落ち込み少女

淡女

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第6章「西山皐月」

第6章「西山皐月」その6

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こうしてクラス対抗リレーの出場者が決まり、ホームルームを終えることが出来た。

僕は家に帰宅するやいなや、風呂場で汗を洗い落とした。

そういえば、夕方に風呂に入るのは久しぶりだな。

雨が降っているとはいえ、外はまだ明るく、

風呂場の明かりを消しても何の支障もない。

毎日浴びているシャワーだというのに新鮮に感じた。

使っているシャンプーもボディソープだっていつも使っているものだ。

でも明るさと時間が違うだけで僕の脳みそは都会で

一輪の花見つけた時のような感動を覚えていた。

情緒的になりつつ、風呂からあがると、携帯ゲームをして夕食までの時間を潰した。

まったくもって俗物だな、と画面をスライドさせながら

即物的な自分に呆れてしまった。

気づけば日は暮れて、母親に呼ばれて夕食を食べた。

今日は家族全員そろっての食事だ。

基本的に羽塚家の夕食時は父と母の世間話と相場は決まっている。

妹は携帯を片手に箸を動かしているし、僕は誰と話すわけでもなく

一口三十回噛むことを目標にご飯を食べている。

昔はそんなことはなかったのが

中学、高校生ともなると食卓で親と話すのがなんだか億劫になる。

別に恥ずかしいってわけじゃないが、親に話したいと思うことがない。

つまらないテレビをつけていなければ、

父と母のつまらない世間話をBGMとしたつまらない食事になってしまう。

母は父と話していたが何か思い出したかのように僕に視線を向けて、

「そういえば祐、あんたこないだの中間テストの結果はどうだったの?」

急な質問に動揺してしまった。

「いや、中学とあまり変わってないよ。平均中の平均だよ」


僕がそういうと母は不満げな顔をして、

「平均を誇らしく言うんじゃないの。大学行くんだったら、平均以上はとっとかないと」

うちの高校は全体の八割の生徒は大学に進学するんだから、

平均でも問題はないはずだ。

何もわかっていないのに、なぜ口出しされなきゃならない。

それに僕がいつ大学行くと言った?と言い返してやりたかったが、

「わかった」

ややこしくなりそうだったので目をふしながら軽くうなづいた。


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