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助けた理由
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「死にたかった?」
シェナのその言葉に、
「・・・・・・その覚悟は、していた。だが、死にたくないと思ってしまった」
男は顔を伏せる。
眉間に皺をよせ、何かを後悔するような、懺悔をするような、そんな表情にシェナは見て取れた。
「よかった」
「え?」
「大怪我した上に右脚の怪我を焼いて止血したり、怪我した脚を引きずって、湖まで歩い来たのを見たから、生きたいのかと、勝手に私が判断したから」
シェナはそう言いながら、持っていた器に『すいとん』を注ぎ、男に渡す。
「はい、お代わり」
「・・・、すまない」
男は素直に『すいとん』を受け取る。
「もし、お兄さんに本気で死亡願望があったなら、私余計なお世話だったかもね」
「・・・・・・いや、これで良かったんだと、思う」
手のひらの中にある『すいとん』の温かさに、また視界が滲む。
それを、誤魔化すように、男は『すいとん』を一口食べた。
「助けてくれて、ありがとう」
「いいえ、」
「・・・・・・、君は、何故俺を助けてくれたんだ」
「・・・・・・」
男に問われ、シェナは少し沈黙する。
だが、少しして、
「・・・・・・、お兄さんが生きてたから。まあ、他にも理由はあるけど」
そう言いながら、シェナは自分の残り少ない『すいとん』を一気に口の中に流し込む。
自分の分の食事を一足早く終え、
「お兄さんを助けた理由は大まかに三つ。一つは、瀕死だったけど、お兄さんが生きていたから。二つは、ここが、ギルド『龍の宿り木』が管轄する森『ネルの森』だと言うこと。そして、三つは、この子」
そう言いながら、皮袋の中で私の青いターバンをモゾモゾと掘っている小さな子ドラゴンをそっと、優しく抱き上げる。
「この森にはドラゴン系の魔獣は生息していない。もし、お兄さんが本当の事を言ったなら、国の保護対象であるSSS級ドラゴン、『エンシェント・ドラゴン』がこの『ネルの森』に居ることが可笑しい」
シェナの言葉に、男は表情を固くする。
この国では、ドラゴンは国の英成の象徴として奉り、特に、第7魔法の火、水、木、土、風、光、闇の属性をもつSSS級ドラゴンの種族は重宝されている。
だが、ドラゴンは『金』になる。
魔獣はDからSSSと7つの級にランク分けされており、『エンシェント・ドラゴン』は最上級のSSS級に分類される。
種類でピンからキリまであるが、ドラゴンはその強さと知能の高さから生体から死体まで高値で売れる。
上級であればある程、鱗や牙はもちろん、翼、肉、骨、爪、臓器に至るまで全て高値が付く。
また、ドラゴンを幼期から飼いならして、騎竜として調教すれば、騎竜一体、金貨約10枚以上で取り引きされる。
また、騎竜調教目的でドラゴンの卵も高値で取り引きされる。
その為、ドラゴンの密猟や乱獲が後を絶たない。
「お兄さんが寝ているうちに、ちょっと、周りを調べに行ったら、コレが落ちていた」
そう言って、シェナがある物を取り出した。
手のひらに収まる、大きなヒビが入ったガラス玉。ガラス玉の中には割れた薄い円状の羅針盤と二つに折れた円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが入っている。
「コレ、結構旧式の転移魔法の魔具でしょ。結構高額な割に正確な座標と位置を入れないとトンデモナイ所に飛ばされる。壊れやすい。と、苦情が殺到した粗悪品。・・・・・・状態から見て壊れてそんなに時間は経っていないみたいだね」
「・・・・・・・・・」
「これを見つけたその先で、見つけたよ。傷だらけの瀕死状態の『エンシェント・ドラゴン』」
あの時、男の治療を一通り終え、湖で見た男の出てきた場所から森の奥へ進むと、其処にいたのは、傷だらけのドラゴンがいた。
不自然に拓けたその場所で満月の月光に照らされたその姿。
本来なら美しい筈の体を傷付けられ、鱗は血で汚れ、4枚ある翼は乱雑に斬り落とされ、右の眼から血が止めどなく溢れ流れていた。
だが、あの時、シェナが目の当たりにした、周りを近付けさせない静かで荒々しくもある、孤高にして圧倒的な威圧感が其処にあった。
「っ、君は、俺をどうしたいんだ?尋問して、所属ギルドに俺を突き出すのか?」
男は声を固くして、シェナに問う。
「・・・・一応、言っておくけど、私にお兄さんをどうこう裁く権利は無いよ。突き出すと言うよりも、ギルドに保護してもらった方がお互いにいいと、思っただけ。
・・・・・例え、お兄さんがギルド関係に関わったらヤバイ立場でも、ね」
「ッ、俺は疾しい事はしていない!!」
シェナの言葉に、男は声を上げる。
その男の眼は何かを訴えような強い眼をしていた。
「大丈夫。お兄さんの言いたいことは、保護されてから、ギルドで言えばいいよ。お兄さんが、本当に疾しい事をして無かったら、ギルドは手荒な事はしないし、私はお兄さんをどうこうしようとは、思って無いから。・・・・・でも、」
そう言いながら、シェナはカマクラの外、カマクラを覆う結界の外へ意識を向ける。
「・・・・どちらにしろ、今このカマクラから出ない方がいいよ。身の安全を保証されたかったらね」
シェナは、そう言いながら、その場に胡座をかき、子ドラゴンを膝に乗せ、自分のカバンをゴソゴソとマジックバックを取り出す。
「身の安全の保証、とは、なんだ?」
「んー?そのままの意味だけど?ちょっと、今の森は、危ないからね」
「・・・・危ない?」
「卵だったこの子を連れてくる時、ちょっとゴブリン達を怒らせてね。今、ゴブリン達が私とこの子を探し回っている」
「はあ!?!?」
何気なく言ったシェナの言葉に男は思わず、持ってた器を落としそうになった。
シェナのその言葉に、
「・・・・・・その覚悟は、していた。だが、死にたくないと思ってしまった」
男は顔を伏せる。
眉間に皺をよせ、何かを後悔するような、懺悔をするような、そんな表情にシェナは見て取れた。
「よかった」
「え?」
「大怪我した上に右脚の怪我を焼いて止血したり、怪我した脚を引きずって、湖まで歩い来たのを見たから、生きたいのかと、勝手に私が判断したから」
シェナはそう言いながら、持っていた器に『すいとん』を注ぎ、男に渡す。
「はい、お代わり」
「・・・、すまない」
男は素直に『すいとん』を受け取る。
「もし、お兄さんに本気で死亡願望があったなら、私余計なお世話だったかもね」
「・・・・・・いや、これで良かったんだと、思う」
手のひらの中にある『すいとん』の温かさに、また視界が滲む。
それを、誤魔化すように、男は『すいとん』を一口食べた。
「助けてくれて、ありがとう」
「いいえ、」
「・・・・・・、君は、何故俺を助けてくれたんだ」
「・・・・・・」
男に問われ、シェナは少し沈黙する。
だが、少しして、
「・・・・・・、お兄さんが生きてたから。まあ、他にも理由はあるけど」
そう言いながら、シェナは自分の残り少ない『すいとん』を一気に口の中に流し込む。
自分の分の食事を一足早く終え、
「お兄さんを助けた理由は大まかに三つ。一つは、瀕死だったけど、お兄さんが生きていたから。二つは、ここが、ギルド『龍の宿り木』が管轄する森『ネルの森』だと言うこと。そして、三つは、この子」
そう言いながら、皮袋の中で私の青いターバンをモゾモゾと掘っている小さな子ドラゴンをそっと、優しく抱き上げる。
「この森にはドラゴン系の魔獣は生息していない。もし、お兄さんが本当の事を言ったなら、国の保護対象であるSSS級ドラゴン、『エンシェント・ドラゴン』がこの『ネルの森』に居ることが可笑しい」
シェナの言葉に、男は表情を固くする。
この国では、ドラゴンは国の英成の象徴として奉り、特に、第7魔法の火、水、木、土、風、光、闇の属性をもつSSS級ドラゴンの種族は重宝されている。
だが、ドラゴンは『金』になる。
魔獣はDからSSSと7つの級にランク分けされており、『エンシェント・ドラゴン』は最上級のSSS級に分類される。
種類でピンからキリまであるが、ドラゴンはその強さと知能の高さから生体から死体まで高値で売れる。
上級であればある程、鱗や牙はもちろん、翼、肉、骨、爪、臓器に至るまで全て高値が付く。
また、ドラゴンを幼期から飼いならして、騎竜として調教すれば、騎竜一体、金貨約10枚以上で取り引きされる。
また、騎竜調教目的でドラゴンの卵も高値で取り引きされる。
その為、ドラゴンの密猟や乱獲が後を絶たない。
「お兄さんが寝ているうちに、ちょっと、周りを調べに行ったら、コレが落ちていた」
そう言って、シェナがある物を取り出した。
手のひらに収まる、大きなヒビが入ったガラス玉。ガラス玉の中には割れた薄い円状の羅針盤と二つに折れた円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが入っている。
「コレ、結構旧式の転移魔法の魔具でしょ。結構高額な割に正確な座標と位置を入れないとトンデモナイ所に飛ばされる。壊れやすい。と、苦情が殺到した粗悪品。・・・・・・状態から見て壊れてそんなに時間は経っていないみたいだね」
「・・・・・・・・・」
「これを見つけたその先で、見つけたよ。傷だらけの瀕死状態の『エンシェント・ドラゴン』」
あの時、男の治療を一通り終え、湖で見た男の出てきた場所から森の奥へ進むと、其処にいたのは、傷だらけのドラゴンがいた。
不自然に拓けたその場所で満月の月光に照らされたその姿。
本来なら美しい筈の体を傷付けられ、鱗は血で汚れ、4枚ある翼は乱雑に斬り落とされ、右の眼から血が止めどなく溢れ流れていた。
だが、あの時、シェナが目の当たりにした、周りを近付けさせない静かで荒々しくもある、孤高にして圧倒的な威圧感が其処にあった。
「っ、君は、俺をどうしたいんだ?尋問して、所属ギルドに俺を突き出すのか?」
男は声を固くして、シェナに問う。
「・・・・一応、言っておくけど、私にお兄さんをどうこう裁く権利は無いよ。突き出すと言うよりも、ギルドに保護してもらった方がお互いにいいと、思っただけ。
・・・・・例え、お兄さんがギルド関係に関わったらヤバイ立場でも、ね」
「ッ、俺は疾しい事はしていない!!」
シェナの言葉に、男は声を上げる。
その男の眼は何かを訴えような強い眼をしていた。
「大丈夫。お兄さんの言いたいことは、保護されてから、ギルドで言えばいいよ。お兄さんが、本当に疾しい事をして無かったら、ギルドは手荒な事はしないし、私はお兄さんをどうこうしようとは、思って無いから。・・・・・でも、」
そう言いながら、シェナはカマクラの外、カマクラを覆う結界の外へ意識を向ける。
「・・・・どちらにしろ、今このカマクラから出ない方がいいよ。身の安全を保証されたかったらね」
シェナは、そう言いながら、その場に胡座をかき、子ドラゴンを膝に乗せ、自分のカバンをゴソゴソとマジックバックを取り出す。
「身の安全の保証、とは、なんだ?」
「んー?そのままの意味だけど?ちょっと、今の森は、危ないからね」
「・・・・危ない?」
「卵だったこの子を連れてくる時、ちょっとゴブリン達を怒らせてね。今、ゴブリン達が私とこの子を探し回っている」
「はあ!?!?」
何気なく言ったシェナの言葉に男は思わず、持ってた器を落としそうになった。
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