Lv1だけど魔王に挑んでいいですか?

れく高速横歩き犬

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第1章魔族と勇者編

8星空とファーストキス

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「俺を倒すのか?」
「うん。とりあえずデコピンでHP1くらい減らしたいかな」
「・・・やってみるがいい」
「マジで!よーし、やるぜ」

 セナは真剣に指をデコピンの形にするとアディの額に向けた。

「魔王覚悟しろ!これが俺の全力奥義デコピーーーーンクラッーーーシュ!!!」

 勇者としてノリノリのセナは、普通は恥ずかしいであろう中二病設定奥義を叫びながら本気で魔王のHPを減らしにかかった。
 だが中指が弾かれるのと同時に、瞬発的に指を握りこまれてしまう。

「おい!掴んだらダメだろ」
「防御するなとは言われていないのでな」
「くっ、さすが魔王・・・卑怯極まりない極悪さ」
「魔王だからな」
「とりあえず手離せよ」
「なぜだ?」
「ッ!」

 アディは握ったセナの中指に口付けた。そのまま先端から付け根まで舌でなぞっていく。

「ぅっ、な、舐めるなよ」
「セナは美味そうだ」
「ジゼと同じこと言うな!あぁっ!?」

 セナの中指が今度は口に含まれてしまう。そのまま軽く爪を噛まれる。セナは頬が熱くなるのを感じた。

「アディ、俺のこと食べてもおいしくな・・・ひぁッ!あ、あぁ・・ぅ、くっ」

 中指を口で吸いながら上下に扱かれる。どう見ても18禁でよく見るあの行為を連想してしまい、セナは動揺する。
 元の世界では同性愛は珍しい事ではなかったが、まさか自分がその対象になってしまうとは思いもよらなかったのだ。

「お、俺・・・女の子ともまだなのに・・ぅう」
「セナの初めてを奪った責任くらいは一生面倒見てやろう」
「そんなプロポーズいらない」
「それは残念だ」

 アディは咥えた指を離したが、まだ手を握りながら指の一本一本を自身の指先でさすっている。

「アディってさ、なんで魔王やってるの?」
「・・・」
「やっぱり暇つぶし?他の勇者とも・・・その、こんな事してんのか?」
「それは嫉妬か?可愛いな、セナ」
「いや、違うけどさ。そもそもアディのこと好きじゃないし」
「お前が俺を好きになれば性交してよいのか?」
「え!?えぇ・・・うーん。まぁお互い好き同士なら、そういう事もしなくもないよな。男同士でも」

 決して同性愛に偏見を持っているわけではないが、自分はやはり女の子の方がどちらかといえば恋愛したい。
 しかも相手は中二病の人外で、魔王だ。例えばアディが女の子だったとしても魔王と勇者。相容れぬ2人はファンタジー異世界のロミオとジュリエットだ。

「俺はアディのロミオにもジュリエットにもなれそうにない」
「誰だそやつらは?」
「俺の世界の悲劇の恋人同士。お互い好きなんだけど、身分差で結ばれずに最後は死んでしまうんだ」
「なるほど、興味深い。セナが死んだら骨を永久保存して側で愛でよう」
「や、やだよ!というか、やっぱり死ぬと復活の呪文とかアイテムで生き返らないのか?」
「そんな都合のよい事があったらこの世はアンデッドだらけになるだろう。まぁ不死種なら何回かは生き返るが」
「そうなんだ、気をつけよう」

 夢の中なのにチートな設定は弾かれているのかと少し残念だが、例え夢の中でも自分が死ぬのは嫌だとセナは思う。

「セナ、それよりお前に見せたいモノがある。後で西の塔の最上階に来い。ロビに案内させよう」
「うん?わかった」

 要件だけ伝えると、アディはそのまま歩き去って行く。セナも気絶したぴよ太を介抱するために、魔王の寝室を探す事にした。
 しばらくするとロビの方から見つけてくれたので、無事に寝室まで戻る事が出来た。


 夜まで適当に部屋でぴよ太と遊んだりしながら過ごす。魔王城を探索したかったが、迷子になって魔族にまた襲われるのは御免だった。
 ロビが迎えにやって来たので、西の塔とやらへ同行していく。頭にはぴよ太も乗っかっていた。

「ロビってさ、アディのことどう思ってる?」
「魔王さまは、優しいですぅ」
「え、そうか?」
「僕ら獣人を城に置いてくれたり、美味しいご飯もくれますぅ。セナさまは、魔王さま好きじゃないですかぁ?」
「まぁ、恋愛対象にはならないかなぁ」
「じゃあ、僕はどうですかぁ」

 ロビの予想外の反応に、返答に困る。真剣に言ってるのか、可愛いから好きと言ってほしいのか謎だ。

「ロビは可愛いよ」
「ありがとうございますぅ」

 とりあえずセナはその場を誤魔化すことにした。魔王だけでも精一杯だ。というかロビは見た目が中学生くらいなので、なんというかいわゆるショタ系はご遠慮願いたかった。まだセナは性犯罪者にはなりたくない。

「あ~着きましたよぉ。ではごゆっくりですぅ」
「あ、うん。ありがとう、ロビ」

 人が一人通れるくらいの扉を開けると、上に続くだけの階段のようだ。そのまま歩いていくと天井のない開けた場所に出た。屋上というか、見張り台のような感じだ。端には、アディが立っていた。

「アディ」
「セナ、よく来た。こちらへ来い」

 セナはアディから少し離れた位置に並ぶが、手を掴まれて引き寄せられ肩を抱かれてしまう。

「ここでゆっくり星を見るのが好きのだ」
「あ、あぁ・・・うん綺麗だよな」

 夜空には色とりどりの星空が輝いていた。元の世界でも星空は見えるが、異世界の方が色が鮮やかで輝きも違う。こんなロマンチックなシチュエーションは出来れば女の子とデートで見たかったなと、セナは少し思う。

「セナ」
「あ、な、なに?」
「なぜ魔王になったのかと聞いたな」
「うん、でも無理に言わなくても・・」
「俺は半分人の子だ」
「・・・え」
「色々混ざってはいるが。魔族の血を引く者は人間の地では迫害の対象でしかない。だが魔族の中でも人の血を引く者は同じでしかない。俺は力のみが絶対の魔族側を選んだ」

 それはとても哀しいことで、アディ以外もそんな不幸な境遇の者はたくさん存在する。だがアディは魔族を選んだ。生き残るため魔王となったのだ。
 セナは魔王のまともな理由と、茶化した自分を恥じた。

「なんか、ごめん・・・デコピンクラッシュ奥義とかしようとして」
「気にするな。勇者は数多くいたが、セナのように面白く可愛い者は初めてだ。だからお前に惹かれるのだろうか」
「や、そんな・・・幻想だよ」
「セナ」

 アディはセナの両肩にそっと手を置いて向き合った。

「お前は俺の勇者でいてくれるだろうか」
「ぇ、えと・・・」

 夜空には満点の星、目の前には魔王だが超絶美形。なにより歯に浮いた台詞すらもロマンチックさが炸裂している。
 この傲慢魔王はロマンチストなのか、ギャップ萌え可愛いすぎるだろうとセナは動揺した。

「セナ」
「んッ!」

 そのまま避ける事も忘れて、口付けられる。


━━━━俺のファーストキスーーー!!!

 セナの初めてのキスすらもこのロマンチストな傲慢魔王に奪われてしまうのだった。
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