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誘拐
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どうしよう…。
塾へ行く途中自転車のタイヤがパンクしてしまった。
狭い道で激しくクラクションを鳴らされて、焦りながらはしっこに移動する。
このままだと遅刻してしまう。
母親や先生に怒られるのが怖いし嫌だ。
自転車を押してここから走って塾に急いでも間に合わない。
良策が浮かばず気が動転したカオルはただおろおろとその場に立ちすくむしかなかった。
ここでぼうっとしているだけでも暑さで汗が止まらない。
ふわふわした前髪を抑えながら途方に暮れていると、短いクラクションが鳴って目の前に黒い軽が止まった。
「どうしたの?」
運転席の窓が開いて髪の長い綺麗な女の人が心配そうに声をかけてきた。
「タイヤが…」
「ああ、これはもうダメね」
僕が全部言う前に女の人がタイヤを見て言う。
「急いでる?自転車後ろに入れてあなた助手席に乗りなさい。送ってあげる」
「え…?」
何が起きているのかさっぱりわからないまま、女の人が運転席から降りてきてスライドドアを開けて軽々と自転車を車内に放り込んだ。
「早く乗りなさい」
「え、は‥はいっ」
その時は遅刻することのほうが怖くて正確な判断が出来なかった。
車内の涼しさが心地よくて油断したのかもしれない。
「この先の学習塾なんですけど、大きなビルの…」
そこまでで記憶が途切れている。
次に聞こえてきたのは男の人と女の人の言い争いだった。
まわりには僕より年上のお兄さんたちが暗い顔をしてうなだれている。
「何でもいいとはいったがこんなガキ捕まえてくるなんて」
スーツ姿の大人が声をひそめて僕をクルマに乗せた女の人に詰め寄っていた。
「もう時間がないでしょ。人数合わせになんでもいいと言ったのは工藤、あんたよ」
何が起きているんだろう。
人数合わせ?
「ああもういい行くぞ。お前ら言っとくけど売れ残ったら処分されることになるから頑張って気に入ってもらえ」
わけがわからないままドアが開いて明るい光りに飲み込まれるような感覚のまま僕たちは広間に放り出された。
塾へ行く途中自転車のタイヤがパンクしてしまった。
狭い道で激しくクラクションを鳴らされて、焦りながらはしっこに移動する。
このままだと遅刻してしまう。
母親や先生に怒られるのが怖いし嫌だ。
自転車を押してここから走って塾に急いでも間に合わない。
良策が浮かばず気が動転したカオルはただおろおろとその場に立ちすくむしかなかった。
ここでぼうっとしているだけでも暑さで汗が止まらない。
ふわふわした前髪を抑えながら途方に暮れていると、短いクラクションが鳴って目の前に黒い軽が止まった。
「どうしたの?」
運転席の窓が開いて髪の長い綺麗な女の人が心配そうに声をかけてきた。
「タイヤが…」
「ああ、これはもうダメね」
僕が全部言う前に女の人がタイヤを見て言う。
「急いでる?自転車後ろに入れてあなた助手席に乗りなさい。送ってあげる」
「え…?」
何が起きているのかさっぱりわからないまま、女の人が運転席から降りてきてスライドドアを開けて軽々と自転車を車内に放り込んだ。
「早く乗りなさい」
「え、は‥はいっ」
その時は遅刻することのほうが怖くて正確な判断が出来なかった。
車内の涼しさが心地よくて油断したのかもしれない。
「この先の学習塾なんですけど、大きなビルの…」
そこまでで記憶が途切れている。
次に聞こえてきたのは男の人と女の人の言い争いだった。
まわりには僕より年上のお兄さんたちが暗い顔をしてうなだれている。
「何でもいいとはいったがこんなガキ捕まえてくるなんて」
スーツ姿の大人が声をひそめて僕をクルマに乗せた女の人に詰め寄っていた。
「もう時間がないでしょ。人数合わせになんでもいいと言ったのは工藤、あんたよ」
何が起きているんだろう。
人数合わせ?
「ああもういい行くぞ。お前ら言っとくけど売れ残ったら処分されることになるから頑張って気に入ってもらえ」
わけがわからないままドアが開いて明るい光りに飲み込まれるような感覚のまま僕たちは広間に放り出された。
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