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序 魔剣転生
8魔王と魔剣
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イオの魔王という発言に騎士達の緊迫感が募る。イオも自分に向けられた剣に心臓の鼓動が早くなるのを感じた。不用意に動けば斬られかねないからだ。
「えっと、どういう事?」
『正確には魔王だったと言うべきだな。今は人間に転生しているようだが』
「転生?」
『お前は2度死んだ』
「え・・・」
『1度目は魔王として、2度目は人間として』
「2回死んだって、オレは今ここに・・・」
『多分お前が前の世界で不意に死に、なぜか身体ごとここに転生して来たようだ』
「死んだ・・・オレ、死んでるの?」
『だが、今は3度目の生を受けここに存在している』
驚愕の事実を突き付けられ、イオの顔が青ざめた。その雰囲気を察し、遠くからヴェルジークが声をかける。
「イオ、大丈夫か?誰と会話しているんだ」
「ヴェルジーク・・・オレ、一回死んでるみたい」
「どういう事だ?」
「でも、今は生きてるみたい」
「イオ、一度こちらに戻って来なさい。具合が悪そうだ、出直そう」
「でも、魔剣が・・・」
『王よ、我も連れて行ってくれ。というかお前と身体が一体化してしまったので離れると色々不都合なのだ。なるべく近くに居れば、魔力の放出も治まる。あぁ、それと魔王である事は伏せておけ。ここは人間の国のようだ、下手に刺激するな』
「わかった。ヴェルジーク、魔剣が連れて行ってくれって言ってる。触っても大丈夫そう」
ヴェルジークは魔剣と会話していた事をにわかに信じ難いが、イオが嘘をついていないことを信じたかった。兵を少し下げさせる。
「わかった、手に持ってくれ」
「うん、いくよ」
ヴェルジークはいざという時のために、剣を構えたままだ。イオは恐る恐る魔剣の柄を握る。
すると黒い瘴気がイオの腕に纏わり付く。
「わっ!わっーーーー!?」
「イオ!」
『オオオオー!久々の主の感触じゃー!若い身体はやはりピチピチであるな!なかなか良いぞー!』
「なんかこの魔剣、変態発言してる!」
『変態ではない!』
「はやりその魔剣を手放せ!」
『若造の分際で我の王にちょっかい出そうとは1000年早いわー!』
イオの慌てぶりに心配になったヴェルジークは、魔剣を剣で弾き飛ばそうとした。だが受け流され体制を崩す。
「ヴェルジーク!」
「くっ!」
『我からも一発お見舞いしてやろう』
「あっ、魔剣!ダメだって!」
体制を崩したヴェルジーク目掛けて、魔剣が勝手にイオの腕を振り下ろす。間一髪でヴェルジークは剣で受け止めるが、魔剣の方が力が上だ。どんどん押されていく。
「ヴェル!騎士団、副団長を援護しろ」
「駄目だ!来るな!」
副団長の危機にフリエスや騎士達が剣を構えて、イオに突撃していく。
「魔剣、ダメだ!誰も傷付けないでくれ」
『王の願いなら聞いてやらないでもないが、とりあえず攻撃されたらお前が危険だ』
騎士達の攻撃がイオに届こうとした時、刃に黒い風を纏った魔剣はイオの身体を回転させるように引っ張り騎士の剣を弾き返した。
その光景をスローモーションでも見ているかのように目にしたイオは、怒る。
「だから、傷付けたらダメって言ってるだろーーー!!!」
回転した勢いで魔剣を地面に突き立てる。一瞬魔剣からグアッと短い悲鳴が聞こえたが、黒い風も消えた。
はぁはぁと呼吸を整えていると、ヴェルジークが後ろからイオを抱き締めてきた。
「イオ」
「・・・ごめんなさい・・ッ」
イオは魔剣が勝手にした事とはいえ、誰かを傷付けた自分に罪悪感を感じ大粒の涙を零す。ヴェルジークも全てを理解はしていないが、イオの流す涙が本意ではなかったと悟る。
『・・・王よ、すまない。ちょっと嫉妬した』
「え?」
『後ろのキザな男前と王が親しげな雰囲気で嫉妬したのだ!しかも男にまた囲まれおって!王は、我ひとすじだと言ってくれたのに浮気者め!』
「・・・ちょっと意味がわからないんだけど」
『王の浮気者ーーーー!!!』
「わっ、魔剣が逆ギレした!?」
「イオは先程から、魔剣と会話しているのか?」
「えっと、うん・・・オレにしか聞こえないのかな?魔剣が、オレとヴェルジークに嫉妬して攻撃したみたい」
魔剣はどうやらイオが、ヴェルジークや騎士達にハーレムのように囲まれていたのがお気に召さなかったらしい。
「・・・そうか。ライバルが増えたな」
「え?」
「何でもない。それより、魔剣は制御出来たのか?見たところ瘴気の放出が止まったな」
「大丈夫みたい。オレと身体が合体したとか、なんとか・・・」
「魔剣と一体化したと?詳しくは城に戻って陛下に報告してからにしよう」
「うん。あっ!騎士達の人達!」
突撃してきて吹き飛ばされた騎士達は怪我もなく、立ち上がっていたが剣を構えたままだ。
「皆、剣を収めよ。魔剣はイオが制御した」
「それが本当っていう保証は?」
「フリエス」
「一度剣を抜いた相手を信用する訳にはいかない」
それは御もっともだった。下手をすれば騎士達は刃が当たり死んでいたかもしれないのだ。イオは自分の安易な行動で危険に晒した事を悔やんだ。
もう信用してはもらえないだろうが、意を決してヴェルジークの腕を解く。そして剣を両手で横に持ったままフリエスに近付き見上げる。
「・・・イオ」
「オレの命をフリエスに預ける」
「えっと、どういう事?」
『正確には魔王だったと言うべきだな。今は人間に転生しているようだが』
「転生?」
『お前は2度死んだ』
「え・・・」
『1度目は魔王として、2度目は人間として』
「2回死んだって、オレは今ここに・・・」
『多分お前が前の世界で不意に死に、なぜか身体ごとここに転生して来たようだ』
「死んだ・・・オレ、死んでるの?」
『だが、今は3度目の生を受けここに存在している』
驚愕の事実を突き付けられ、イオの顔が青ざめた。その雰囲気を察し、遠くからヴェルジークが声をかける。
「イオ、大丈夫か?誰と会話しているんだ」
「ヴェルジーク・・・オレ、一回死んでるみたい」
「どういう事だ?」
「でも、今は生きてるみたい」
「イオ、一度こちらに戻って来なさい。具合が悪そうだ、出直そう」
「でも、魔剣が・・・」
『王よ、我も連れて行ってくれ。というかお前と身体が一体化してしまったので離れると色々不都合なのだ。なるべく近くに居れば、魔力の放出も治まる。あぁ、それと魔王である事は伏せておけ。ここは人間の国のようだ、下手に刺激するな』
「わかった。ヴェルジーク、魔剣が連れて行ってくれって言ってる。触っても大丈夫そう」
ヴェルジークは魔剣と会話していた事をにわかに信じ難いが、イオが嘘をついていないことを信じたかった。兵を少し下げさせる。
「わかった、手に持ってくれ」
「うん、いくよ」
ヴェルジークはいざという時のために、剣を構えたままだ。イオは恐る恐る魔剣の柄を握る。
すると黒い瘴気がイオの腕に纏わり付く。
「わっ!わっーーーー!?」
「イオ!」
『オオオオー!久々の主の感触じゃー!若い身体はやはりピチピチであるな!なかなか良いぞー!』
「なんかこの魔剣、変態発言してる!」
『変態ではない!』
「はやりその魔剣を手放せ!」
『若造の分際で我の王にちょっかい出そうとは1000年早いわー!』
イオの慌てぶりに心配になったヴェルジークは、魔剣を剣で弾き飛ばそうとした。だが受け流され体制を崩す。
「ヴェルジーク!」
「くっ!」
『我からも一発お見舞いしてやろう』
「あっ、魔剣!ダメだって!」
体制を崩したヴェルジーク目掛けて、魔剣が勝手にイオの腕を振り下ろす。間一髪でヴェルジークは剣で受け止めるが、魔剣の方が力が上だ。どんどん押されていく。
「ヴェル!騎士団、副団長を援護しろ」
「駄目だ!来るな!」
副団長の危機にフリエスや騎士達が剣を構えて、イオに突撃していく。
「魔剣、ダメだ!誰も傷付けないでくれ」
『王の願いなら聞いてやらないでもないが、とりあえず攻撃されたらお前が危険だ』
騎士達の攻撃がイオに届こうとした時、刃に黒い風を纏った魔剣はイオの身体を回転させるように引っ張り騎士の剣を弾き返した。
その光景をスローモーションでも見ているかのように目にしたイオは、怒る。
「だから、傷付けたらダメって言ってるだろーーー!!!」
回転した勢いで魔剣を地面に突き立てる。一瞬魔剣からグアッと短い悲鳴が聞こえたが、黒い風も消えた。
はぁはぁと呼吸を整えていると、ヴェルジークが後ろからイオを抱き締めてきた。
「イオ」
「・・・ごめんなさい・・ッ」
イオは魔剣が勝手にした事とはいえ、誰かを傷付けた自分に罪悪感を感じ大粒の涙を零す。ヴェルジークも全てを理解はしていないが、イオの流す涙が本意ではなかったと悟る。
『・・・王よ、すまない。ちょっと嫉妬した』
「え?」
『後ろのキザな男前と王が親しげな雰囲気で嫉妬したのだ!しかも男にまた囲まれおって!王は、我ひとすじだと言ってくれたのに浮気者め!』
「・・・ちょっと意味がわからないんだけど」
『王の浮気者ーーーー!!!』
「わっ、魔剣が逆ギレした!?」
「イオは先程から、魔剣と会話しているのか?」
「えっと、うん・・・オレにしか聞こえないのかな?魔剣が、オレとヴェルジークに嫉妬して攻撃したみたい」
魔剣はどうやらイオが、ヴェルジークや騎士達にハーレムのように囲まれていたのがお気に召さなかったらしい。
「・・・そうか。ライバルが増えたな」
「え?」
「何でもない。それより、魔剣は制御出来たのか?見たところ瘴気の放出が止まったな」
「大丈夫みたい。オレと身体が合体したとか、なんとか・・・」
「魔剣と一体化したと?詳しくは城に戻って陛下に報告してからにしよう」
「うん。あっ!騎士達の人達!」
突撃してきて吹き飛ばされた騎士達は怪我もなく、立ち上がっていたが剣を構えたままだ。
「皆、剣を収めよ。魔剣はイオが制御した」
「それが本当っていう保証は?」
「フリエス」
「一度剣を抜いた相手を信用する訳にはいかない」
それは御もっともだった。下手をすれば騎士達は刃が当たり死んでいたかもしれないのだ。イオは自分の安易な行動で危険に晒した事を悔やんだ。
もう信用してはもらえないだろうが、意を決してヴェルジークの腕を解く。そして剣を両手で横に持ったままフリエスに近付き見上げる。
「・・・イオ」
「オレの命をフリエスに預ける」
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