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家業~未納回収
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急激な変化は時に摩擦を起こす。
未知の住むマンションで、まだ全額返済できていない自称闇金のチンピラが居心地悪そうにソファに座っている。
テーブルの上には金の延べ棒ががずらりと並べられている。それに気になって未知の言葉が頭に入ってこない。
あの部屋に呼びつけられたら無傷では帰ってこられない、まわりはそう言っていた。
たかが女ひとりで何ができる。そう高を括って男は下品な笑顔をしている。
『仕事』なので未知は細めの黒いスーツを着ていた。
「お金を返してください」
ソーサーを手に、角川が淹れた紅茶をひと口飲んで未知が言う。
人の声で目が覚めた美衣が寝室からこっそりのぞいていた。
「もう少し待って下さいよ。来月まとまった金が入っ…!熱!!」
未知は無言で飲んでいた紅茶を相手の顔にかけた。
美衣の目が驚きで震える。
「お金を返してください」
未知はそれだけを繰り返す。言い訳は一切聞かず、テーブルの上にある金塊をひとつ取って立ち上がった。
熱湯紅茶をかけられた男は床で顔を覆いながらじたばたと暴れてる。
その男に馬乗りになって、振り上げた金塊で頭部を何度も殴った。
ガツッ、ゴツッ、と鈍い打撃音が何度も響く。
「死んだら取り立てできませんよ」
頃合いを見て、角川が声をかける。
「家族、親戚、女の誰かはいるでしょう」
荒い息をしながら、未知は立ち上がって男から離れた。
その時チャイムもなしに玄関が勢いよく開いて見加が飛び込んできた。
「未知!!お金無くし…」
頭から血を流して倒れている男、その横で血のついた金塊を持つ未知、美加に気がついて視線を向けてくる角川。
美加がいることに気づいているはずなのに、未知は両足を開いて下品に座り、瀕死の男に声をかける。
「この時代でも臓器売買はやっています。どうです?一括返済で」
「な…に……」
男の顔から色が消える。
「新鮮なものが喜ばれます。今から手配しますから死んで下さい。それで返済終了です」
「ちょっと待ってくれ!…俺は……!」
「動くと血が吹き出しますよ」
角川がパニックになった男をとめる。
「なにか急用?美加」
玄関で固まっている美加に声をかけた。
「きのうのお金…無くしたかも……」
「……」
「さ、探したんだよ!でもどこにもなくて、もしかしたら未知が持っていったのかなと思って、それで…」
最悪のシチュエーションだ。
未知は持っていた血で汚れた金塊をじっと見ている。
次の瞬間、赤く濡れた金の塊が美加に向けて投げられた。
「!!」
それは美加の顔の横に当たって、ゴト、と思い音とともに落ちた。
「……」
恐怖で立っていることができなくなった美加が、へなへなと座り込む。
「死んでます」
金子が倒れていた男の首筋に指を当てて未知に報告する。
「急いで業者に連絡して!鮮度が命よ早く!」
「了解」
未知はエアコンを18℃に設定して、嬉しそうに笑っていた。
電話をかけ終わるとすぐにスーツ姿の男たちが部屋に入ってきて、手際よく死体を大きな袋に入れてゴミ収集のように運び去る。
交渉役の男が、各パーツの値段を未知と交渉して、未知に多額の現金の束を渡すと素早く去っていった。
あれだけ「仕入れ額」を払っても、人間の臓器はそれ以上の儲けがあるというわけか。
どうしてうちが金持ちなのか。本当の理由がこれで理解できた。
(代々家の仕事なので稼業ではなく家業と表記しました)
未知の住むマンションで、まだ全額返済できていない自称闇金のチンピラが居心地悪そうにソファに座っている。
テーブルの上には金の延べ棒ががずらりと並べられている。それに気になって未知の言葉が頭に入ってこない。
あの部屋に呼びつけられたら無傷では帰ってこられない、まわりはそう言っていた。
たかが女ひとりで何ができる。そう高を括って男は下品な笑顔をしている。
『仕事』なので未知は細めの黒いスーツを着ていた。
「お金を返してください」
ソーサーを手に、角川が淹れた紅茶をひと口飲んで未知が言う。
人の声で目が覚めた美衣が寝室からこっそりのぞいていた。
「もう少し待って下さいよ。来月まとまった金が入っ…!熱!!」
未知は無言で飲んでいた紅茶を相手の顔にかけた。
美衣の目が驚きで震える。
「お金を返してください」
未知はそれだけを繰り返す。言い訳は一切聞かず、テーブルの上にある金塊をひとつ取って立ち上がった。
熱湯紅茶をかけられた男は床で顔を覆いながらじたばたと暴れてる。
その男に馬乗りになって、振り上げた金塊で頭部を何度も殴った。
ガツッ、ゴツッ、と鈍い打撃音が何度も響く。
「死んだら取り立てできませんよ」
頃合いを見て、角川が声をかける。
「家族、親戚、女の誰かはいるでしょう」
荒い息をしながら、未知は立ち上がって男から離れた。
その時チャイムもなしに玄関が勢いよく開いて見加が飛び込んできた。
「未知!!お金無くし…」
頭から血を流して倒れている男、その横で血のついた金塊を持つ未知、美加に気がついて視線を向けてくる角川。
美加がいることに気づいているはずなのに、未知は両足を開いて下品に座り、瀕死の男に声をかける。
「この時代でも臓器売買はやっています。どうです?一括返済で」
「な…に……」
男の顔から色が消える。
「新鮮なものが喜ばれます。今から手配しますから死んで下さい。それで返済終了です」
「ちょっと待ってくれ!…俺は……!」
「動くと血が吹き出しますよ」
角川がパニックになった男をとめる。
「なにか急用?美加」
玄関で固まっている美加に声をかけた。
「きのうのお金…無くしたかも……」
「……」
「さ、探したんだよ!でもどこにもなくて、もしかしたら未知が持っていったのかなと思って、それで…」
最悪のシチュエーションだ。
未知は持っていた血で汚れた金塊をじっと見ている。
次の瞬間、赤く濡れた金の塊が美加に向けて投げられた。
「!!」
それは美加の顔の横に当たって、ゴト、と思い音とともに落ちた。
「……」
恐怖で立っていることができなくなった美加が、へなへなと座り込む。
「死んでます」
金子が倒れていた男の首筋に指を当てて未知に報告する。
「急いで業者に連絡して!鮮度が命よ早く!」
「了解」
未知はエアコンを18℃に設定して、嬉しそうに笑っていた。
電話をかけ終わるとすぐにスーツ姿の男たちが部屋に入ってきて、手際よく死体を大きな袋に入れてゴミ収集のように運び去る。
交渉役の男が、各パーツの値段を未知と交渉して、未知に多額の現金の束を渡すと素早く去っていった。
あれだけ「仕入れ額」を払っても、人間の臓器はそれ以上の儲けがあるというわけか。
どうしてうちが金持ちなのか。本当の理由がこれで理解できた。
(代々家の仕事なので稼業ではなく家業と表記しました)
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