落ち込み少女

淡女

文字の大きさ
上 下
40 / 172
第3章「僕たち私たち」

第3章「僕たち私たち」その7

しおりを挟む




僕はいつもよりも四十分ほど早く家を出発することにした。

学校にいけば、何か昨日の不可解な現象のヒントが見つかるんじゃないか、

そう思えてならない。


フィクションの世界によくある異世界に移動したり、人外の力を手に入れたり、

弱き者を助けたり、敵なんてものが現れたり、

僕もついに都合のいい人間になれるのかもしれない。


しかし僕は学校を通り過ぎ、駅が近くにある商店街の方に向かった。

なぜって?

怖かったからだ、今の「普通」が無くなることが。


僕が思い描くような都合のいい世界が待っているとは限らない。

この社会同様、理不尽や不平等がごまんとあるんじゃないのか?

僕はいつも能天気に浮かれた考えをする度、

その反対の思考が脳裏に繰り広げられていた。

ただこの時、僕は他人に自分の運命を託していることを恥とは思わなかった。


それにしても、なんで僕はこれほど考えているんだろう。

本当は喜ばしいことではないのか。

死を選んだ少女を助けたことは誰もが賞賛することのはずなんだ。


商店街を通り過ぎ、踏切に差し掛かった。

遮断機が閉まり、多くの人が立ち止っていた。

隣のスーツを着た男性が今か今かと電車を待ちわびていた。

なぜこの人は時計とにらめっこをするのだろう?

いくら焦ったところで、遮断機が上がる時間は変わらないというのに。


いつもより一時間早く起きた僕にとって、

彼の焦る気持ちなどとうてい理解などできなかった。

そして、ようやく電車が来た。


待ち望んだ電車は多くの人を乗せ、線路に沿って僕に近づいては離れていった。


その間の軋む音が僕の心にやけに突き刺さった。


その音がきっと電車と線路以外ではとうせい出せないものだと思ったからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...