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夫の兄
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真新しい御簾の向こうにあるほのかな灯りだけが室内を照らす。
ここはアルノの私室ではなく、日並家の後継者を生み出す空間、そんな意味合いのある部屋だった。
贅沢に畳を敷き詰めてあり、婚礼ということで白い几帳をはじめ調度品も新しい。
静がややこしい着物を律の助けを借りながら脱いでいる間に、疲れと酔いのせいかアルノは布団の上にうつ伏せに倒れて動かなくなった。
静かな寝息をたてて目を閉じている夫の側に座って
「これから末永くよろしくお願いします」
教えられた台詞を言って、次どうしようか静は困った。
アルノを着替えさせたほうがいいと思うがどこに何があるのかわからない。
なんとか掛け布団を引っ張って夫を包むように上からそっとかけて、自分も横にすべり込んだ。
来る時まで夫となる男の喉を掻っ切ってやると息巻いていた自分だが、拉致計画を阻止するために飛び出していった夫。
それを思うと殺そうと思っていたことは胸にしまって墓まで持っていこうと思う。
だが我々の寿命は樹のように長い。
「…姫さま」
御簾の向こうに控える律の言葉で現実に戻る。
「なに?」
「今夜はお休みになられて明日改めてご挨拶まわりに行きましょう。総帥にも改めまして…」
日並家の当主。皆に「総帥」と呼ばれる圧倒的存在感の男。
あの方の前では皆がひれ伏す。
「そうね。お前も私にかまわずおやすみ」
静は自分の心を読まれないように抑揚のない口調で律をねぎらう言葉を吐いた。
この広い屋敷のどこかにあの方がいる。
もう眠ってしまわれたのだろうか。
ここを抜け出して屋敷内をさまよってみたかったが、眠っている夫と律の手前動くことができず、少しうとうとしたくらいで外が明るくなってきた。
ここはアルノの私室ではなく、日並家の後継者を生み出す空間、そんな意味合いのある部屋だった。
贅沢に畳を敷き詰めてあり、婚礼ということで白い几帳をはじめ調度品も新しい。
静がややこしい着物を律の助けを借りながら脱いでいる間に、疲れと酔いのせいかアルノは布団の上にうつ伏せに倒れて動かなくなった。
静かな寝息をたてて目を閉じている夫の側に座って
「これから末永くよろしくお願いします」
教えられた台詞を言って、次どうしようか静は困った。
アルノを着替えさせたほうがいいと思うがどこに何があるのかわからない。
なんとか掛け布団を引っ張って夫を包むように上からそっとかけて、自分も横にすべり込んだ。
来る時まで夫となる男の喉を掻っ切ってやると息巻いていた自分だが、拉致計画を阻止するために飛び出していった夫。
それを思うと殺そうと思っていたことは胸にしまって墓まで持っていこうと思う。
だが我々の寿命は樹のように長い。
「…姫さま」
御簾の向こうに控える律の言葉で現実に戻る。
「なに?」
「今夜はお休みになられて明日改めてご挨拶まわりに行きましょう。総帥にも改めまして…」
日並家の当主。皆に「総帥」と呼ばれる圧倒的存在感の男。
あの方の前では皆がひれ伏す。
「そうね。お前も私にかまわずおやすみ」
静は自分の心を読まれないように抑揚のない口調で律をねぎらう言葉を吐いた。
この広い屋敷のどこかにあの方がいる。
もう眠ってしまわれたのだろうか。
ここを抜け出して屋敷内をさまよってみたかったが、眠っている夫と律の手前動くことができず、少しうとうとしたくらいで外が明るくなってきた。
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