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第7章「移りゆく時期」
第7章「移りゆく時期」その13
しおりを挟む「私はどう見える?」
西山は返答に困るような問いを投げかけてきた。
「えっ、どうって…すごいと思うよ」
「どこが?」
「勉強も友だちも自分の役割も全部完ぺきにこなすし、
君の悪口を言う人を聞いたことがないし」
「本当に?」
綺麗な目が僕をじっくりと見ている。
全てが本心ではないでしょ、とまるで目で語っているようだった。
「でも、ときどき無理しているんじゃないかなって思う」
正直に言ってしまうのが、僕の良いところでもあり、悪いところでもある。
「そうなんだ。私は今も昔も」
ため息が車両の空気をより重くして、電車も走り疲れているように感じた。
僕はこの数時間で西山の秘密を知ってしまったように思えた。
きっと誰もが悩んでいるのだろう。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、八方美人、
僕にないものをすべて持っている完璧美少女でも。
あの平木でさえ、死に追い込まれるほど悩むんだ。
完ぺきとか美少女とかで悩みの有無は決まらないのかもしれないな。
それにしても、遅いな。
さっきまでは少し遅れているなぁ、くらいの冷静さを保てたが、
ポケットに入れたはずの鍵を探すような焦りを感じた。
右手につけた時計を見たが、針が止まっている。
携帯の時計を見てみたが、電源がつかない。
そして、今気づいたが、窓の外の景色は僕が朝見たものとは異なっている。
嫌な予感がする。
約二か月前の記憶がダムに貯まった水を押し出すように頭の中にあふれてきた。
今回の悩み部屋は電車だ。
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