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イメージ~金子
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林の葬儀が終わった数日後、未知は末っ子の美衣を連れて美容院に来た。
「私と全然似ていないようにしてください」
未知と美衣は雰囲気がよく似ていた。長い黒髪、父親似の顔、地味な服。
いきなり素っ頓狂な注文に、店長の美容師が「う~ん…」と顎に手を当てて悩んでいた。
「この髪、バッサリ切っちゃっていい?」
「は、はい大丈夫です」
未知がいるとはいえ極度の人見知りの美衣が、緊張して答える。
「あと髪の色も明るくしようか。要は未知さんに間違われないように別人に変身させればいいんでしょ?」
デザイン性の高い椅子に座っている未知が上目づかいで笑う。
自分は『金子未知』として、危険な目に遭ってもこの生き方を選んだので後悔はないが、妹たちが巻きこまれるのは絶対に防ぎたかった。
明るめのブラウンにボブカット、前髪をアシンメトリーに分けて、少しメイクしてもらう。
「かわいいー!どう未知さん。大変身よ」
お世辞抜きに美衣の雰囲気が変わった。椅子に座り込んで変わっていく様を一部始終見ていた未知も満足そうに笑顔を見せる。
まな板の鯉状態の見衣は、鏡に映っている自分を見て恥ずかしそうにしていた。
「未知さんは?前髪だけでもそろえましょか?」
「私はこれでいいの。狙いの的は地味で前髪のある暗い女。わかりややすいでしょ?」
「いつまでそれを貫くのよお」
美容師がもったいなさそうに言う。
「私が死ぬまでかな」
不吉なことを言って、未知は視線を泳がせて寂しく笑っていた。
服も買って、どの店もランチタイムになり、にふらりと入った店に、みおぼえのある派手な女を見つけた。
「美加姉だ…」
たくさんの紙袋を抱えて美衣が驚く。
派手な男と食事している美加が見える席に座って、未知が誰かに電話をかけた。
「写メを送る」
短めに言って、ランチを頼みながらウエイトレスを盾に写メを撮って中川京介に送ると、すぐにLINE通知が来た。
『ミント君だと思います。ゲイバーで働いてる子ですよ』
未知が早いスピードで文字を打ち返していく。
『美加に近づく人間は把握しておきたい。店はどこ?』
『ヴァレリーっていう渋いマスターのいる店です』
今までとテリトリーが違う所に飲みに行き始めたのは、『金子』と知れた途端、距離を置かれて厄介者扱いされてしまったからだろう。
その界隈は中は厳しいが優しく受け止めてはくれる。上手に遊べばホストほど金もかからない。
『美加を尾行できる?』
『俺はあまりその界隈に行ったことないから顔が割れてません。できると思います』
嫌な予感がする。その界隈は金子の名前はあまり浸透していないだろうが、酒の量が多くなった美加の体が心配だった。
ゲームに課金なんて嘘だ。この子に相当入れ込んでお金を使ったんだろう。
それで美加の精神が安定するならいいが、酒と男に依存すると安定どころか常に不安にさいなまれる。
「家にじっとしてる子なら安心なのにね」
「私のこと?」
先に届いたアイスティーを飲みながら美衣が不服そうに言う。
「何事もほどほどにね」
それができない人種のなんと多いことか。
「私と全然似ていないようにしてください」
未知と美衣は雰囲気がよく似ていた。長い黒髪、父親似の顔、地味な服。
いきなり素っ頓狂な注文に、店長の美容師が「う~ん…」と顎に手を当てて悩んでいた。
「この髪、バッサリ切っちゃっていい?」
「は、はい大丈夫です」
未知がいるとはいえ極度の人見知りの美衣が、緊張して答える。
「あと髪の色も明るくしようか。要は未知さんに間違われないように別人に変身させればいいんでしょ?」
デザイン性の高い椅子に座っている未知が上目づかいで笑う。
自分は『金子未知』として、危険な目に遭ってもこの生き方を選んだので後悔はないが、妹たちが巻きこまれるのは絶対に防ぎたかった。
明るめのブラウンにボブカット、前髪をアシンメトリーに分けて、少しメイクしてもらう。
「かわいいー!どう未知さん。大変身よ」
お世辞抜きに美衣の雰囲気が変わった。椅子に座り込んで変わっていく様を一部始終見ていた未知も満足そうに笑顔を見せる。
まな板の鯉状態の見衣は、鏡に映っている自分を見て恥ずかしそうにしていた。
「未知さんは?前髪だけでもそろえましょか?」
「私はこれでいいの。狙いの的は地味で前髪のある暗い女。わかりややすいでしょ?」
「いつまでそれを貫くのよお」
美容師がもったいなさそうに言う。
「私が死ぬまでかな」
不吉なことを言って、未知は視線を泳がせて寂しく笑っていた。
服も買って、どの店もランチタイムになり、にふらりと入った店に、みおぼえのある派手な女を見つけた。
「美加姉だ…」
たくさんの紙袋を抱えて美衣が驚く。
派手な男と食事している美加が見える席に座って、未知が誰かに電話をかけた。
「写メを送る」
短めに言って、ランチを頼みながらウエイトレスを盾に写メを撮って中川京介に送ると、すぐにLINE通知が来た。
『ミント君だと思います。ゲイバーで働いてる子ですよ』
未知が早いスピードで文字を打ち返していく。
『美加に近づく人間は把握しておきたい。店はどこ?』
『ヴァレリーっていう渋いマスターのいる店です』
今までとテリトリーが違う所に飲みに行き始めたのは、『金子』と知れた途端、距離を置かれて厄介者扱いされてしまったからだろう。
その界隈は中は厳しいが優しく受け止めてはくれる。上手に遊べばホストほど金もかからない。
『美加を尾行できる?』
『俺はあまりその界隈に行ったことないから顔が割れてません。できると思います』
嫌な予感がする。その界隈は金子の名前はあまり浸透していないだろうが、酒の量が多くなった美加の体が心配だった。
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それで美加の精神が安定するならいいが、酒と男に依存すると安定どころか常に不安にさいなまれる。
「家にじっとしてる子なら安心なのにね」
「私のこと?」
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