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嘘
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門がゆっくり開いて、クルマはさらに敷地を進み、ガレージで止まった。
「こどもが飲みすぎだ。ジュースじゃないんだから」
「…家に、帰りたい…。僕の自転車…」
そうだ。僕は自転車に乗って塾へ向かっていた。
途中でタイヤがパンクして、女の人が送ってくれるって言ってその人のクルマに乗って…。
「まだ酔ってる?今日からここがキミの家だ」
夕暮れに大きな屋敷の影が見える。
僕の家とは比べ物にならない大きな家。
「ママに連絡しないと」
急に現実的なことが頭に浮かんで僕は自分のカバンを探したがみつからない。
あの中にスマホが入っているのに。
「後で家の方に連絡しておくよ」
ここまできて、やっと大人のウソに気がついた。
塾まで送るといったのも、家に帰してやると言ったのも、全部ウソ。
シートベルトに捕まって動けない僕を、運転席に座るおじさんは正体を現した。
ものすごく恐ろしい目をして歪んだ笑顔で僕を見ている。
「俺は遠山悟。キミの名前は?」
「カオル…」
自己紹介なんかどうでもいい。何とか警察に連絡が取れないか必死で考えた。
逃げる方法を考えていたのに、遠山と名乗るおじさんに手をひかれて、僕は屋敷の入り口まで歩く。
遠山さんがカラカラと心地いい音を鳴らして引き戸を開ける。
広い玄関の向こう、一瞬綺麗なお兄さんが横切ったが、すぐに視界から消えた。
「カオルは2階を使え。今から案内する」
「嫌だ!家に帰るっ、離して!!」
急に怖くなって僕はつないでいる手を振り払おうとしたが、大人の力には勝てない。
「元気があっていいな」
遠山さんは余裕の笑みで僕の手を握る。
それでも暴れていると腕を背中に捻り上げられて堅い玄関に叩き落された。
「…っは‥‥ぃ…っ」
痛みで息ができない。
「早く立て」
遠山さんの冷たい目に、気温は暑いはずなのに僕は寒気を感じてその場に凍りついた。
「こどもが飲みすぎだ。ジュースじゃないんだから」
「…家に、帰りたい…。僕の自転車…」
そうだ。僕は自転車に乗って塾へ向かっていた。
途中でタイヤがパンクして、女の人が送ってくれるって言ってその人のクルマに乗って…。
「まだ酔ってる?今日からここがキミの家だ」
夕暮れに大きな屋敷の影が見える。
僕の家とは比べ物にならない大きな家。
「ママに連絡しないと」
急に現実的なことが頭に浮かんで僕は自分のカバンを探したがみつからない。
あの中にスマホが入っているのに。
「後で家の方に連絡しておくよ」
ここまできて、やっと大人のウソに気がついた。
塾まで送るといったのも、家に帰してやると言ったのも、全部ウソ。
シートベルトに捕まって動けない僕を、運転席に座るおじさんは正体を現した。
ものすごく恐ろしい目をして歪んだ笑顔で僕を見ている。
「俺は遠山悟。キミの名前は?」
「カオル…」
自己紹介なんかどうでもいい。何とか警察に連絡が取れないか必死で考えた。
逃げる方法を考えていたのに、遠山と名乗るおじさんに手をひかれて、僕は屋敷の入り口まで歩く。
遠山さんがカラカラと心地いい音を鳴らして引き戸を開ける。
広い玄関の向こう、一瞬綺麗なお兄さんが横切ったが、すぐに視界から消えた。
「カオルは2階を使え。今から案内する」
「嫌だ!家に帰るっ、離して!!」
急に怖くなって僕はつないでいる手を振り払おうとしたが、大人の力には勝てない。
「元気があっていいな」
遠山さんは余裕の笑みで僕の手を握る。
それでも暴れていると腕を背中に捻り上げられて堅い玄関に叩き落された。
「…っは‥‥ぃ…っ」
痛みで息ができない。
「早く立て」
遠山さんの冷たい目に、気温は暑いはずなのに僕は寒気を感じてその場に凍りついた。
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