黒い空

希京

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交渉

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数日たったが夫は帰ってこない。
状況は逐一報告が入ってくるが、こちらから何も出来ないまま時間が過ぎていく。

「分家側は姫さまを戻して結婚を白紙にしろと主張しています。姫のご両親はそんな意見は受け付けないと跳ね飛ばして、全然話が前に進まない」

「白紙に戻してどうするの?」

「改めて分家のほうから姫を差し出すとか」

「ふたつの月山家で婚姻を交換したらいいじゃない。それで生まれた子を総領にして家をひとつにまとめれば?簡単な事だと思うけど」

「嫌がらせです。秘密裏に事を運んだことを」

口元を袖で隠しながら律は小声で言った。

分家ごときが図々しい。
長い間夫婦を引き離してやり方が下品。

馬鹿な親や親戚を持つと面倒くさいと思いながら静はため息をついた。

「最近また神泉苑のまわりの治安が悪くなってきたとか。心配でございますね」

「もともとあの辺は治安悪かったじゃない。夜になると鬼が現れるとか」

本当は野盗が跋扈しているだけで取り締まれない朝廷が悪い。
噂に怯えて人気がないのを利用して話し合いの場所に選んだので治安は悪いほうがいい。

「木のような死体が無数に転がっているようです」

総帥が精気を吸う瞬間を思い出したのか、律は身震いした。

かつてはひとつの一族だったのかもしれないが、はぐれた者までは把握しきれていない。

人間も同じ苗字の連中がたくさんいる。

全部親戚という事は、全部他人と同じこと。

「この話はもういい。それより髪を梳くから鏡と櫛を持ってきて」
律に告げると、一礼して部屋から出ていく。

足音が遠のくのを確認して、静は立ち上がった。
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