだぞ、ロビ」
ロビはいつものように笑顔を魔王に向けた。
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
森の枝や葉がさらにロビに擦り傷を作らせながら、ロビは魔王との約束を守るために走った。
魔王は、約束などしない。その魔王が初めて約束を交したのだ。何よりロビ自身も、セナを守ろうとする意思があった。
「兎狩りはそろそろお終いにいたしましょう」
ふと頭上から聞こえた美しい声に気付いた時には、遅かった。エレスタエルの弓矢が確実にロビを捉えていた。美しい指先が弦を弾こうとした瞬間、正面から咆哮が聞こえるとエレスタエル目掛けて巨大な影が激突するのがロビの目に映った。
陽の光に反射する銀の鱗が眩しく辺りを照らす。巨大な銀の竜が、エレスタエルと対峙していた。
「あれは・・・リドレイさん!」
「グルルルルル」
「神族のなり損ないの分際で、わたくしに楯突く気ですか。愚かな竜族よ」
竜化したリドレイは、その言葉にさらに激怒したかのようにエレスタエルを威嚇するのだった。
謎の美女は、クラリシス王国の聖騎士ユーライアの風の守護天使エレスタエルだった。天使として権現化したエレスタエルは、2メートルを超える長身となり上空へと飛翔した。その場で浮遊すると、武器である神弓を構えロビに向けた。
「なるけどな・・・これはピンチだ」
「ラビトの民よ、しばしの間大人しくしていれば傷はつけないと約束しましょう」
「・・・お姉さんには悪いけど、他に約束もあるんだ」
ロビはラビト族特有の強靭な脚力を繰り出して、走り始めた。
その動きにエレスタエルは、咄嗟に矢を繰り出す。その矢をギリギリで交わすロビだが、矢先が何箇所かに身体を掠めた。ズキズキ痛む箇所に構わず、ロビは森の茂みに紛れ込んでひたすら走った。
「セナさま、待ってろ」
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セナが魔王城から旅立つ数日前、魔王アディと距離を置いていた時の事である。ロビはアディから、ある約束をしていた。
自室の寝室で横になり、疲れたように目を伏せながらアディはロビに話しかける。
「ロビ、もし俺や他の者に何かあった時はお前にセナを任せたい」
「いいんですかぁ?魔王さまは、セナさまのこと好きなんでしょぉ?」
「お前も、セナが好きだろう?」
「どうですかねぇ」
「お前のそんな計算高いところは買っている」
「ありがとうございますぅ」
ロビは営業スマイルで、本心をいつものように隠した。だが魔王にはお見通しである。
「クラリシス王国が動いたとなれば近いうち戦乱の世が訪れるだろう。その時、セナが居てはこちらは不利なのだ」
「セナさまが気になって魔王さま、城から出られなそうですからねぇ」
「・・・まぁ、それもあるが」
「いいですよぉ。僕がセナさまをしっかりお守りしますねぇ」
「頼んだぞ、ロビ」
ロビはいつものように笑顔を魔王に向けた。
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森の枝や葉がさらにロビに擦り傷を作らせながら、ロビは魔王との約束を守るために走った。
魔王は、約束などしない。その魔王が初めて約束を交したのだ。何よりロビ自身も、セナを守ろうとする意思があった。
「兎狩りはそろそろお終いにいたしましょう」
ふと頭上から聞こえた美しい声に気付いた時には、遅かった。エレスタエルの弓矢が確実にロビを捉えていた。美しい指先が弦を弾こうとした瞬間、正面から咆哮が聞こえるとエレスタエル目掛けて巨大な影が激突するのがロビの目に映った。
陽の光に反射する銀の鱗が眩しく辺りを照らす。巨大な銀の竜が、エレスタエルと対峙していた。
「あれは・・・リドレイさん!」
「グルルルルル」
「神族のなり損ないの分際で、わたくしに楯突く気ですか。愚かな竜族よ」
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