85 / 172
第6章「西山皐月」
第6章「西山皐月」その6
しおりを挟むこうしてクラス対抗リレーの出場者が決まり、ホームルームを終えることが出来た。
僕は家に帰宅するやいなや、風呂場で汗を洗い落とした。
そういえば、夕方に風呂に入るのは久しぶりだな。
雨が降っているとはいえ、外はまだ明るく、
風呂場の明かりを消しても何の支障もない。
毎日浴びているシャワーだというのに新鮮に感じた。
使っているシャンプーもボディソープだっていつも使っているものだ。
でも明るさと時間が違うだけで僕の脳みそは都会で
一輪の花見つけた時のような感動を覚えていた。
情緒的になりつつ、風呂からあがると、携帯ゲームをして夕食までの時間を潰した。
まったくもって俗物だな、と画面をスライドさせながら
即物的な自分に呆れてしまった。
気づけば日は暮れて、母親に呼ばれて夕食を食べた。
今日は家族全員そろっての食事だ。
基本的に羽塚家の夕食時は父と母の世間話と相場は決まっている。
妹は携帯を片手に箸を動かしているし、僕は誰と話すわけでもなく
一口三十回噛むことを目標にご飯を食べている。
昔はそんなことはなかったのが
中学、高校生ともなると食卓で親と話すのがなんだか億劫になる。
別に恥ずかしいってわけじゃないが、親に話したいと思うことがない。
つまらないテレビをつけていなければ、
父と母のつまらない世間話をBGMとしたつまらない食事になってしまう。
母は父と話していたが何か思い出したかのように僕に視線を向けて、
「そういえば祐、あんたこないだの中間テストの結果はどうだったの?」
急な質問に動揺してしまった。
「いや、中学とあまり変わってないよ。平均中の平均だよ」
僕がそういうと母は不満げな顔をして、
「平均を誇らしく言うんじゃないの。大学行くんだったら、平均以上はとっとかないと」
うちの高校は全体の八割の生徒は大学に進学するんだから、
平均でも問題はないはずだ。
何もわかっていないのに、なぜ口出しされなきゃならない。
それに僕がいつ大学行くと言った?と言い返してやりたかったが、
「わかった」
ややこしくなりそうだったので目をふしながら軽くうなづいた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
廻道めぐるは決まった道しか散歩しない
卯月春吉
ライト文芸
廻道めぐる(まわりみち めぐる)は昔から代わり者の少女だった。
人と戯れるのが苦手でいつも帰り道を寄り道しながら散歩をするのが日課としていている。
趣味はアニメ鑑賞と散歩という極端なものであり、たまに遠出をするほのぼのとした日常かつ、シリアスな物語。
君の名をよばせて
雨ましろ
ライト文芸
初めて会ったとき、田丸は髪の毛ぼさぼさの真面目そうな印象だった。
バスで帰れば5分でつくのに、僕は田丸と一緒に帰り道歩いた。
ただ一緒にいる時間をつくりたくて、理由をさがしていた。
僕のドロドロした気持ちが晴れる日はくるのか。
人生でしあわせになれるようなあこがれを、未来をみたくなった。
劇場の紫陽花
茶野森かのこ
ライト文芸
三十路を過ぎ、役者の夢を諦めた佳世の前に現れた謎の黒猫。
劇団員時代の憧れの先輩、巽に化けた黒猫のミカは、佳世の口ずさむ歌が好きだから、もう一度、あの頃のように歌ってほしいからと、半ば強制的に佳世を夢への道へ連れ戻そうとする。
ミカと始まった共同生活、ミカの本当に思うところ、ミカが佳世を通して見ていたもの。
佳世はミカと出会った事で、もう一度、夢へ顔を上げる。そんなお話です。
現代ファンタジーで、少し恋愛要素もあります。
★過去に書いたお話を修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる