もしも目の前に神が現れたら

希京

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日常

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あたりが暗くなるまで慎吾は机から離れない。

宿題と予習だろうか、ものすごい集中力だなと神は感心した。

早くこのガキの魂を食いたいと思うが、なかなか尻尾を表さない。

「もう夜だぞ。家族は?誰も帰って来ないけど」

中学生ひとりを家に置いて、両親はどうしたのだろう。

慎吾はやっと気がついたという様子でスマホで時間を確認しようとするがなかなか画面が反応しなくて部屋の時計を見た。

「早く僕を食べれば?」

「人間の欲を煽れば魂はより旨くなるんだよって、あ…」

「やっぱり僕を食べる気なんだ。しかも美味しくして。それをべらべらしゃべって馬鹿な奴」

「おーまーえーなー…」

「あ、怒った?その勢いで僕を食えよ。ほら早く」

慎吾は神を挑発するが、本気ではないのか立ち上がって部屋を出て階段を降りていった。

しん、と人気のない家。

慎吾は台所に行って冷蔵庫を開けて中を物色している。

「色が変わってんなあ」

ぶつぶつ言いながら肉や野菜を取り出しては顔をしかめる。

それらを冷蔵庫に戻して、カップラーメンに手を伸ばした。

「親はなにしてんだ?」

「仕事」

ポットからお湯を注いで箸でフタをしながら椅子に座って頬杖をつく。

「お前をほったらかして?」

「仕方ないだろ。忙しいなら」

日常なんだろうか、当然のように慎吾は言う。

慎吾はカップラーメンを食べてからシャワーを浴びに洗面所に向かう。

上着を脱いでから、自分に着いてくる神を睨む。

「男の裸を見るクセでもあるの?変態?」

風呂の中まではついてくるなと言いたいんだろうが、「入ってくるな」とは絶対言葉にしない。

頭のいい奴だと思いながら神はふわふわと部屋のほうへ移動していく。

その姿を、慎吾は意味深な目で追っていた。
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