金は天下で回らない

希京

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三姉妹~登場

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「未知!姉さん!!カードが使えなくなっちゃった!」
デスクに並ぶパソコンに囲まれていた未知は、部屋の入り口のほうをちらりと見る。
「美加、わかるように説明してください」
よほどあわてたのか、いつもは完璧にメイクをして緩いウェーブの髪をまとめて露出の高い服を着ているのに、今はピンクのジャージ姿でわめいている。

「限度額超えたんじゃないっすか?」
隣接するソファに座って、角川がテーブルにノートパソコンと何かの書類を並べている。これから打ち合わせでもあるのだろうが、美加に空気を読む能力はない。

祖父は戦争で一財産を築いた。父は金主きんしゅとして闇金に融資して法外な金利で富を膨らませた。
決して綺麗な金ではない。父親は娘に家業を継がせたくなかったようだが、未知の祖父は期待していたようだった。
「ムショの壁をふらふら歩いているようなものだ。少しの刺激で壁の中に倒れたら終わる」

三姉妹の長女だからか、自分の前でぽつりぽつり親は仕事の話をしていた。
子どもに興味を持つなと言っても、親が何を言っているのか知りたくなる。

ただ、下の次女・三女は『お金持ちの家』という漠然とした認識しかない。

「銀行で止まっているんじゃない?一体何を買ったんですか」
パソコン画面から視線を外して妹を見た。
「ゲームで少しずつ課金していただけだよお」

未知は小さなため息をつく。
「そのレベルのカードで小口の支払いが何度もあったら銀行が不審がって止めるわ。電話してみなさい。早くしないと永久に止まりますよ」
こちらに文句が来るのを軽い脅しでガードして未知は再びデスクに向かう。

「あれ、納得してないでしょう」
一部始終を横で聞いていた角川が、ようやく声を発せるという感じでつぶやいた。
「仕方ありません」
美加は姉に対抗心を燃やしているが、姉から見たらかわいい妹のようだった。


突き抜けるようにいい天気だった日の夜は少し肌寒い。
もうすぐ真夏だが、若い男がスプリングコートを羽織ってホテルの廊下を歩いている。
チャイムをならすと鍵が開けられて、白銀しろがね直樹が笑みを浮かべて部屋に招き入れた。
バスローブ姿の白銀は、ソファに座って片手で林を招いて、膝の上に乗せた。

「どうだった。金子は」
白銀の会社に入社した林秀行。最終面接で一目惚れした白銀はこの一回り下の青年を寵愛している。

「いつもどおりパソコン画面とにらめっこしてましたよ。感情が滅多に外に出ない女なので、何をどう運用しているのか今のところさっぱり」
白銀のふとももに乗って、服を着たままお互い高ぶったそれをこすりつけながら話を続ける。
「時代に合わせて違うシノギをしているのはわかるんだが」
「どうしてそんな事知りたいんですか?」

何気ない問に、白銀は林の苦しそうな股間を思い切り掴んだ。
「…あっ……」
心地よい刺激に林の顎が上がる。
「余計なことはしらなくていい」
ソファに押し倒して、白銀は自身の白いローブを脱ぎ、林のネクタイをするりと外した。

「あ…あぁ…」
白銀の舌が林の体を舐め回す。唾液に濡れた舌は林の思考を溶かすには有効だった。



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