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第7章「移りゆく時期」
第7章「移りゆく時期」その6
しおりを挟むご飯を茶碗二杯分おさめた腹はいつもよりふくれて、
少し苦しかったのでベットに座り、すぐに横になった。
今日は一日中憂鬱な気分が頭からぬぐいきれなかった。
特別嫌な事があったわけじゃないのに。
楽しいことだってあったはずなのに、確かには覚えていないけど。
今日のことを思い出すたび、明日は良いことがあるだろうと、妙な期待をもってしまう。
西山は良い子だ。
僕が朝に教室へ入ると、小さく手を振ってくれるし、
あの放課後以来、目が合うと、にっこりと可愛らしい笑顔をして視線を外す。
LINEでも僕が発信した十分以内には返事をくれる。
西山と出会えたことは僕にとって幸運なんだと思う。
でもたったそれだけのことで期待してしまう自分が嫌になる。
それは誰にもふるまえるリップサービスだということに気づけない。
いや、信じたくないんだ。
でも心のどこかで信じているんだ。
西山が僕に密かな好意を抱いていることを。
けど、そんなことは絶対にありえない。
リビングのテレビの音がここまで聞こえてきたことにふと気づいた。
注意しにいこうと思ったが、それじゃいつもの繰り返しになると踏んで、
起き上がった体をベットに戻した。
昔に比べて自分の考えや行動を改めることが多くなった気がする。
学校の勉強だって一回目で正解することが少なくなった。
昔は簡単なことだったはずなのに。
一度で正解できないのはなかなか面倒なことだ。
正解するまで何度も修正するくらいなら、
間違っても一回で済ます方が納得できるんじゃないのか。
自分が間違っていることはわかっている。
でも、何が正しいのかはわからないままなんだ。
思考に酔いしれていると自然とまぶたが閉じようとしていた。
その時覚えていたのは、お隣さんが飼っている猫の鳴き声だけだった。
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