10 / 41
序 魔剣転生
9預けたもの
しおりを挟む
「オレの命をフリエスに預ける」
イオは両手に持つ魔剣をフリエスの前に差し出した。フリエスは真顔でイオを見下ろす。
「なんの真似だ?」
「オレは危険だと思う。だからオレに肩入れしないフリエスが判断して欲しい」
「・・・」
『ぉ、王よ!我はこんな優男になど持たれたくないぞ!』
魔剣の必死の抵抗も虚しく、フリエスはイオの両手から魔剣を取った。そして刃の切っ先をイオの喉に突き付ける。
ヴェルジークはフリエスの行動に緊迫し、剣を構えた。
「フリエス、剣を収めろ!」
『そうだ、小僧!我が王に向かってなんたる無礼!』
「・・・イオ」
「なに?」
「お前を斬った俺のメリットは?」
「国と、・・・ヴェルジークが守られるよ」
「お前は誰が守ってくれるんだ」
「えっと・・・」
『ぬかせ小僧!我がだ!』
さっきから魔剣が横槍を入れる声に、イオは気が緩んで笑う。すると周囲の騎士の一人が罵倒した。騎士団兵舎で、イオを蔑んでいた男だ。
「何を笑っている、魔族め!お前のような危険な者がこの世に存在していいはずがない!」
確かにイオは本来ここに居るべき存在ではない。しかも魔剣を扱える者だ。この世界の人間からしたら脅威でしかなかった。
だがその罵倒はかき消された。フリエスが切っ先を罵倒した騎士に向けたのだ。
「はい、そこの低俗な奴。これ以上騎士団の名を穢したらここで叩き斬るぞ。この魔剣で」
「ヒイッ!?フリエス、何を!」
「イオの方が騎士道精神をわかってるな。お前らもクラリシス王国の誇る騎士なら、一撃でやられてないでもっと踏ん張れよ」
「確かに私も含め、皆弛んでいるぞ。帰ったらみっちり鍛え直しだな」
「あの・・・」
「この魔剣、なんか気持ち悪いから返すわ」
『気持ち悪いとは何だ!赤毛もやしめ!』
フリエスは魔剣をイオに突き返した。もちろん魔剣の悪態は聞こえていない。
騎士達はフリエスの行動とヴェルジークの発言に我にかえり、剣を収めた。
「イオ、申し訳なかった。部下の勝手な行動と発言の非礼を詫びよう」
「いや、オレの方が悪いのに。皆さん、危険な目に合わせてごめんなさい」
「やっぱりイオはいい子だよな~」
「うわっ」
『あっ!これ、赤毛もやし!我の王に馴れ馴れしいぞ!』
「フリエス、馴れ馴れしくイオに触るな」
イオはフリエスに抱きつかれて髪をくしゃくしゃにされる。魔剣とヴェルジークは同じ発言をしていた。
何とかその場を収めることはできたようだが、魔剣の問題は残っている。魔剣探索の任務を終えた一同は、城へと帰還する事にした。
城へ帰還したヴェルジーク達は、アーシア陛下の謁見の準備が整うまで控室で待機するように言われた。ヴェルジークとイオ、フリエスが謁見の代表のようだ。
だが案内された控室の中から、とんでもない光景を目にする。
「ああッ!陛下、もうお止め下さい!」
カーテンの向こう側からは少し野太い喘ぎ声と、明らかにアーシア陛下の声がする。カーテン越しの影は2人が合体しているのか、アーシア陛下が前後に激しく動きやがて止まる。
「さっきまで処女だったのにもう腰を振っているではないか、もっと腰を振ってもよいぞ」
「くっ、・・陛下、お許しください、ああッ、あああッーーーー!!!」
明らかに尻を突き出している野太い声の影は達したのか、床に崩れる音がした。
しばらくしてから中からアーシア陛下が、スッキリした顔で現れソファーに優雅に座る。
「鍛えた兵士の締りはやはり良い」
「・・・アーシア陛下、何をされているのですか」
「おお!ヴェルジークよ、戻ったのか。いやなに、イオが戻った際にどのように抱くかそこの兵士で思考しておったのだ」
「どうりで見張りの兵士が扉口に居ないと思った」
「我が国の兵士で、そのような不埒な行為はお止め下さい」
「ヴェルジークは器が小さいぞ。イオ、さぁ予の所へ来い!」
「ええっ!?」
「行かなくていい」
突然話題を自分に向けられたイオは焦るが、ヴェルジークに静止された。魔剣も変態じみては居たが、アーシア陛下の変態さは突き抜けていた。
それより自分を想像して先程の行為が行われていた事に、イオはドン引きする。
「予は強い者が好みなのだ」
「アーシア陛下はその強い者を組み敷くのが好みなんだ」
「うっ・・・なんてセクハラ」
『このような破廉恥極まりない変態の統治する人間の国に、魔族は敗北したのか』
「さて。報告を聞こうか、ヴェルジーク」
ボソッとフリエスが耳打ちしたアーシア陛下の特殊性癖をイオは暴露されながら、一同は改めて謁見の間へ移動するのだった。
イオは両手に持つ魔剣をフリエスの前に差し出した。フリエスは真顔でイオを見下ろす。
「なんの真似だ?」
「オレは危険だと思う。だからオレに肩入れしないフリエスが判断して欲しい」
「・・・」
『ぉ、王よ!我はこんな優男になど持たれたくないぞ!』
魔剣の必死の抵抗も虚しく、フリエスはイオの両手から魔剣を取った。そして刃の切っ先をイオの喉に突き付ける。
ヴェルジークはフリエスの行動に緊迫し、剣を構えた。
「フリエス、剣を収めろ!」
『そうだ、小僧!我が王に向かってなんたる無礼!』
「・・・イオ」
「なに?」
「お前を斬った俺のメリットは?」
「国と、・・・ヴェルジークが守られるよ」
「お前は誰が守ってくれるんだ」
「えっと・・・」
『ぬかせ小僧!我がだ!』
さっきから魔剣が横槍を入れる声に、イオは気が緩んで笑う。すると周囲の騎士の一人が罵倒した。騎士団兵舎で、イオを蔑んでいた男だ。
「何を笑っている、魔族め!お前のような危険な者がこの世に存在していいはずがない!」
確かにイオは本来ここに居るべき存在ではない。しかも魔剣を扱える者だ。この世界の人間からしたら脅威でしかなかった。
だがその罵倒はかき消された。フリエスが切っ先を罵倒した騎士に向けたのだ。
「はい、そこの低俗な奴。これ以上騎士団の名を穢したらここで叩き斬るぞ。この魔剣で」
「ヒイッ!?フリエス、何を!」
「イオの方が騎士道精神をわかってるな。お前らもクラリシス王国の誇る騎士なら、一撃でやられてないでもっと踏ん張れよ」
「確かに私も含め、皆弛んでいるぞ。帰ったらみっちり鍛え直しだな」
「あの・・・」
「この魔剣、なんか気持ち悪いから返すわ」
『気持ち悪いとは何だ!赤毛もやしめ!』
フリエスは魔剣をイオに突き返した。もちろん魔剣の悪態は聞こえていない。
騎士達はフリエスの行動とヴェルジークの発言に我にかえり、剣を収めた。
「イオ、申し訳なかった。部下の勝手な行動と発言の非礼を詫びよう」
「いや、オレの方が悪いのに。皆さん、危険な目に合わせてごめんなさい」
「やっぱりイオはいい子だよな~」
「うわっ」
『あっ!これ、赤毛もやし!我の王に馴れ馴れしいぞ!』
「フリエス、馴れ馴れしくイオに触るな」
イオはフリエスに抱きつかれて髪をくしゃくしゃにされる。魔剣とヴェルジークは同じ発言をしていた。
何とかその場を収めることはできたようだが、魔剣の問題は残っている。魔剣探索の任務を終えた一同は、城へと帰還する事にした。
城へ帰還したヴェルジーク達は、アーシア陛下の謁見の準備が整うまで控室で待機するように言われた。ヴェルジークとイオ、フリエスが謁見の代表のようだ。
だが案内された控室の中から、とんでもない光景を目にする。
「ああッ!陛下、もうお止め下さい!」
カーテンの向こう側からは少し野太い喘ぎ声と、明らかにアーシア陛下の声がする。カーテン越しの影は2人が合体しているのか、アーシア陛下が前後に激しく動きやがて止まる。
「さっきまで処女だったのにもう腰を振っているではないか、もっと腰を振ってもよいぞ」
「くっ、・・陛下、お許しください、ああッ、あああッーーーー!!!」
明らかに尻を突き出している野太い声の影は達したのか、床に崩れる音がした。
しばらくしてから中からアーシア陛下が、スッキリした顔で現れソファーに優雅に座る。
「鍛えた兵士の締りはやはり良い」
「・・・アーシア陛下、何をされているのですか」
「おお!ヴェルジークよ、戻ったのか。いやなに、イオが戻った際にどのように抱くかそこの兵士で思考しておったのだ」
「どうりで見張りの兵士が扉口に居ないと思った」
「我が国の兵士で、そのような不埒な行為はお止め下さい」
「ヴェルジークは器が小さいぞ。イオ、さぁ予の所へ来い!」
「ええっ!?」
「行かなくていい」
突然話題を自分に向けられたイオは焦るが、ヴェルジークに静止された。魔剣も変態じみては居たが、アーシア陛下の変態さは突き抜けていた。
それより自分を想像して先程の行為が行われていた事に、イオはドン引きする。
「予は強い者が好みなのだ」
「アーシア陛下はその強い者を組み敷くのが好みなんだ」
「うっ・・・なんてセクハラ」
『このような破廉恥極まりない変態の統治する人間の国に、魔族は敗北したのか』
「さて。報告を聞こうか、ヴェルジーク」
ボソッとフリエスが耳打ちしたアーシア陛下の特殊性癖をイオは暴露されながら、一同は改めて謁見の間へ移動するのだった。
0
お気に入りに追加
321
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる