120 / 172
第8章「私のレール」
第8章「私のレール」その12
しおりを挟む家に帰ると、母と妹がテレビを見ていた。
「どうだった、デートは?」
ニヤニヤしながら、僕をうかがっている。
それは中世の貴族が付けているような仮面に見えた。
なぜ母と妹が楽しそうにしているのか、僕には理解できなかった。
だってそうじゃないか。
僕が女の子と仲良くなろうがならまいが、関係のないことじゃないか。
何で他人のニュースに興味を持てるんだ?
まぁ、そこを百歩譲ったとして、あざけり笑うような態度はいただけない気がする。
別に怒るほどのことじゃないが、煮えたぎる思いがこみあげてくる。
「不思議な夢を見た気分だったよ」
そう言い残し、今日の彼女のように颯爽と二階へ上がった。
机を見ると、教科書、問題集が積み上げられていた。
あぁ、そういえば、課題がたくさん残っていたのを忘れていたのだ。
ノートをめくってみると、当然課題は終わってはいなかった。
ったく、なんで僕一人には特別なことが起きないんだ?
あれくらいのことがあったんだから、学校の課題くらい終わらせてくれてもいいだろ、
もしくは学校を破壊してくれるくらいのことをしてもいいだろ。
何で僕の周りは異常であるのに、僕は正常に回っているんだ。
悔しい、でも今を変える力も考えも持っていない。
良いことをしても、やるべきことはちゃんと僕を待っている。
時計のカチッ、カチッ、という音が机に座るように促している、
もう九時になりかけていることに虚しく感じると同時にそう感じた。
一日が一瞬にして終わるのは、何とも言えない寂しさが心の底からこみあげてくる。
今日は疲れたな、課題は明日やることにしよう。
それからくだらない動機で沸き上がった感情の高ぶりをしずめるために、
僕は部屋の照明を消すことにした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
『藍より出でず』
segakiyui
ライト文芸
石津容子は十年前に受賞しただけの作家の卵だ。無理解な夫と小さな子どもに振り回される毎日に、必死に書き続けている。いつか売れる、食べていける作家になりたい、デビューしたい、と願って。不器用な素人作家の小さな一歩の物語。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
探偵才能児の推理視カルテ
猫宮乾
ライト文芸
探偵福祉士という国家資格と、臨床犯罪推理士という学会認定の専門資格が生まれて早七年。※キャラミス風の設定ですが、トリック推理無です。ミステリ要素は、ほぼありません。舞台は2007年(平成)、架空の土地です。主人公が前向きになって友情などにより救済される場面が書きたくて書いています。
百々五十六の小問集合
百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ
ランキング頑張りたい!!!
作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。
毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。
氷麗の騎士は私にだけ甘く微笑む
矢口愛留
恋愛
ミアの婚約者ウィリアムは、これまで常に冷たい態度を取っていた。
しかし、ある日突然、ウィリアムはミアに対する態度をがらりと変え、熱烈に愛情を伝えてくるようになった。
彼は、ミアが呪いで目を覚まさなくなってしまう三年後の未来からタイムリープしてきたのである。
ウィリアムは、ミアへの想いが伝わらずすれ違ってしまったことを後悔して、今回の人生ではミアを全力で愛し、守ることを誓った。
最初は不気味がっていたミアも、徐々にウィリアムに好意を抱き始める。
また、ミアには大きな秘密があった。
逆行前には発現しなかったが、ミアには聖女としての能力が秘められていたのだ。
ウィリアムと仲を深めるにつれて、ミアの能力は開花していく。
そして二人は、次第に逆行前の未来で起きた事件の真相、そして隠されていた過去の秘密に近付いていき――。
*カクヨム、小説家になろう、Nolaノベルにも掲載しています。
この作品はフィクションです。 ─ 実際の人物・団体・事件・地名・他の創作ドラマには一切関係ありません ──
るしあん@猫部
ライト文芸
東京の名門・海原大学キャンパスで、学生の田中翔が白い粉の袋を手にしたま倒れ込み命を落とす。新米刑事の大江戸嵐は、大学の名声を揺るがすこの大麻事件の解決に挑む。周囲の証言をもとに、田中の死の裏には麻薬密売組織の存在があることを突き止めた嵐は、事件の核心に迫る捜査を展開。最終的に組織の摘発と事件の真相を解明し、田中の死の真実を明らかにする。この物語は、正義を貫く新人刑事の成長と決意を描く。
初めて、刑事ドラマを書いてみました。
興奮?と緊張?に満ちたドラマティックな展開を、ぜひお楽しみください。
さくらの花はおわりとはじまりをつげる花
かぜかおる
ライト文芸
年が明けてしばらくしてから学校に行かなくなった私
春休みが終わっても学校に通わない私は祖父母の家に向かうバスに乗っていた。
窓から見える景色の中に気になるものを見つけた私はとっさにバスを降りてその場所に向かった。
その場所で出会ったのは一人の女の子
その子と過ごす時間は・・・
第3回ライト文芸大賞エントリーしています。
もしよろしければ投票お願いいたします。
ネトゲのヒーローは魔王を許さない
KAIN
ライト文芸
曲がった事が大嫌いな高校生、月之木陽(つきのきよう)。
ある日、テストの時間にカンニングしていた男子生徒を殴り飛ばし、謹慎処分となってしまう。自分はただ、『悪人』を罰しただけなのにと、消沈しながら帰宅した陽は、憂さ晴らしにオンラインゲーム『エクシオン』にアクセスする。だがそこでも、陽のフレンドをPKする者達がいた。
そいつらと戦い、勝利する陽。そして陽は、そいつらにPKを指示した、『魔王』というプレイヤーの存在を知る。
『悪』を罰する為、陽はそいつらと戦う事を決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる