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クルマの中
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ふたりを送り届けて、あとは自分のマンションに帰るだけという時に通話音が鳴った。
見ると仕事用のスマホのディスプレイに『沢村樹』と表示されている。
無視して運転していたが、何度もしつこくかけてくるのに根負けしてスマホを手に取った。
車は道の端のほうに停車する。
「何」
『今から時間ある~?』
あきらかに酔っている樹の声だった。
返事をしないで直也は通話を切った。
間髪を入れずまた通話音が鳴る。
「だから何」
『迎えに来て。会いたい』
「俺はタクシーじゃない」
通話を切って家路を急ぐ。
帰ってもシフトの整理や売上の計算など雑事が待っていて、寝る時間を削って酔っぱらいに付き合う暇はない。
ようやくマンションが見えてきて駐車場に到着すると、ふう、と息をはく。
助手席に散らばっている数台のスマホとタブレットを鞄につめ込んでいた時、ガチャ、と音がなった。
「直也~~!」
器用にシートを倒して樹が体を押し倒してくる。
「ちょっ…、お前…!」
待ち伏せしていたとは思わなかった。
タクシーか何かで先回りしたのか、油断した自分を思い切り殴りたい。
バン!と運転席側のドアを閉めて、仰向けに転がった体にのしかかってくる。
樹は唖然として動けない直也のネクタイをするりと解いて両腕を頭上で拘束した。
「ここじゃ嫌だ…っ」
足だけで抵抗している動きを利用してシャツのボタンを器用に外される。
上半身があらわになり、胸のふくらみにしゃぶりつかれた。
「ぅ…ふ……」
慣れた感覚に反応してしまう。
「部屋…行こ…、樹…‥」
体をひねって逃げようとするが押さえつけてくる力が尋常じゃない。
何気なく樹の瞳を見ると、異常に光っている気がした。
ドラッグか、アルコールだけか、どっちだ。
「へへ…直也あ…。場所変えるのも興奮するう~」
面倒くさいわ!と心の中で叫んだ。
「オプション追加料金、忘れんなよ」
「はぁ~い」
ダメだ、完全にキマっている。
諦めて抵抗をやめると、下着ごとスーツのズボンを脱がされる。
あらわになった白い足を開かせて樹は股間に顔を埋めて直也自身を口に含んだ。
「やめ…あ…‥」
熱を帯びた熱い口内に包まれて快感で血液が充満するのを感じる。
「ほんとに…、やめ…て」
頭上で縛られている両手首のせいで樹の体を押し止めることが出来ず、されるがままになっていた。
せめて文句だけは言っていたが、だんだん嬌声しか出てこなくなる。
「直也、気持ちいい?」
口からは開放されたが、次は手でしごかれる。
樹の問いに、かすかに頷く。
「じゃあこれは?」
すでに怒張した樹のそれを、叩き込むように挿入されて体がはねた。
「‥あん…、い…つき…‥」
「気持ちいいだろお~、ヤラしい顔してる」
抵抗をやめて甘い声しか出なくなった直也にさらに欲情したのか、動きが激しくなる。
樹に突かれるまま、樹の肩に乗せられた両足がゆらゆら怪しく揺れていた。
「直也…」
「お前…、こんな‥、こと…‥して…う‥ん……」
直也自身を掴まれて上下に振られて、体の力が抜けた。
腹の上に熱い液体が散らばるのを感じる。
自分のものなのか樹のものか、あるいは両方か。
朦朧とする意識の中、両手首の痛みだけがかろうじて現実をつなげているような気がした。
「あー気持ちいいー」
ヘラヘラしている樹は、すぐに回復して再び後ろの穴に入れてくる。
甘い声しかつむげない直也は、樹の人形。
かつてそんな扱いをされた事を思い出す。
櫻井聖夜の操り人形だった自分。
教えられた刺激を、体はしっかり憶えていた。
次に意識が戻ったのは、空が少し明るくなった早朝。
スーツのジャケットをかけられて、その上に数万円置かれていた。
LINEを確認するとひとこと『ごめん』と書いてある。
仕事だと割り切って許してやる。
だがそう思うと、重い体がさらに重く感じて、嫌な気分になった。
報酬が発生しているのだから、謝る必要はない。
それより謝られると自分が情けなくなる。
買うのなら商品と見てほしい。
心はいらない。
鞄を取りジャケットを着直して、体を引きずるように車から降りた。
見ると仕事用のスマホのディスプレイに『沢村樹』と表示されている。
無視して運転していたが、何度もしつこくかけてくるのに根負けしてスマホを手に取った。
車は道の端のほうに停車する。
「何」
『今から時間ある~?』
あきらかに酔っている樹の声だった。
返事をしないで直也は通話を切った。
間髪を入れずまた通話音が鳴る。
「だから何」
『迎えに来て。会いたい』
「俺はタクシーじゃない」
通話を切って家路を急ぐ。
帰ってもシフトの整理や売上の計算など雑事が待っていて、寝る時間を削って酔っぱらいに付き合う暇はない。
ようやくマンションが見えてきて駐車場に到着すると、ふう、と息をはく。
助手席に散らばっている数台のスマホとタブレットを鞄につめ込んでいた時、ガチャ、と音がなった。
「直也~~!」
器用にシートを倒して樹が体を押し倒してくる。
「ちょっ…、お前…!」
待ち伏せしていたとは思わなかった。
タクシーか何かで先回りしたのか、油断した自分を思い切り殴りたい。
バン!と運転席側のドアを閉めて、仰向けに転がった体にのしかかってくる。
樹は唖然として動けない直也のネクタイをするりと解いて両腕を頭上で拘束した。
「ここじゃ嫌だ…っ」
足だけで抵抗している動きを利用してシャツのボタンを器用に外される。
上半身があらわになり、胸のふくらみにしゃぶりつかれた。
「ぅ…ふ……」
慣れた感覚に反応してしまう。
「部屋…行こ…、樹…‥」
体をひねって逃げようとするが押さえつけてくる力が尋常じゃない。
何気なく樹の瞳を見ると、異常に光っている気がした。
ドラッグか、アルコールだけか、どっちだ。
「へへ…直也あ…。場所変えるのも興奮するう~」
面倒くさいわ!と心の中で叫んだ。
「オプション追加料金、忘れんなよ」
「はぁ~い」
ダメだ、完全にキマっている。
諦めて抵抗をやめると、下着ごとスーツのズボンを脱がされる。
あらわになった白い足を開かせて樹は股間に顔を埋めて直也自身を口に含んだ。
「やめ…あ…‥」
熱を帯びた熱い口内に包まれて快感で血液が充満するのを感じる。
「ほんとに…、やめ…て」
頭上で縛られている両手首のせいで樹の体を押し止めることが出来ず、されるがままになっていた。
せめて文句だけは言っていたが、だんだん嬌声しか出てこなくなる。
「直也、気持ちいい?」
口からは開放されたが、次は手でしごかれる。
樹の問いに、かすかに頷く。
「じゃあこれは?」
すでに怒張した樹のそれを、叩き込むように挿入されて体がはねた。
「‥あん…、い…つき…‥」
「気持ちいいだろお~、ヤラしい顔してる」
抵抗をやめて甘い声しか出なくなった直也にさらに欲情したのか、動きが激しくなる。
樹に突かれるまま、樹の肩に乗せられた両足がゆらゆら怪しく揺れていた。
「直也…」
「お前…、こんな‥、こと…‥して…う‥ん……」
直也自身を掴まれて上下に振られて、体の力が抜けた。
腹の上に熱い液体が散らばるのを感じる。
自分のものなのか樹のものか、あるいは両方か。
朦朧とする意識の中、両手首の痛みだけがかろうじて現実をつなげているような気がした。
「あー気持ちいいー」
ヘラヘラしている樹は、すぐに回復して再び後ろの穴に入れてくる。
甘い声しかつむげない直也は、樹の人形。
かつてそんな扱いをされた事を思い出す。
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次に意識が戻ったのは、空が少し明るくなった早朝。
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だがそう思うと、重い体がさらに重く感じて、嫌な気分になった。
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それより謝られると自分が情けなくなる。
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