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8《ルシエス視点》天使に会った日
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俺は生まれる前から、ルシエス・クォデネンツとしては生きられなかった。
10歳の時クォデネンツ侯爵家当主の妾腹の子供だと発覚したが、厳格な父には受け入れてもらえずに孤児院へ預けられた。母は俺に呪いの言葉だけ残して、病んで実家へ戻ったとか。
院長は高齢の優しそうな男性で、俺を快く受け入れてくれた。
でもその時はすでに俺の心は冷たく凍り、人と触れ合うのも信じるのも拒絶していた。
院長が誰かの名前を呼んで探しているが、どうやら院内には居ないようだ。足と目の悪い私の代わりに探して来て欲しいと頼まれ、俺は無意識に頷いた。
誰もついてこないし逃げようと思えば逃げられた。そうしているうちに柵の外まで来たので、このまま逃げようと決めた。途中賊や魔物に襲われてもきっと誰も悲しまないだろう。もうクォデネンツではないから。
子供の足にしてはだいぶ来ただろうか、大きな木が見える。
そして俺はそこで天使と出会った。
いや、彼は天使なのか?
木の上の方で眠っているのか、赤茶色の髪の7歳くらいの男の子が居た。しかも彼の周りは赤い羽が舞っている。
「綺麗・・・」
この世にはまだ綺麗なものがあったのか・・・。俺の目の前に一房の赤い羽が落ちて来たからそれを手に取ってみる。
すると俺の周囲を無数の赤い魔法陣が展開し、爆破した。
俺の意識が一瞬飛んだ・・・・。
「なぁ、大丈夫?」
「・・・・ぅ・・・・・て、天使がいる」
「いや、天使じゃないから」
気が付くと誰かの膝に横たわっていて、最初に目にしたのは銀の美しい瞳だった。目が慣れると、それは木の上で寝ていた少年だとわかる。
「やっぱり天使だ・・・嬉しいな、俺のこと迎えに来たの・・んがッ???」
天使に鼻をつままれた。
「お前な、オレみたいな凡人を天使と比べたら神族と戦争になるからな?」
「そんな事ないと思うけど・・・あの、君は?」
「ユト」
「・・・・ユト」
「お前は?」
「・・・・ルシエス」
「ルシエスか、歳は?」
「10歳」
「なんだ年上か、オレは7歳だ。孤児院に来たのか?」
「うん」
「じゃあ、もう家族だな!」
家族・・・・俺がユトの家族?
「家族なんてもう要らない」
「オレはルシエスより年下だけど、孤児院には生まれた時から居るからオレの方が兄貴分だからな。そこんとこわかれよ」
「いや、だから・・・家族なんて・・」
「今、孤児院は年長者居ないからオレに出来ない事はルシエスがやってくれよ」
「え・・・だから人の話を」
「家族は助け合うもんなんだぞ。ィアーリウェアに生まれた命はみんな平等なんだからな」
ィアーリウェアに生まれた命はみんな平等、それはユトの口癖。
「平等なのか」
「そうだ」
「誰がそんなの決めたの」
「オレ」
「え・・・・」
「なんだよ、オレがそう思っちゃいけないのか?」
「そんな事は言ってないよ」
「じゃあ問題ないな。あ、家事も平等に分担するからな。よろしくな、ルシエス」
「・・・よ、よろしく」
「あ、そういえばなんでこの辺焼け野原になってるんだ???」
「さあ?」
小さなユトの手は、暖かく優しかった。俺はこの瞬間から、残りの人生をユトの為に生きようと決めた。
俺は何度もユトに美しいとか好きだと伝えるが、全てスルーされた。というよりもそういう意味で告白されてるとは思っていないようだ。
ユトは自分を平凡だと言うけど、子供達の面倒はきちんと見るし手際もいい。家事だって率先して手伝っているし、将来的には孤児院に援助出来る仕事に就くと計画もしっかりしている。まだ7歳なのに。
孤児院に来てから3年が経った。ユトがお気に入りの木は焼け野原になってしまったので、別の森でお気に入りの場所を探した。精霊力が澄んでいるのか、ある花の木の枝を折るとそこから甘い蜜が出ている。
ユトは木の端を齧り蜜を吸うと、俺にその枝を寄越す。
「甘いよ、これ」
「・・・・うん」
俺はユトと間接キスだなと、ドキドキしながら枝を舐め・・・・舐め回した。この枝はこっそり持ち帰って宝箱に仕舞おう。ユト専用の宝箱だ。川で拾った綺麗な石も、もらったお菓子のおまけも全部仕舞ってある。あとユトが切った爪とか乳歯とか。
一度ユトにバレて捨てられそうになったけど、全力で泣き付いて阻止した。1ヶ月口効いて貰えなかったけど。
それと孤児院にはずっと居られないし先の事を考えてみた。財力も権力も得られて孤児院を安定して運営し、ユトを伴侶にして俺得しかない余生を過ごす計画だ。
まずは爵位を貰えるよう功績を上げるしかないかと、魔導騎士になろうと考える。元々才能のあった魔術も剣術も上達し、いつの間にか一人で魔物を倒せるくらいになっていた。それがたまたま騎士団の目に止まり、魔導騎士団に入隊出来た。
19歳で副団長を任された。異例の出世スピードだ。それがクォデネンツ侯爵家の当主である父の耳に入ると、手のひら返したように俺を正式にクォデネンツ侯爵家に迎え入れた。他にも兄弟は居るし正式な後継ぎも決まっていたのに、兄弟を辺境に追いやり俺を次期当主に決めた。
「これで当主になれば計画通りだな。後はユトを伴侶にするだけか。家は新しいのを建てよう。夫婦の部屋は一つだ、これは譲らないぞ。子供は・・・さすがに無理だけど養子縁組でなんとかしよう。ユトは子供や可愛いものが好きだからな、たくさん迎えよう」
そして数年後、21歳で騎士団長となり無事にクォデネンツ侯爵家当主にもなれた。
さっそくユトを迎えに行こうとした山中で、魔物に襲われた。魔力は大した事ないが、数が多すぎる。連れて来た騎士の数で対処できるかどうか・・・。
「ルシエス、伏せろ!」
突然どこからか声が聞こえ、それが誰なのかも瞬時に察すると騎士団に身を隠させた。そして初めてユトと出会った時に見た赤い魔法陣が無数に出現したかと思うと、魔物を一気に燃やし尽くした。
唖然とする騎士団の前に、のんびりした声がかけられる。
「おーい、大丈夫かー?」
それはユトだった。数年離れてても、ひと目見ただけでわかる。
「ユト」
「お、ルシエスじゃないか。久しぶりー!元気だったか」
「あぁ、ユトも相変わらずそうだな。それより助かった、いつの間に魔法を使えるようになったんだ」
「ここ最近なんだけどな。火属性と相性いいみたいだ。まだ使いこなせないけど」
「なるほど」
数年ぶりでも、まるで昨日会ったように自然と挨拶するユトに心まで離れていない事を安堵した。
そして言葉通り周囲が焼けたようになっているのを確認すると、確かに火属性精霊魔法のようだ。だが、まだ制御しきれていないみたいだった。
「何してるんだ?」
「この辺りに魔物の集団が出没すると聞いて任務に当たっていたが、まさかユトが倒してしまうとは驚いたよ」
「やれば出来る子なんだよ、オレは」
「そうか」
「もう任務終わったから帰るのか?また会えなくなるな」
「・・・・」
ユトが寂しがっている?俺と離れるのが寂しいのか、そうかずっと俺と一緒の伴侶になりたいんだな。よし、プラン910を実行しよう。もしもの時のために1000パターンくらいプランを考えていた。
「ユト、魔導騎士団に入らないか」
これならユトをすぐ近くに置けるし、最初は見習いからだが何かあっても目と鼻の先だ。ユトの給金が上がれば孤児院の助けにもなると説得し、入隊を決意してくれた。
よかった、これでずっと一緒だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
思ったより騎士団長の職務は多忙で同じ城の中だというのにほぼユトに会えなかったが、たまに陰から見守ったり魔導映像記録器で様子も見た。不貞な輩はユトに手を出す前に沈めた。
そんなある日、魔導士長から四星花に招集がかかり皇帝陛下の執務室へ参上する。新しい四星花の当主が決まったとかで顔合わせのようだ。ヴァルハーゼン伯爵家の当主は、やけに冷たい印象の美丈夫で欲しい物は絶対手に入れると言わんばかりの貪欲さがあった。
そして驚く事に自身が魔獣王ロギアだと隠しもせずに名乗る。まぁ、裏で魔導士長が糸引いてたんだろうが、魔獣王は今さら500年前の勇者との確執はもういいらしい。純粋に貴族として生きるようだ。
今時魔族が人間の国に居たとして、悪事を働かなければ特に害はないだろう。我々人間だって魔族の国へ行く者だっている。
彼について論議が交わされ、四星花と認められるのに5日もかかった。
というよりも、彼や四星花は正直どうでもいい。早くユトに会いたい。
やっと会合から解放され、こっそり仕掛けておいた魔導映像記録器を見てその場に崩れ落ちた。
ユトが騎士達に囲まれている!風呂で!
翌日、彼等を呼び出し朝の鍛錬という正当な理由で全員地面に沈めた。
「みんな、どうしたんだ」
「ユト!」
朝一でユトに会えて癒やされる。あぁ、ユトは今日も天使のように眩しいな。
「お、おぉ・・・ルシエス団長おはようございます」
「敬語はいらないよ。今、俺達しか居ないから」
「地面に転がってるのは生き物とカウントしてないのか、お前は。というか何したんだよ?魔導騎士団全滅しちゃうからな?」
「嫁入り前のユトと風呂に入ったんだ、沈めて息の根を止めるのは当たり前だろう?」
「ウン、ソウデスネ。でも息の根は止めてはいけません」
「そんな事より、やっと会合も終わって有給もぎ取れたから明日どこかへ馬で遠乗りしないか」
「・・・皇帝陛下もぎってないよね」
「ん?」
「いや、何でもないよ!明日な、いいよ」
「よかった、久しぶりにユトと一緒だな。嬉しいよ」
俺は皇帝陛下をもぎる勢いで詰め寄り、皇帝陛下は涙目で快く休みを下さった。魔導士長からは、「お前は城を破壊する気か」と怒られたが。
そうだ、ユトと挙式をする場所も下見しよう!
明日が楽しみだ。
10歳の時クォデネンツ侯爵家当主の妾腹の子供だと発覚したが、厳格な父には受け入れてもらえずに孤児院へ預けられた。母は俺に呪いの言葉だけ残して、病んで実家へ戻ったとか。
院長は高齢の優しそうな男性で、俺を快く受け入れてくれた。
でもその時はすでに俺の心は冷たく凍り、人と触れ合うのも信じるのも拒絶していた。
院長が誰かの名前を呼んで探しているが、どうやら院内には居ないようだ。足と目の悪い私の代わりに探して来て欲しいと頼まれ、俺は無意識に頷いた。
誰もついてこないし逃げようと思えば逃げられた。そうしているうちに柵の外まで来たので、このまま逃げようと決めた。途中賊や魔物に襲われてもきっと誰も悲しまないだろう。もうクォデネンツではないから。
子供の足にしてはだいぶ来ただろうか、大きな木が見える。
そして俺はそこで天使と出会った。
いや、彼は天使なのか?
木の上の方で眠っているのか、赤茶色の髪の7歳くらいの男の子が居た。しかも彼の周りは赤い羽が舞っている。
「綺麗・・・」
この世にはまだ綺麗なものがあったのか・・・。俺の目の前に一房の赤い羽が落ちて来たからそれを手に取ってみる。
すると俺の周囲を無数の赤い魔法陣が展開し、爆破した。
俺の意識が一瞬飛んだ・・・・。
「なぁ、大丈夫?」
「・・・・ぅ・・・・・て、天使がいる」
「いや、天使じゃないから」
気が付くと誰かの膝に横たわっていて、最初に目にしたのは銀の美しい瞳だった。目が慣れると、それは木の上で寝ていた少年だとわかる。
「やっぱり天使だ・・・嬉しいな、俺のこと迎えに来たの・・んがッ???」
天使に鼻をつままれた。
「お前な、オレみたいな凡人を天使と比べたら神族と戦争になるからな?」
「そんな事ないと思うけど・・・あの、君は?」
「ユト」
「・・・・ユト」
「お前は?」
「・・・・ルシエス」
「ルシエスか、歳は?」
「10歳」
「なんだ年上か、オレは7歳だ。孤児院に来たのか?」
「うん」
「じゃあ、もう家族だな!」
家族・・・・俺がユトの家族?
「家族なんてもう要らない」
「オレはルシエスより年下だけど、孤児院には生まれた時から居るからオレの方が兄貴分だからな。そこんとこわかれよ」
「いや、だから・・・家族なんて・・」
「今、孤児院は年長者居ないからオレに出来ない事はルシエスがやってくれよ」
「え・・・だから人の話を」
「家族は助け合うもんなんだぞ。ィアーリウェアに生まれた命はみんな平等なんだからな」
ィアーリウェアに生まれた命はみんな平等、それはユトの口癖。
「平等なのか」
「そうだ」
「誰がそんなの決めたの」
「オレ」
「え・・・・」
「なんだよ、オレがそう思っちゃいけないのか?」
「そんな事は言ってないよ」
「じゃあ問題ないな。あ、家事も平等に分担するからな。よろしくな、ルシエス」
「・・・よ、よろしく」
「あ、そういえばなんでこの辺焼け野原になってるんだ???」
「さあ?」
小さなユトの手は、暖かく優しかった。俺はこの瞬間から、残りの人生をユトの為に生きようと決めた。
俺は何度もユトに美しいとか好きだと伝えるが、全てスルーされた。というよりもそういう意味で告白されてるとは思っていないようだ。
ユトは自分を平凡だと言うけど、子供達の面倒はきちんと見るし手際もいい。家事だって率先して手伝っているし、将来的には孤児院に援助出来る仕事に就くと計画もしっかりしている。まだ7歳なのに。
孤児院に来てから3年が経った。ユトがお気に入りの木は焼け野原になってしまったので、別の森でお気に入りの場所を探した。精霊力が澄んでいるのか、ある花の木の枝を折るとそこから甘い蜜が出ている。
ユトは木の端を齧り蜜を吸うと、俺にその枝を寄越す。
「甘いよ、これ」
「・・・・うん」
俺はユトと間接キスだなと、ドキドキしながら枝を舐め・・・・舐め回した。この枝はこっそり持ち帰って宝箱に仕舞おう。ユト専用の宝箱だ。川で拾った綺麗な石も、もらったお菓子のおまけも全部仕舞ってある。あとユトが切った爪とか乳歯とか。
一度ユトにバレて捨てられそうになったけど、全力で泣き付いて阻止した。1ヶ月口効いて貰えなかったけど。
それと孤児院にはずっと居られないし先の事を考えてみた。財力も権力も得られて孤児院を安定して運営し、ユトを伴侶にして俺得しかない余生を過ごす計画だ。
まずは爵位を貰えるよう功績を上げるしかないかと、魔導騎士になろうと考える。元々才能のあった魔術も剣術も上達し、いつの間にか一人で魔物を倒せるくらいになっていた。それがたまたま騎士団の目に止まり、魔導騎士団に入隊出来た。
19歳で副団長を任された。異例の出世スピードだ。それがクォデネンツ侯爵家の当主である父の耳に入ると、手のひら返したように俺を正式にクォデネンツ侯爵家に迎え入れた。他にも兄弟は居るし正式な後継ぎも決まっていたのに、兄弟を辺境に追いやり俺を次期当主に決めた。
「これで当主になれば計画通りだな。後はユトを伴侶にするだけか。家は新しいのを建てよう。夫婦の部屋は一つだ、これは譲らないぞ。子供は・・・さすがに無理だけど養子縁組でなんとかしよう。ユトは子供や可愛いものが好きだからな、たくさん迎えよう」
そして数年後、21歳で騎士団長となり無事にクォデネンツ侯爵家当主にもなれた。
さっそくユトを迎えに行こうとした山中で、魔物に襲われた。魔力は大した事ないが、数が多すぎる。連れて来た騎士の数で対処できるかどうか・・・。
「ルシエス、伏せろ!」
突然どこからか声が聞こえ、それが誰なのかも瞬時に察すると騎士団に身を隠させた。そして初めてユトと出会った時に見た赤い魔法陣が無数に出現したかと思うと、魔物を一気に燃やし尽くした。
唖然とする騎士団の前に、のんびりした声がかけられる。
「おーい、大丈夫かー?」
それはユトだった。数年離れてても、ひと目見ただけでわかる。
「ユト」
「お、ルシエスじゃないか。久しぶりー!元気だったか」
「あぁ、ユトも相変わらずそうだな。それより助かった、いつの間に魔法を使えるようになったんだ」
「ここ最近なんだけどな。火属性と相性いいみたいだ。まだ使いこなせないけど」
「なるほど」
数年ぶりでも、まるで昨日会ったように自然と挨拶するユトに心まで離れていない事を安堵した。
そして言葉通り周囲が焼けたようになっているのを確認すると、確かに火属性精霊魔法のようだ。だが、まだ制御しきれていないみたいだった。
「何してるんだ?」
「この辺りに魔物の集団が出没すると聞いて任務に当たっていたが、まさかユトが倒してしまうとは驚いたよ」
「やれば出来る子なんだよ、オレは」
「そうか」
「もう任務終わったから帰るのか?また会えなくなるな」
「・・・・」
ユトが寂しがっている?俺と離れるのが寂しいのか、そうかずっと俺と一緒の伴侶になりたいんだな。よし、プラン910を実行しよう。もしもの時のために1000パターンくらいプランを考えていた。
「ユト、魔導騎士団に入らないか」
これならユトをすぐ近くに置けるし、最初は見習いからだが何かあっても目と鼻の先だ。ユトの給金が上がれば孤児院の助けにもなると説得し、入隊を決意してくれた。
よかった、これでずっと一緒だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
思ったより騎士団長の職務は多忙で同じ城の中だというのにほぼユトに会えなかったが、たまに陰から見守ったり魔導映像記録器で様子も見た。不貞な輩はユトに手を出す前に沈めた。
そんなある日、魔導士長から四星花に招集がかかり皇帝陛下の執務室へ参上する。新しい四星花の当主が決まったとかで顔合わせのようだ。ヴァルハーゼン伯爵家の当主は、やけに冷たい印象の美丈夫で欲しい物は絶対手に入れると言わんばかりの貪欲さがあった。
そして驚く事に自身が魔獣王ロギアだと隠しもせずに名乗る。まぁ、裏で魔導士長が糸引いてたんだろうが、魔獣王は今さら500年前の勇者との確執はもういいらしい。純粋に貴族として生きるようだ。
今時魔族が人間の国に居たとして、悪事を働かなければ特に害はないだろう。我々人間だって魔族の国へ行く者だっている。
彼について論議が交わされ、四星花と認められるのに5日もかかった。
というよりも、彼や四星花は正直どうでもいい。早くユトに会いたい。
やっと会合から解放され、こっそり仕掛けておいた魔導映像記録器を見てその場に崩れ落ちた。
ユトが騎士達に囲まれている!風呂で!
翌日、彼等を呼び出し朝の鍛錬という正当な理由で全員地面に沈めた。
「みんな、どうしたんだ」
「ユト!」
朝一でユトに会えて癒やされる。あぁ、ユトは今日も天使のように眩しいな。
「お、おぉ・・・ルシエス団長おはようございます」
「敬語はいらないよ。今、俺達しか居ないから」
「地面に転がってるのは生き物とカウントしてないのか、お前は。というか何したんだよ?魔導騎士団全滅しちゃうからな?」
「嫁入り前のユトと風呂に入ったんだ、沈めて息の根を止めるのは当たり前だろう?」
「ウン、ソウデスネ。でも息の根は止めてはいけません」
「そんな事より、やっと会合も終わって有給もぎ取れたから明日どこかへ馬で遠乗りしないか」
「・・・皇帝陛下もぎってないよね」
「ん?」
「いや、何でもないよ!明日な、いいよ」
「よかった、久しぶりにユトと一緒だな。嬉しいよ」
俺は皇帝陛下をもぎる勢いで詰め寄り、皇帝陛下は涙目で快く休みを下さった。魔導士長からは、「お前は城を破壊する気か」と怒られたが。
そうだ、ユトと挙式をする場所も下見しよう!
明日が楽しみだ。
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