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ひとこと
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新調したものなのか、総帥の黒い狩衣は硬い感じがする。
片足を長椅子に置いてそこに腕を乗せて座るこの男は、一線を引いたとは思えない圧力があった。
自分と同じ色でも、彼の黒髪はその美貌を引き立てるように怪しく流れる。
嫌味を言われても怒りに火がつかないのは見た目のせいか。
いろいろ考える静をさらに挑発するようにクルトはにやにやしながら見ていたが、気が変わったのかすぐに鉾をおさめた。
真面目な夫は兄のこういう態度が少し癇に障るのかもしれないが、挑発に乗るほど馬鹿ではないようだった。
「クルトが行くと全員殺しそうですからね。交渉事は僕が適任でしょう?」
「おい、お前だってきのう殺しまくって帰ってきただろう。似たもの兄弟だ。俺は見た目で損しているだけだ」
総帥は片眉を上げて表情を崩すが、夫は微笑を浮かべた。
毎回しているやりとりなんだろう。
「これが今生の別れにならないことを祈っています」
アルノがゆっくり立ち上がる。静と律が後に続こうと急いで椅子から離れようとすると、クルトは真ん中に盛ってある菓子を下にひいてある布で風呂敷のように器用にまとめた。
「おみやげ」
そう言って静に渡す。
「ありがとうございます。遠慮なく」
少し腰をかがめて礼をしてから抱くように受け取り、律に渡す。
「もしアルノがしくじった時、避難場所はここだ。全員を素早く導け」
クルトは貼り付けていた笑みを消して、静を貫くような厳しい視線で見た。
「かしこまりました」
ここへ来たのは単なる道案内ではなかったようだ。
香の匂いを残して部屋を出るアルノについていこうと体を外に向けた時、頭を大きな手で包まれるように引き寄せられた。
「あなたを守るのは俺だから」
クルトは静の耳元で彼女にしか聞こえない小さな声で呟いてから、そっと離れていった。
振り返った時には、もうその姿はなかった。
片足を長椅子に置いてそこに腕を乗せて座るこの男は、一線を引いたとは思えない圧力があった。
自分と同じ色でも、彼の黒髪はその美貌を引き立てるように怪しく流れる。
嫌味を言われても怒りに火がつかないのは見た目のせいか。
いろいろ考える静をさらに挑発するようにクルトはにやにやしながら見ていたが、気が変わったのかすぐに鉾をおさめた。
真面目な夫は兄のこういう態度が少し癇に障るのかもしれないが、挑発に乗るほど馬鹿ではないようだった。
「クルトが行くと全員殺しそうですからね。交渉事は僕が適任でしょう?」
「おい、お前だってきのう殺しまくって帰ってきただろう。似たもの兄弟だ。俺は見た目で損しているだけだ」
総帥は片眉を上げて表情を崩すが、夫は微笑を浮かべた。
毎回しているやりとりなんだろう。
「これが今生の別れにならないことを祈っています」
アルノがゆっくり立ち上がる。静と律が後に続こうと急いで椅子から離れようとすると、クルトは真ん中に盛ってある菓子を下にひいてある布で風呂敷のように器用にまとめた。
「おみやげ」
そう言って静に渡す。
「ありがとうございます。遠慮なく」
少し腰をかがめて礼をしてから抱くように受け取り、律に渡す。
「もしアルノがしくじった時、避難場所はここだ。全員を素早く導け」
クルトは貼り付けていた笑みを消して、静を貫くような厳しい視線で見た。
「かしこまりました」
ここへ来たのは単なる道案内ではなかったようだ。
香の匂いを残して部屋を出るアルノについていこうと体を外に向けた時、頭を大きな手で包まれるように引き寄せられた。
「あなたを守るのは俺だから」
クルトは静の耳元で彼女にしか聞こえない小さな声で呟いてから、そっと離れていった。
振り返った時には、もうその姿はなかった。
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