上 下
16 / 85

からまれます

しおりを挟む
モナリナさんに、お礼を言って、ギルドを出る。
採取許可証の申請に来ただけなのに、変に時間と気力を費やした気がするシェナ。

「おじさんのパン残っているかな?」

ネルの森に入る前に、市場のおじさんのパンを買いに行こ。
だが、

「おい」

シェナの足が止められた。
シェナの目の前に屈強なスキンヘッドとモヒカンの男2人が、道を塞いでいる。
2人ともシェナよりも屈強で長身。
比較的に小柄な分類に入るシェナと並ぶと大人と子供のようだ。
確か、ギルドに最近入った新入りの2人だった、と思う。ちょっと虚ろ覚え。

「よう、半端エルフ」
「ちょっと、顔貸してもらおうか」

シェナを見下ろす2人はニヤニヤと、意地の悪く笑っている。

「駄目。私の顔は貸し出し不可だから、顔を借りたかったら他を当たって」

真顔で溜息をつきながら新人2人の男に怯む事なく言い放つシェナ。

「あ、そう・・・」
「そうよ。じゃ、私、用事あるから」
「おう、すまなかったな、って!おい!!」
「・・・チッ」

小さく舌打ちするシェナ。
上手く言い包められて横を通り過ぎようとしたシェナを見送ろうとしたスキンヘッドの男が我に返って再びシェナの行先を塞ぐ。

「随分とナメてくれるじゃねぇかよ」

額か頭だかわからない所に青筋を立てるスキンヘッド男とモヒカン男。

「ナメられるような、頭してるからでしょ」

怯まずにシレっと言いのけるシェナ。

「ッ、マリリちゃんの言ってた通りの生意気な奴だな」
「ああ、人を馬鹿にしやがって」

また、あの受付嬢か。

「聞いたぜ?お前、ガストのAランクパーティーで問題を起こしてクビになっただってな。一体何しでかしたんだ?」
「・・・さあね」

モヒカン男の嫌味にシレっと流すシェナ。

「ッ、ふざけてんじゃねぇぞ!!ゴラァ」

飄々としたシェナの態度にスキンヘッド男がキレた。
シェナの胸ぐらを掴もうと手を伸ばして来た。
咄嗟に伸ばした手をシェナは躱したが、スキンヘッド男の手はシェナに届かなかった。

「ぐあ!!」

スキンヘッド男の首に1人の男が腕を回し、締め上げる。

「おーい。こんなギルドの前で騒ぎ起こすもんじゃねーぞ?」
「!!ディーノさん!?」
「よっ!」

シェナが目を見開く。
 藍色のくせっ毛の髪。細めな灰色の目は人が良さそうな印象を与えるが、顎の無精髭が遊び人の雰囲気がある。

「いつ、街に帰って来たんですか?」
「おう、シェナ。ついさっきな。いや、クエスト自体はそんなに手こずら無かったんだけど、帰りの町で賭場はったら、サイフすっからかん。あはは。お願い、シェナ、お金貸して」
「会って早々、お金催促ですか」

いつものディーノに呆れるシェナ。

「今私も金欠だから、貸すのは無理です」
「アララ、そいつは残念」
「それと、そろそろ離した方がいいですよ?」
「ん?何を?」
「ディーノさんの腕の中で泡吹いて顔どこか頭まで紫色になって来ているスキンヘッド」
「だあ!!!バ、バズーー!!!」

ディーノの登場に後ろ下がっていたモヒカン男がディーノに締め上げられ文字通り顔色を変えたスキンヘッド男を見て叫ぶ。

「あ、悪い」
「ディーノさん」

悪気が無く軽いディーノに呆れ顔のシェナ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。 のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

今日も誰かが飯を食いに来る。異世界スローライフ希望者の憂鬱。

KBT
ファンタジー
 神の気まぐれで異世界転移した荻野遼ことリョウ。  神がお詫びにどんな能力もくれると言う中で、リョウが選んだのは戦闘能力皆無の探索能力と生活魔法だった。      現代日本の荒んだ社会に疲れたリョウは、この地で素材採取の仕事をしながら第二の人生をのんびりと歩もうと決めた。  スローライフ、1人の自由な暮らしに憧れていたリョウは目立たないように、優れた能力をひた隠しにしつつ、街から少し離れた森の中でひっそりと暮らしていた。  しかし、何故か飯時になるとやって来る者達がリョウにのんびりとした生活を許してくれないのだ。    これは地味に生きたいリョウと派手に生きている者達の異世界物語です。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...