オトナの玩具

希京

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自転車

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自転車が直ったから見てこいと言われて広い玄関に座って待っていた。
もうこの段階で自分が完全に壊れているのは自覚していた。

「ほら、これで乗り回せるわよ」
引き戸を開けてパンクしていた自転車を中に入れて、僕を誘拐した女の人が見せてくる。

僕はパジャマ姿でそれをぼんやり見ていた。

「庭の中なら乗っていいそうよ。ここけっこう広いからいい運動になるわ」

「うんどう…」
そんな事今さらどうでもよく思えて、僕は立ち上がって家の中に戻った。

運動どころか、ひとりでは階段を登りきることもできない。
食事はお手伝いさんに部屋まで持ってきてもらって、下まで降りたときは遠山さんに引きずられるように上まで登った。

最近は遠山さんも来なくなった。

廊下から「もう飽きたのか」「後処理するこっちの身にもなれ」とか聞こえる。

ガチャ、とドアが開く音がした。
「見ろ、もう何も反応がない」
遠山さんの言う通り、僕は今無表情にベッドに寝転んでいる。

「お前がめちゃくちゃに扱うからだろ」
聞き覚えのある男の人の声が遠山さんを非難していた。

まだ成熟していない僕の体を大人のように扱って、不安定な心を薬物で抑えた結果、自我を失いかけたぼろぼろの人形になってしまった。

ただひとつ出来ることは、誰かの性処理に使うことだけ。
「適当に処分しといてくれ」
何の感情も含まない声で言う遠山さんに困った顔を見せながら男が僕に近づいてくる。

次はこの人が僕を気持ちよくしてくれるんだろうか。

僕は無意識にその人にすりよった。

「淫乱にはしておいた」
それだけ言って遠山さんが部屋を出ていく。

男の人のため息を聞いた気がする。

それからは真っ暗だ。

ただもうまわりの大人の顔色をうかがわなくていいんだと思うと、僕の心はおだやかだった。

「飽きっぽいな。安物買いの銭失いが」
「そのぶん回転率上がっていいんじゃない?私が大変だけど」

何もわからなくなった僕を見ながら悪い大人が悪いことを話している。
「外商案件に回せ。大口の客に連絡を」
男に担がれて僕は部屋を出ていく。
「カオルを愛してくれる大人はいるはずだ。変態だけどな」
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