164 / 172
第11章「確かな憩い」
第11章「確かな憩い」その11
しおりを挟む「やめておいた方がいいよ。あの子、人を好きになれないから」
どうやら僕が西山に気があると思い込んでいるようだな。
真っ向から否定するのも何か違う気がするからやめておこう。
「全部上っ面で、仮面なんだよ」
何だか悪意のある言い方だな。
「君は西山が嫌いなのか?」
素朴の疑問が僕の脳裏に浮かぶ。
すると、小嶋は何で?という顔をした。
「いや、好きの部類に入るよ。
皐月は自分も他人も傷つかずに生きようとする、優しい子だから。
優しいことが取り柄だから、誰にだって優しさをばらまく。
だから、男はみんな、あいつに期待して告白して、結果お互いが苦しくなる」
僕よりも西山を知っているように聞こえた。
この子なら西山が語っていた、
中学時代の裏切った親友のことも知っているのかもしれない。
この子が西山とはどんな関係かは知らないが、
本質を見抜くような観察眼を持っているように見える。
それでもこの子とは友だちにはなれないな、と心の底から思った。
本質を見抜こうが、他人のすべてをわかった風に言う人間は苦手だ。
僕はその場でお礼を言って、三年四組の教室まで階段を上った。
腕時計の針が十三時二十分を示しており、
僕は焦りを通り越して、余裕を感じた。
人間、少しのミスなら焦りもするが、
取り返しもつかないほどのミスなら、笑って肩の力が抜けるものだ。
あれだけカンカン照りの中、
汗まみれで自転車を漕いで間にあったのに二十分にも遅刻してしまった。
それまで頑張っていたことが馬鹿らしく思うんだ。
でも、悲しくはないし、怒りもない。
こういう悪い予想外も楽しめる自分がいることに驚いた。
これが心の成長って言うのかもしれない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
風船葛の実る頃
藤本夏実
ライト文芸
野球少年の蒼太がラブレター事件によって知り合った京子と岐阜の町を探索するという、地元を紹介するという意味でも楽しい作品となっています。又、この本自体、藤本夏実作品の特選集となっています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サドガシマ作戦、2025年初冬、ロシア共和国は突如として佐渡ヶ島に侵攻した。
セキトネリ
ライト文芸
2025年初冬、ウクライナ戦役が膠着状態の中、ロシア連邦東部軍管区(旧極東軍管区)は突如北海道北部と佐渡ヶ島に侵攻。総責任者は東部軍管区ジトコ大将だった。北海道はダミーで狙いは佐渡ヶ島のガメラレーダーであった。これは中国の南西諸島侵攻と台湾侵攻を援助するための密約のためだった。同時に北朝鮮は38度線を越え、ソウルを占拠した。在韓米軍に対しては戦術核の電磁パルス攻撃で米軍を朝鮮半島から駆逐、日本に退避させた。
その中、欧州ロシアに対して、東部軍管区ジトコ大将はロシア連邦からの離脱を決断、中央軍管区と図ってオビ川以東の領土を東ロシア共和国として独立を宣言、日本との相互安保条約を結んだ。
佐渡ヶ島侵攻(通称サドガシマ作戦、Operation Sadogashima)の副指揮官はジトコ大将の娘エレーナ少佐だ。エレーナ少佐率いる東ロシア共和国軍女性部隊二千人は、北朝鮮のホバークラフトによる上陸作戦を陸自水陸機動団と阻止する。
※このシリーズはカクヨム版「サドガシマ作戦(https://kakuyomu.jp/works/16818093092605918428)」と重複しています。ただし、カクヨムではできない説明用の軍事地図、武器詳細はこちらで掲載しております。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる