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第4章「異常の中の普通」
第4章「異常の中の普通」その1
しおりを挟む「ここから飛び降りて」
このセリフは前にも聞いたような...とお気づきになった方は、
この物語を最初から見てくださっている方に他ならない。
その方に僕は感謝いたします。
いやいや、今はその話じゃなかった。
またこの感覚だ。
白い白線、駅員のアナウンス音、
放課後帰りの女子高生ら、近づく電車。
僕はまた一人の少女から命を絶つよう命じられていた。
飛び降りることが必ずしも死に直結することではないとは言え、
他人にそれを言われれば、
暗意に「死ね」と伝えたいと誰しも思うだろう。
そんなことをこの一ヶ月で同じ人物に告げられた僕は
誰かに深い恨みでも買ったのだろうか。
僕は平木の顔を横目で見ながら、
偶然にも今後の鍵となる考えを今、この場で思いついていた。
長い沈黙が続いたせいか、
平木は僕がその言葉を本気で捉えたと思ったのだろう、
鼻で笑ったかのように
「冗談よ」
と言った。
全く、掴めない女の子だ。
こんな冗談を言い合えるほど僕らは仲睦まじくなったのかと
思う方もいるかもしれない。
しかし安心してほしい。
いくらまがりなりにも助けたとはいえ、
腰をおろして話したこともない少女を射止めること
僕と平木の関係を表すと、
重大な秘密を知った知り合い同士と言ったところが妥当だろう。
「人、増えてきたわね」
「ああ。そうだな」
僕は今、平木と駅のホームで電車を待っている。
急にラブコメディな展開になってきたなと呆れた方は、安心して欲しい。
この展開は決して年頃の男女の微笑ましい経緯があって、
成り立っているわけではない。
僕もこの状況を受け止めきれていない。
なぜって?
ここにいることは今日の放課後、
彼女の独断と命令で決まったことなのだから。
とりあえずここに来るまでの数時間前に遡るとしよう。
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