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最終章 剣聖と5人の超人

剣聖と5人の超人(6)

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 ――― ヘルドゥーソ、サイエン vs オレスト、アデリナ、ヘンリック、クラウス、リンリン ―――

「サイエン! お前!!」
「久しぶりじゃのう。リンリン。お主は厄介じゃ。少し眠っててもらうぞ」

 愕然とするリンリンを一目見やると、牽制する様子を見せながらヘルドゥーソの方へスス……と宙を飛んで近付き、酒壺から何かの液体をかけるサイエン。

「ぐ……ぐむぅ……」

 それを浴びて半身を起こし、そして立ち上がる。
 その顔には恐怖の色がありありと浮かぶ。

「今のは……ハァハァ……死ぬかと思ったぞ、リンリン……」

 サイエンはそれを横目に見ながら、

「やれやれ、だらしないのう……お主、体力無限なんじゃろうが」
「私は生まれつきの闇属性だからな。ツィの一撃など食らったら魂までやられるわ。無属性のお前にはわからん」

 そんなやりとりをするヘルドゥーソとサイエン。

 全ては予定通りか。そう考えたリンリンに怒りの炎が点火される!

「よかろう。2人まとめて相手になってやろう」

 ギュッと拳を握りしめ、一歩前に出るリンリン。

「おうおう。力がある奴が言うと怖いのう」

 おどけるサイエンだが、目の奥は笑っていない。そしてそれはヘルドゥーソも同じだった。

「侮るなよ。奴は僅か10歳で超人の資質に目覚めた奴だ。絶対に我がしもべとしてくれるッ!」

 そう言うと両手を広げ、

「闇の波動!!」

 マッツ、ヒムニヤでさえ落とし込んだ、闇の世界へと誘う波動を展開! 更にサイエンも酒壺をクルクルと回し、

「『眠り酒シャルフシェイク』!」

 どこにこれだけの酒が入っていたかと思われるほどの水量が壺から流れ出してくる。

 対して、リンリンは慌てず、片腕を前に出し手のひらを向ける。

「『神の御手ガットハンド』!」

 再び現れる神の手!

 それに隠れてアデリナが2人の耳元に爆音を鳴らす!

 ビィィィィィンッ!
 ドォォォォォォォン!

「グワゥ!!」

 ビィィィィィンッ!
 パァァァァァンッ!

「うおぅ!!」

 闇の波動とサイエンの酒を防ぎ切った『神の御手ガットハンド』、だが音も無く消えて行く。

「ナイスじゃ、アデリナッ!来たれッ!『蛇の王バジリスク 』!!」

 頭だけで数メートルはあろうかという蛇とも竜とも区別のつかない不思議な大蛇が現れる!

 口元から炎を漏らし、ヘルドゥーソ達に向かい、強力な、しかも石化効力のある炎のブレスを吐く!

 だが彼らの前に展開されるサイエンのシールド!
 アデリナの爆音攻撃で顔をしかめ、耳を抑えながらも宙に浮かんでアデリナとリンリンを見下ろす。

「なんちゅう攻撃じゃ……厄介じゃのう。あれがペルセウスの魔弓か……」

 一方、こちらもしかめっ面で、再び闇の波動を出そうと両手を広げたヘルドゥーソ。その時!

 バシュバシュバシュッッ!!

「ウガゥッッ!!」

 ヘルドゥーソをシールドの内側から切り裂く2本の聖剣!!

「お待たせ! リンちゃん! アデリナ!」
「リタさんッ!」

 ドシュドシュ!

 宙に浮かぶサイエンに届く六芒槍術!

「仕方がない、俺が手伝ってやろうッッ!」


 ――― サミジナ、死者メリー・トト vs ヒムニヤ、リディア、コンスタンティン ―――

 ヒムニヤ達の真後ろに現れた、茶色いローブのフードまでをすっぽり被った大柄な魔術師。

「あれは……メリー! メリー・トト!!」

 無限の再生能力を持つ死古竜エンシェントボーンドラゴンと三日三晩戦い続けた男。
 修羅剣技の過去の剣聖シェルド・ハイ、フムルグを抹殺した男。

 そして召喚されるなり、無詠唱の広範囲魔法を打ち出すメリー!

 ズバババババババババババババババッッ!!

「クッ!『絶対魔法防御ソリュマギィ・ヴァーンティン』!」

 ヒムニヤがバリアを展開すると同時に走り込んできた大柄な鬼の風体の男。
 メリーの眼前に立ちはだかり、圧倒的な力の一撃を放つ竜人ドラケマニカマメ!

 ドゴォォォォォォンッッ!!

「ムッ!?」

 だが、なんとメリー・トトが自然に身に纏わせるバリアに阻まれ、届かない。

「ディヤァァァァァ!!」

 無詠唱で放たれるコンスタンティンの指先から放出される、魔神すら軽々貫く高圧縮のビーム!

 だが、なんとこれも届かない。

「マメとコンスタンティンで抜けないだと……」
「ホッホッホ。苦労しとるようだのう」

 ヒムニヤのデバフ、棘のある荊に締め付けられ、苦しみながらもサミジナは軽口を叩く。

 さらに畝るビームを放つメリー!

 ドシュルルルルルルルッ!

 リディアとコンスタンティンに直撃する!

 バッシュウウウ!
 バッシュウウウウウッッ!!

 だが2人とも、ヒムニヤの絶対魔法防御ソリュマギィ・ヴァーンティンに守られている上、更にシールドを展開、見事に防ぐ。

「だぁりゃぁぁぁぁぁ! 火竜剣技フラムドラフシェアーツ!」
「マッツ!!」

 リディアが喜色を浮かべる。

「この魔術師は俺に任せろ、皆はサミジナを!」
「バカなッ! 無理だ、マッツ!」

 ヒムニヤの叫び。だが、マッツには勝算があった。

「『アネヴォム』!!」

 ドォォォォォォォンッッ!!

 だが、これもメリーの分厚いバリアに阻まれて届かない!

(オリオンとロビンを存外軽く倒せたのは、きっと破邪の魔剣、シュタークスの性能)

 更に爆発に紛れてメリーに接近し、一閃!

(なら、サミジナの召喚によって現れたこいつも同じッ!!)

 ズババッッ!!

 呆気なくメリーを切り裂く魔剣シュタークス!!

 マメのパワーですら耐えたメリーの顔から下腹にかけ、一刀両断! だが、メリー・トト、消え去る間際に掌をマッツに向け!

 ビィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!

 斬ったと同時にメリーのビームを食らってしまうマッツ、胸に穴が開く!!

「ウグッッッッッ!!」

(しまっ…………ん!?)

 マッツが油断した!と思った瞬間、胸の傷は綺麗に治っていた。

「ヒムニヤ!」
「危なかったな、マッツ。だが助かった、有難う。やっぱりお前は……」

 何かを言いかけて、だが口を閉ざし、極上の笑みを浮かべるに留めるヒムニヤ。

 それを見ながら、

「ふふ、こっちこそ助かったよ、ヒムニヤ。さあ、次はあの馬面をやるぞ!」

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