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第8章「私のレール」
第8章「私のレール」その4
しおりを挟む「私は裏切ったんだ。大事な親友を」
二つ目の車両の越え、連結部に行ったところで、西山は告白を始めた。
それは僕にというより、自分に釈明しているように感じた。
いや、きっとさっきの言葉に反応しているんだ。
下を向いて、座りこんでいるのに、僕の目には倒れ込んでいるような雰囲気だった。
「大丈夫か?」
大丈夫なわけがないのに、無責任にもそんな言葉を吐いてしまった。
軽く、手を指しのべようとしたが、今の西山にこの手がつかまれることはないと思う。
西山の肩は小刻みに震えていた。
まるで初冬の朝にいるように、縮こまっていた。
ああ、嫌だ。
女の子が泣いているのを見るのは嫌だ。
自分の無力さを痛感するだけなんだ。
どんな言葉をかけていいのかもわからなかった。
人がトラウマという沼に浸っている時、
そこから引きずり出す方法なんて知るよしもない。
あの時のような、奇跡が起きるわけもない。
今の僕には唇をかみ、拳を握ることぐらいしかできなかった。
だって、裏切れるほど、他人と仲良くなった記憶と自覚がないからだ。
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